第013話 宝探しをしよう
頭の中でキャラに好き勝手に動いてもらってるだけでは、面白くない。
と言う事で、必死にキーボードに立ち向かおうとしておりますが、視界の隅に入る「オフトゥン」の魔力に抗えません。ましてや、「オフトゥン」だけでなく「モフモフ」の魔力に、人間は抗う事すら放棄するでしょう・・・・。
そんな誘惑に立ち向かいながら、キーボードに向かっております。
昼の休憩を済ませたワシと親父殿は、一度騎士団の執務室へと向かう。
執務室に入ると、中には4、5人の騎士が事務仕事に没頭しておる。うーん、この空気感。現場人間が慣れない書類仕事をやってる時のもんじゃな。重いわ。
親父殿はその騎士の中から、一人を見つけて声を掛ける。
「ダグラス、今日の仕事。途中で抜けても問題ないか?」
声を掛けられたのは、歳の頃じゃと30過ぎじゃな。若々しくはないし、顔にはまだ深みが出ておらん。
「団長、仕事はすぐにでもキリが付きますが、何か別件ですか」
呼びかけられた騎士は、少し面倒な表情を向ける。うん、上司の無茶振りに泣かされる部下の表情じゃな。でも、簡単に顔に出してはイカンぞ。
「ああ、こいつはエドワード。私の跡取りだ。今日は俺の仕事場を観てみたいと言うから連れて来たんだが、倉庫も観たいと言い出してな。ダグなら倉庫の事は詳しいだろ。申し訳ないんだが、息子の我儘に付き合ってやってくれんか?」
ポーン
ダグラス・フーバー
33歳
騎士団兵站担当
捜索の加護持ち
ダグラスさん、捜索の加護持ちか。でも爵位が出てないって事は平民?いや苗字持ちだから貴族?
「倉庫ですか。ぶっちゃけガラクタ部屋ですよ。子供のおもちゃになる様なモン有るかなぁ?」
ダグラスはうーん、と悩み顔になる。
「大人と子供じゃ視点が違うからな」
親父殿はダグラスの思考を手助けする。
「ダグラスしゃん、わがまま言ってごめんなしゃい」
ペコリと頭を下げるワシを見て、ダグラスは慌てて、
「いやいや、団長の坊ちゃんに頭下げさせたら、こっちの立つ背が無くなります」
と快諾を得てワシに親父殿。そしてダグラスの三人で「ガラクタ部屋」へと向かう。その途中でワシはガイアに、
『なあ、ガイア。ガラクタから獲物を見つけるには、どうしたらえーもんかのぉ?』
『そうですねぇ、ではそろそろ私の能力を小出しにしていきますか』
一瞬、頭の中が真っ白になる。
『幾つかのスキルをお渡ししました。一つは鑑定、物、人全ての鑑定が出来ます。今までのステータスウィンドウよりも強力な奴です。次に魔法陣の読解と作成能力。コレで貴方も魔法陣を作り出せます。ガラクタの中からのお宝探しなら、これくらいは宜しいかと』
まずは調べ物には最適なスキルじゃな。でも、魔法陣とは?
『魔法陣の読解と作成ってのは、かなり難儀なもんなのかえ?』
『魔法は詠唱か魔法陣を使うかのどちらかですが、魔法陣は古い時代のもので、昔は魔力持ちでなくても魔法を使えるように。と作られたものですが、今では詠唱魔法の方が素晴らしいとされて、解読も作成の技術も廃れてしまいました。今、使われている魔法陣は、昔から使い方を伝承されていた物ばかりでして、古の物は見つけても何の為のものか解らずに、腐らせている方が多いです』
いわゆるロストテクノロジーって奴か。前世でも、「こういう風に使えばいい」と、言われるがままに使っておる機械があったっけ。使うは良いが壊れたらもうどうしようもないから、ビクビクして使っておったの。
『古の技をワシで復活させようってか?』
『世間にバレると国中、いや他国を交えての争奪戦になるでしょうね』
心なしか、ガイアの声が笑ってるように聞こえたんじゃが・・・・。ヲイヲイ、簡単に最上級のスキルを与えるな。ワシゃまだ自分で歩くことしか出来ん一歳児じゃぞい。小さく溜め息を吐くと、親父殿を手招きする。内緒の話か?と思った親父殿、ワシを抱き抱えて小声で、
「どうした?何か問題でも」
「父上、ガラクタ部屋を捜索するのに何か良い能力は無いか。と、ガイアに聞いたらスキルを貰ってしまいました」
囁くようにワシが話すと、親父殿はダグラスに聞かれないように、
「スキル?どんなものだ」
「鑑定と魔法陣の読解と作成です」
「ブハッ!」
親父殿、コレから何十回と咽せる事になるんじゃろうなぁ。急に咽せた親父殿をダグラスが訝しむ。(『原因は貴方なんですがね〜』)
慌てて取り繕った親父殿、さっきよりも小さな声でワシに尋ねる。
「魔法陣の読解と作成、そりゃ本当か」
「ガイアが言うんです。間違いないかと」
そう言うと親父殿は険しい顔つきになる。
「魔法陣が読めるだけでも凄いんだが、作る事が出来たらお前を巡って戦争が起こるな」
「戦争?!」
物騒な単語が出てきた。
「魔法陣を新しく作る事が出来れば、先ずは軍事的な利用に目が向く。我がユーレナ王国は平和主義だが、東にあるトルネリア帝国に知られるととても厄介だ」
親父殿の眉間に皺が寄る。そうじゃろうなぁ、ワシは前世の兵器を上澄みではあるが理解しとる。それを元にして魔法陣を作ったら・・・。うん、コレはバレ無い方が良い。同時に、ある程度は王国の中枢部に情報を与えて「物理的に」守って貰おうか。
自分の貰ったスキルがとんでも無く、キナ臭いモノだと理解したワシと親父殿。そんな内緒話をしていると、ガラクタ部屋の前に到着。ダグラスがドアを開けながら、
「最近はあまり出入りしてませんから、ホコリが凄いですよ。それだけはご勘弁を」
そう言ってダグラスが先陣を切って部屋に入っていく。ワシと親父殿も続いて中に入る。倉庫にも窓はあるのだろうが、辺り一面積み上げられたガラクタによって、外の光も遮られがちで、室内は薄暗い。そして澱んだ空気の匂いが鼻に来る。
さて、こんな辺鄙なところで聞き耳を立てる奴もおるまい。と言う事で親父殿から降ろして貰うとダグラスの前に立ち、丁重な騎士の礼をして、
「ダグラス様、私の我儘にお付き合い下さり感謝致します。これから話す事は内密に願います」
さっきまで舌っ足らずな喋り方だった一歳児が、礼を尽くした態度で出て来たのだ。ダグラスはワシを見て固まっていた。
「え、ええ?!」
固まったままのダグラスを放置して、ワシは更に捲し立てる。
「私は創造神ガイア様から、世界を変えろと言う神託を賜りました。魔法で差別されない進んだ世界を作れ。と。今日はこのガラクタ部屋で、捨て置かれている過去の遺物が見つかれば良いなと考えています。今日だけで終わるとは思いません。まだまだお付き合い頂くかも知れませんが、ご容赦を」
うん、更に固まったきたな。そろそろ石像にでもなりゃせんかの?
「ダグラス、エドの言う事は本当だ。俺も目の前に創造神様が顕現されたら、疑う訳にもいくまい。正直面倒だと思うだろうが、諦めてエドの悪巧みに付き合ってやってはくれないか」
おい親父殿、ワシのやろうとしとる事を悪巧みと言うでない。それにお主もしっかり乗っかっておるじゃろが。
「創造神、悪巧み。創造神、悪巧み・・・」
ダグラス、頭ん中がオーバーフローして無限ループに突入しとるな。ちょっとショックがキツ過ぎたかの。
そんなダグラスを親父殿にお任せして、山積みのガラクタへと突進する。少し奥には沢山の石版が置かれていた。表面には幾何学模様が描かれている。これが魔法陣という奴じゃな。
んんーーっ?!
ただの模様かと思っていたが、読める!読めるぞ!!こいつは魔力を入力すると下向きの力に反発する様になっておるの。下向きの力・・・重力に反発じゃと!これは浮遊の魔法陣か。いきなり凄いもん見つけたわい。
を?その下にあったのは、魔力の入力はないが、信号を入力してそれが正解なら動作する。これは暗証番号のロックキーじゃな。
そしてこいつは、あー何じゃコレ?外から魔力を入力すると、真ん中に出力されとるな。真ん中には何やらハマりそうな窪みもある。そして嵌め込んであるのはくすんだ石じゃが、これは何じゃろ。親父殿に見せてみるか。
「父上、面白そうなモノを見つけました」
ダグラスのオーバーフローがようやく解除出来た様で、親父殿は半ば納得出来て無さそうなダグラスを放置して、ワシの元に来る。
「エド、面白そうなおもちゃでも見つけたか」
「はい、おもちゃかどうかはアレですが、この魔法陣の真ん中にある石は何でしょう?」
魔法陣の真ん中にある石を指さすと、親父殿は石のくすみ具合を見ながら、
「これか、これは魔石だ。魔力の力が込められていて、地中から掘り出すか、魔物を討伐すると体内から回収出来る。ウチでも使っているぞ」
「え、ウチでもですか?」
ほぉ、魔石なんてそう簡単にあるとは思わなんだ。
「夜になるとランプを付けるだろ?あのランプは魔石ランプと言って、魔石からの魔力で動くランプだ。だがこの魔石、魔力が空っぽだな。魔力が込められた魔石は属性によって色が変わる。魔力なくなるとこんなくすんだ半透明になる」
どうやら、使い物にならない魔石。と言う事で親父殿の興味は削がれたようだ。
それじゃ、これは使用済みって事。いや、そうじゃないぞ。わざわざ使用済みの魔石をセットすると言う事は?もう少し魔法陣を読み解こう。
こやつは電気回路っぽいな、入力された魔力は一度貯まる・・・この記号はコンデンサか。途中には逆流防止の記号、ダイオード?!うーん、流れを見ると入力された魔力を一定の出力に調整して、装着された魔石に入力しとる・・・。これってもしかしたら魔石に魔力を充電、充電も変じゃな、充魔とでも言っておこうか。
さて、昔なら充電器って言えば話は通じたが、どうやって説明しようかの。
「父上、この魔法陣、魔力を入れると魔石に魔力を充填させる感じですね」
「魔石に魔力を充填・・・って、え?」
思わぬ言葉に親父殿、目が点になった。
「例えば、ランプで使い切った魔石を、もう一度使える様にする魔方陣ですね」
「な、何だってぇ!」
親父殿、声がデカ過ぎ。充分聞こえとるわい。
「魔石が再利用出来るだと!そしたら・・・」
「そしたら?」
「属性魔石を掘り出す鉱山の意味が無くなってくる。我が領には火属性の魔石が出る鉱山が無い。従って戦争やら魔物討伐ともなると、他の領地から火属性の魔石を買い付けねばならん」
どうやら戦ともなれば、火属性の魔石が重要視される。魔法陣にも使えるし、火属性魔法を使う際の「ブースター」みたいな使い方もある様じゃ。となるとじゃ、そう言う必要な属性の魔石が入手出来なければ負ける。日常でも使う魔石だが、根本は戦争資材であると言う事じゃ。
だがこの「充魔器」が有れば、必要な属魔石を自分達で確保出来るとなる。平常時にせっせと作り貯めする事で、魔石不足の心配が無くなる。
こりゃ初っ端からエラいもん引き当てたな。ちゅーか、浮遊の魔法陣から見せておったら更に絶叫しそうじゃな。でも本当にそう言うものなのか?ひとまず実験してみたいが、一体全体、どうすれば魔法陣に魔力を流せる?それらしき入力する場所はあるんじゃが。
「父上、この魔法陣のこの場所から魔力を流せそうなんですが、魔力を流すと言うのはどうやれば良いのでしょう?」
親父殿は魔法陣を見ると、
「例えばのやり方ではあるが、その場所に指先を当てる事で流せる筈だ。魔力を流すと言うのはある種、イメージだな」
「イメージですか」
「ああ、指先を当てて、身体の中から魔力を指先へそして魔法陣へと流れる様に頭の中でイメージするんだ。魔法の詠唱も実際のところは、どの様な現象を起こしたいか?そのイメージの文章なだけだ」
ふむ、イメージの世界ねぇ。頭ん中で想像するのは情報の多かった前世なら簡単な事じゃろうが、この世界では難しいじゃろうな。ん、なら、想像できる様な教育をすれば、意外と魔法が使えるようになる人間が増えるんじゃないのか?
『父上の説明の通りです。この世界の魔法の使い方は、どのような現象を起こしたいかを頭の中にイメージ出来るか。ですので、実際には魔法使いは想像力豊かな人間と言う事ですね』
ガイアも親父殿の説明を裏付けてくれる。まあ理解はした。じゃあ早速試してみるかの。
ワシは魔法陣の入力口辺りに指先を当てて、頭の中でイメージする。属性はどうしたもんじゃろう。水属性で良いな。身体の中に水属性の魔力を湧き上がらせ、腕、腕から指先へそして魔法陣へとイメージする。
暫くすると魔法陣が輝き出し、真ん中に据え付けたカラの魔石もうっすらと発光し始めた。
魔石は発光しながら、ゆっくりと曇りが消えていき次第に青い色合いに変化し始めた。おおこれが水属性の魔力じゃな。まだまだ色合いが薄いからもう少し魔力を流していこう。
親父殿とダグラスは、魔法陣の上でゆっくりと色合いを変えていく魔石をただじっと見つめている。言葉も発しない。
5分ほどかけて、流し込むイメージが詰まって来た様に思えたので、魔力を流すのを止める。どれくらいの魔力を流したのか、自分ではよく分からんが、親父殿とダグラスの表情を見ると、どうやら「規格外」の量を流していた様だ。
『全く、いきなりの割には上手く行った様ですね』
ガイアの言葉からも、まあまあな出来となった様じゃ。つか、おい。こんなに簡単に魔力使える様になってええのんか?
この世界の「ちゅーとりある」をやらずに居るのはお前のせいじゃぞ、ガイア!
『私が居るんですよ、いきなりでも失敗なんてさせやしませんよ』
出来上がった魔石は大海原の様に深い蒼色であった。親父殿は魔法陣から魔石を外すと光にかざして詳しく覗き込む。
「エド、俺は火属性しか持っていないから何とも言えんが、この魔石。かなり良質な水属性の魔力が詰まっているぞ。ここまで深い色合いはかなりの上物だ。こりゃ本当にお前の存在が怖くなってきた」
と言って、出来た魔石をダグラスに渡す。ダグラスも同じ様に光にかざしながら魔石を調べる。
「この魔法陣も凄い代物ですが、坊ちゃんが込めた魔力も相当素晴らしいですな。この魔石なら遠征で使う水瓶を毎日カラにしてもひと月は持つでしょう。坊ちゃんの能力を少しでも理解しようと考えていましたが、止めておいた方が良いですね。普通の人間の理解力を凌駕してます」
ダグラスが魔石をワシに手渡す。さっきガイアに貰った鑑定スキルで魔石を鑑定する。魔力はこのサイズでは最大、水量で換算すると・・・5万リットルぅ?!この魔石を使うと5万リットルの水が出るんか?いやはや魔法と言うのは怖いのぉ。
『私が怖いのはそれだけの魔力を放出しても、何事も無くケロッとしている貴方の方が怖いです。私の能力のコピーだとしても、そこまで行きますかぁ?!』
つくづく水魔法で試して正解じゃった。火魔法じゃったら、とんでも無い破壊力を示しただろうしな。
ワシの手のひらで転がってる魔石と、充魔器であった魔法陣を親父殿が掻っ攫うと、
「エド、こんなの見せられたら悠長な事は言っておれん。明日にでも教会に行って、お前の魔力量を測定してもらう。今からこの魔法陣と魔石を持って、司祭に話をしてくる。ダグ、俺が教会から帰って来るまでエドの遊び相手を頼むぞ」
言うが早いか、親父殿はガラクタ部屋から駆けて行った。残されたエドはともかく、ダグラスは、
「ちょ、ちょ、だ、団長〜っ!こんな規格外の子供と遊べ。って無茶振り過ぎますぅ〜」
と泣き崩れた。なあダグラス、目の前に居るのに「規格外」と言うてくれるな。寂しいじゃないか。泣き崩れたので、エドでもダグラスの肩に充分手が届く。ポンポンと叩きながら、
「ダグラスさん、父上もああ言ってますしもう少しお遊びにお付き合い下さいw」
この日からダグラスはエドの「良いおもちゃ」に成り果てた・・・。
新たなキャラ、ダグラス君。
早速、エドのかわいい「おもちゃ」認定されました。
これからも要所要所で「壊れて」いただきたいと考えております。
(おにー、あくまー、しねーbyダグラス)




