第010話 探検はまだまだ続くよ
仕事が終わった後の「ビール」は旨いっ!
滅多な事では呑まない人なんですがね。たまには「カシュっ!」とやりたくもなります。
(実のところは、非常時の呼び出し要員から外れたいだけ)
さて、いずれはエドも「カシュっ!」とやる年齢になるんですよね?
一体、いつになったらソコまでたどり着けることやら・・・。
訓練場を後にしたワシと親父殿。続いては庁舎の裏手へとやってきた。奥には大きな厩がある。
「あそこの大きい建物には、騎士団で皆が乗る馬が繋がれている。一応乗る騎士と馬はペアになっているから、自分で世話をするのが義務だが。ブラシを掛けたりするぐらいしか出来ないのも多いし、馬の健康状態を詳しく見る事も出来ないので、団で馬の面倒は見ているんだ。さあ行こう。たくさん、お馬さんが居るぞぉ」
と親父殿の説明が終わったと同時に、ワシを抱いたまま駆け足で突撃する。そんなに慌てんでもええ。お馬さんは逃げんじゃろーが。
厩の入り口に立つと、中にはたくさんの馬が個室らしきところに整然と収まっている。顔を覗かせてない馬もいる様だが、殆どの馬は首を突き出して、世話をする従者の動きに注目している。
そんな中に今朝乗ってきたばかりの親父殿の馬も居る。なんかつまんなさそうな表情で飼い葉桶に頭を突っ込んでいる。いつもは凛々しい表情を見せてかっこいい!と思ったが、アレは馬なりの芝居だったのか?
親父殿と一緒になって、馬に近付くとさっきまでのつまんなさそうな表情から一転、いつも見せる凛々しい表情に変わった。やっぱり芝居かよ。馬なのに芝居が上手いってどうよ?
ポーン
ホーテンルドルフ号
雄・9歳
カーク騎士団長の愛馬。
騎士団の馬の中で一番の俊足
王都で開かれる騎士団対抗の競馬で3連勝中
一番の好物は年頃の牝馬のケツ
またしてもステータスウィンドウが出てきた、これは動物でも何でも使えるのかや?
『一応、何にでも使える様に設定してあります。ただ何にでも反応すると鬱陶しいと思いましたので、標準で興味の向いたものにしか動作しない様にしてあります』
的確な回答ありがとう、ガイア。
ただ、このウィンドウの最後の一文。これは必要なものかえ?これじゃあまるで、
『ええ、何処かの誰かさんみたいに、おっぱいおっぱい言ってる一歳児と同じですな』
・・・ガイア、いつか処す!
従者の一人がワシらに気が付いて駆け寄ってくる。歳の頃は13から15歳くらいなのかな?ニキビ面が初々しいのぉ。
「騎士団長!今日は一体何のご用でしょうか?」
ポーン
マルク
14歳
騎士団団属(馬担当)
治療魔法(初級)のスキル持ち
おお、この少年。平民の出なのに魔法を操れるんかい。治療魔法か、馬の手入れの為なのかの?
「マルク、いつもお疲れさん。今日は息子のエドが私の仕事場を見たいって言うから、あちこち連れ回してるんだ。ほらエド、挨拶は?」
「おあよーございましゅ、エドワードと言いましゅ。いつもお馬さんの面倒を見てくれてありがとうございましゅ」
ワシに頭を下げられて、マルクも慌てて帽子を取り頭を下げる。
「ま、マルクって言います。騎士団で働く様になってもう5年です。去年から馬の担当をやってます」
14歳だが、もう5年も働いておるのか。話には聞いておったがやはり中世の時代は、子供の労働が当たり前だったんか。でも騎士団で働くならまだ良い方なのかな?変なところで働かされたら、奴隷の様にコキ使われるじゃろうし。
「エド、実はマルクは治療魔法が使えるんだ。そのおかげで騎士団の馬たちはいつも健康そのものだ。団員皆、お前には感謝してるぞ」
「い、いえ。こちらこそ教会でコキ使われる前に拾って頂いた。それだけで充分っす。ここなら馬の手入れ以外にも読み書きとか色んな事を勉強できますし」
教会でコキ使われるじゃと?なんか聞き捨てならん台詞じゃの。
『残念な事に、平民でも魔法。特に治療魔法が使えると判ると、その殆どが教会の下に集められてしまいます。教会では治療魔法を使って怪我人、病人を治しお布施を集めているそうです。私はそんな風に魔法を使えなんて教えたつもりは無いのですが、こればかりは私の力も及ばないトコです』
なぁにぃ〜?そんな輩が教会に巣食っとるのか!
『そうやって魔法で儲けようとする奴らがいるおかげで、この世界では魔法持ちと持たない者の落差が激しいんです。それを貴方の知識で何とかして貰いたい。その為に転生して貰ったのです』
貴族も教会も腐って居れば、世界は発展せんわな。
だとしたら、少し早めに動かねばならんの。
『まずは平民の暮らしを楽に。そして魔法があろうがなかろうが暮らせる世界を。私が望むのはそこです』
いつもの突っ込み役ではない、ガイアの心の中を聞かせて貰った。だがのぉ、ワシゃ何処から手を付けて良いか良く分からん。
『迷わない様にこうして貴方に話しかけてるんです』
あい分かった。早いトコこの世界の問題点を見つけて一つずつ解決せねば。マルクの様な子供が苦労しない世界を作り上げねば。
厩の隣には鍛冶場が作られていた。騎士団で使われる武器もそうだが、馬には蹄鉄っちゅー足を守る為の大事な金具もある。それをここで作っておると言う事じゃな。
入り口の扉を開けると、中からモワッとした熱気が押し寄せてくる。鍛冶場は鉄を溶かしてナンボの職場、ここは冬でも汗だくになる程の過酷な現場じゃ。
「エド、ここでは我々が使う武器もそうだが、馬の蹄鉄、城の中で使われる鉄製品も作っている。余り長居はしたくは無いがどうする?」
「父上ー、あのおじしゃんとお話ししてみらいれしゅ」
ワシは鍛冶場の心臓部たる炉の前で必死にハンマーを振っている男を指差した。
「ルドルフ!ちょっと良いか?」
「誰じゃ!せっかく気持ち良くハンマーを振っとる時に・・・って、カークではないか。お前さん、ここに来る程の暇が有るんか?」
炉の前でハンマーを振っていた男は、ゴツいのだが、何だか普通よりも背丈が小さい。さっき厩で会ったマルクと背丈はそうは変わらんと見た。
「ルドルフ、悪い悪い。今日は我が息子、エドが私の仕事場を見たいってせがまれてな。あちこち連れ回してるところだよ。エド、ルドルフだ。騎士団と言うかこの城の中で使う金属製品の生みの親だ。ちなみにルドルフはドワーフ族だ」
ど、ドワーフ族ぅ?
モノづくりと酒には非常に煩い、職人中の職人じゃないか。まさか本当にドワーフ族と逢えるとはのぉ。 って、そうだな。ここは前世と違う世界。魔法もあれば魔物もいる。だとすれば人間以外の種族が居てもおかしくはないか。
「おう、この子がお前さんの倅か。言っちゃ悪いがお前さんよりもお利口そうに見えるなw」
エドの顔を覗き込んだ後、カークの顔を見ながらルドルフは、軽口を叩く。
「ったく、いつもながらに口が悪いな。まあそれがドワーフ族の特徴では有るんだがな」
カークは、褒められてるのか貶されてるのか、どっちともつかない苦み走った表情をする。
ポーン
ルドルフ
ドワーフ族
168歳
騎士団団属
若かりし頃、族内の騒動で里を追われた。
先々代の辺境伯と出会い、鍛治の腕を買われてそれ以来、辺境伯領で鍛冶仕事を行う。
ふむ、里を追い出されたとあるな。大方、進歩的な考え方でも披露して古の教えにでも反したのかのぉ。だがなそれがあってこその技術者じゃ。このドワーフとは仲良くしたいの。
『おあよーございましゅ、エドワードでしゅ』
「こんなに小さいのにしっかりとしとるな、カーク、本当にお前さんの息子か?」
「こ、こらっ!息子に変な事を吹き込むんじゃない!お前さんは炉を吹き込んでれば良いの!」
親父殿、タチアナと言いチャールズにルドルフ、揃いも揃って揶揄われてるが、一体どんだけ若い時にやらかしとんのじゃ?ワシゃ心配になってくるぞい。
ルドルフにこれ以上揶揄われたくはない、と親父殿はさっさと鍛冶場を後にする。やっぱ、黒歴史か?ほじくり返されたく無い事が一杯ある様じゃの。こう言う時こそあの台詞じゃ。
「認めたくないものだな、自分自身の若さゆえの過ちというものを」
『エド、貴方の父上は確かに凄い騎士ですが「3倍早い」とかそんなんじゃないでしょ?私、予言しても良いですか?貴方がこの先父上以外の誰かに殴られたら、こう言うんでしょうね。「二度もぶった。親父にもぶたれた事ないのに!」って』
よぉ分かっとるではないか。さすが創造神様じゃの。
『ファースト世代ってのが分かればね。それなりに対応出来ます』
ふむ、よー勉強しとるの。
揶揄われまくった親父殿、次は何処へ連れてってくれるのかのぉ?
やはり異世界でのモノづくりと言えば、ドワーフ族ですよね。
まずはファーストコンタクトを取りました。
いずれはルドルフもエドの「規格外」の発想に巻き込まれて、疲弊する・・・・のかな?
皆さんの書くドワーフ族は、仕事好き、酒好き、豪快。というのしか見当たりませんのでね。私もそんな風なドワーフ族にしてしまいそうです。




