第011話 限定解禁、そしてガイア公認
どうも頭の中で、キャラクター達を動かしていくと、性分なのでしょうか、ギャグ要素が多めになってしまいます。まあ、嫌いではないのですが、ギャグばかりではちょっとねぇ。
と言う事で、ここは少しだけ硬めにしてみました。
本当なら鍛冶場でドワーフ族のルドルフと喋って見たかったんじゃが、息子の前でイジられるのが嫌だった親父殿のせいで、あっという間に連れ出されてしまったワシ。
さて、次は何を見せてくれるんかのぉ?
次に親父殿に連れられてきたのは、静かな佇まいの洋館。入り口にはこちらの世界でもそうかは知らんが、赤い十字のマークがある。診療所か?
「エド、ここは騎士団の診療所だ。今は入院している者も居ないし静かなもんだ。だがひとたび戦いともなれば、ここは第二の戦場になる。これから先、ここが凄惨な状況になるやも知れん。お前がここに運び込まれるか、私がここに運び込まれるか。その時にならんと分からん。カッコいいだけが騎士ではない、それだけは覚えておいてくれ」
そこまで一気に喋った親父殿は、ワシを抱き抱えたまま診療所の奥へと進む。木立の中の小さな道を進むと、その先には沢山の石碑が建つ広場であった。
「エド、ここには騎士団創設以来の殉職者の御霊が祀られている。団が創設されて200年近く経つ、幾度か隣国との争いも起こった。魔物の氾濫も数え切れん。争いの度に騎士団の仲間の血が流れていった。ここはそんな仲間を生涯忘れぬ為の空間だ」
うむ、確かにかっこいいだけが騎士団ではないの。敵国または魔物との戦い、死人が出ないとは限らんでの。しかしまあ凄いもんじゃな。一つの石碑に100人近く名前が書いてある。それが軽く勘定しても30以上。騎士団だけでもこれだけの血が流れたのならば、平民はどれだけ血を流したことかのぉ。
カークはワシの手を握りながら、だが目線は数々の石碑の方を向いている。
「俺が騎士団に入った理由を言って無かったな。まだガキの頃だった。スタンピードが俺の住んでいた村のすぐ近くで発生した。幼馴染や俺に良くしてくれた爺さん。そして可愛かった妹。あっという間に死んでしまった。その後すぐに騎士団が駆け付けて、スタンピードは終息したんだけどな。俺からしたら、何でもっと早く来なかったんだ!それしか無かった。お前らが早く来なかったから死ななくても良い奴らが死んだんだ。それからだ、俺はあんな不甲斐ない騎士団をもっと強くすれば、無為に人が死ぬ事は無いと考えて、騎士団に入団した。そして苦しい訓練に明け暮れ、戦や魔物討伐では先陣を切って突っ込み、戦果を上げ続けた。あの時に守れなかった奴らが戻って来ることは無いが、そうでもしないと俺の気持ちが落ち着かなかった。エド、俺は一つの誓いを立てている。それは俺が騎士団長である間は、この石碑に一つも名前を刻ませない。そう決めている。もしもでいい、お前が俺の跡を継いで騎士団長まで登り詰めたら、同じ誓いを立てて欲しい。まあ、お前が騎士の道を進むならの話だがな」
何時もなら「私」と言う親父殿が珍しく「俺」と言う表現をした。多分だが、私なんて言う余所余所しい言葉では、自分の秘めた感情を伝えられぬと考えたのじゃろう。
ワシは幸いにも第二次世界大戦が終わってから、この世に生を受けた。見知った人が戦で命を失った経験はない。じゃがワシのオヤジやおふくろはワシが生まれるちょっと前まで、簡単に人が死ぬトコを見てきた人じゃった。だから子供の時には良く言い聞かされたもんじゃ。
「簡単に人が死ぬような世界を作ってくれるな。簡単に人が死ぬような環境に慣れてしまうな」
この世界じゃ、簡単に人が死ぬ。そしてそれに慣れていかないと押しつぶされてしまう。そんな世界、ワシに変えられるもんじゃろうか?
そんなワシの問いにガイアがそっと話しかけてくる。
『難しいでしょうな、でも私は貴方にこう言わねばならない「難しいでしょうが、お願いします」と』
よし、腹を括るか。ここなら親父殿しか居らん。ワシの秘密を少しだけバラすか。
「父上、ちょっとおろちてくだしゃい」
ワシは親父殿の腕の中から、地面へと下ろしてもらう。そして親父殿の目を見て、
「父上、じゃんねんですが、ぼくは騎士にはなりましぇん。なぜなら、神にこう言われました『お前に力を貸す、その貸した力を使ってこの世界をもっとより良いものにしてほしい』と。だから、神様との約束を守るには騎士にはなれません。ですが、この世界をより良いものにしていく過程で、父上の手助けが出来るかも知れません。それを理解して頂けますでしょうか?」
舌っ足らずな喋り方だった筈の息子が、いきなりとんでもない事を喋り始めたのを見て、親父殿は暫く声を失ってしまった。目は真ん丸、口はポカーンと開きっぱなし。
もう一声、親父殿にはショック療法が必要かの?ワシはガイアを呼ぶ。
『なあガイア、一つお願いがあるんじゃが』
『おやおや、貴方の方からお願いとは珍しい』
『お前さん、親父殿の前に姿を見せられるか?』
『はあ、出来ますけどどうして?』
『一歳児が急にペラペラ喋る様になってみろ、悪魔にでも取り憑かれたんじゃないかと疑心暗鬼になるじゃろ。お前さんの口からも説明してやってくれ。但し転生者である事は言うなよ』
『それくらいならお安い御用で』
すぐさまワシの後ろから眩い光が差した。親父殿はそちらに気を取られる。光の中央には凛々しい姿の創造神ガイアは立っておった。
『私は創造神ガイア、この世界を作った神』
「そ、創造神様・・・」
信心深いとは言えなさそうな親父殿も、目の前に現れた創造神に対しては素直に跪き頭を垂れる。
「この世界、まだまだ良くなる筈であったが、なかなか良くはなっていない。このままでは私も辛いのだ。そこで、そなたの息子、エドワードに加護と知恵を与えた。そなたはエドワードの良き理解者となり、エドワードと共にこの世界をより良くする事を望む」
「え、エドに加護と知恵。でございますか」
「そうだ、そなたの息子は非常に良く出来た子じゃ。親として子の才能を伸ばし、この世界の為に役立つ様にしてやって欲しい。これは神としての願いじゃ」
神様からのお墨付き、なんてそうそう無いじゃろう。親父殿も聞いてはいるだろうが、理解出来とるかの?
「そなたの願いも有るだろうが、ここは一つ、神の我儘を受け入れて欲しい。頼んだぞ」
そう言うと眩い光は消え去り、先程までの光景に戻った。
親父殿は、暫く唖然としていた。たまに行く教会、そこに祭られている創造神が目の前に顕現してきたのだ。そしてワシを神の使いと言い切ったのだ。よーし、これで今までの「子供のお芝居」は終わりかの?
「エド、さっきのは」
「はい、僕が約束した創造神様です。おかげで普通の子より成長が早く成りました。父上、びっくりさせて申し訳ありません。隠し通しても良かったのですが、それだと神との約束が進みそうになかったので、神様と共謀させて頂きました」
親父殿は跪いた態勢のままで、額に手を当てやると大笑いし始めた。
「ははは、何と言うことだ。我が子が神の使いとは。だからこんなにも早く成長するとはなぁ。参った参った。おいエド、なぜ隠し通そうとしなかった?」
「簡単です、騎士団長である父上ならば政治の中心近くとの繋がりも有ります。それにここにはドワーフ族の鍛冶屋もいました。コレから色々と作りたいものがあるので、出来れば巻き込んでやろうかと」
親父殿は跪いた姿勢から地面に座り込み、ワシと目線の高さを合わせる。
「とんだ一歳児だな、俺と周りを巻き込んで大騒ぎをしようとは。おいエド、お前はホントに一歳児なのか?」
疑り深い目線でワシの顔を伺う親父殿。
「ええ、ちょっと成長が早すぎる一歳児でお願いします」
「ふむ、とりあえずは納得してやろう。だが、俺以外はどうやって誤魔化すつもりだ?」
「まあ、その辺は上手くやって見せますよ」
ワシは肩を竦めながら答える。
「おいおい、そんな誤魔化し方をする一歳児なんて見たことが無いぞ」
「いや、今見たでしょ?」
親父殿は黙ってワシの右手を取り、握手の態勢を取る。
「エド、一つだけ約束しろ。俺より先に死ぬなよ」
「父上こそ、長生きして頂かないと困りますね。僕の作った新しい世界を見て頂かないと困るので」
「返しも上手いな、まさか中身は俺より年上じゃあるまい?」
ギクッ!
たまーに居るんじゃよ、妙に感の鋭いのが。
暫くは75歳のジジイとはバレないように、気を付けねばならんの。じゃが、これから親父殿とはかなり深い話が出来そうじゃな。
「さてとエド、そろそろ腹が減ったんじゃないか?エレナから貰ってきた奴でお昼にでもするか」
「ですね、慌ただしく連れ回されましたから、ちょっと休憩もしたいですし。父上、抱っこして下さい」
「こう言う時だけ、一歳児のふりか?まあいい、エドの歩くスピードじゃ昼飯の時間が無くなってしまうからな」
ワシをヒョイと抱き抱えた親父殿は、ちょっと急ぎ足で食堂のある庁舎へと歩いていった。
さて、ちょっとだけエドのネタばらしをしてみました。
ここから先、どれだけの人にネタばらしをしていくのかは、話の流れによる・・・・。
でも、エドの喋り方。どうみても親父殿よりも年上っぽく見えるなぁ。




