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【完結済】守ってあげたい蠱惑姫と思いきや、1人で何でも出来る孤独姫でした〜捕まえておけないので自由にさせておきます〜  作者: 朔島 涼
四章.エレノアの覚悟

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64.アダムの独白

俺は魔人族の末裔であり、おそらく最後の生き残りだろう。物心がついてから今まで、同族に会った事がないからだ。


3千年前の人間族と魔人族との戦争により、数が圧倒的に劣る魔人族が負けたのだと聞く。当時赤子であった俺は、森の中に隠され何とか生き延びたようだ。人間と違い、魔力さえ尽きなければ何ヶ月も何も食べなくても死ぬことはない。俺自身に保護魔法がかけられていたため、魔獣などに喰われる事もなかった。


森の中で、魔獣と同じような生活を何十年何百年と続けてきた頃、俺は人生の中で1番大切になる人と出会った。彼女はまだ子どもで、なぜ1人であんな森の中にいたのかも分からない。ただ、膨大な魔力を宿していたため、一瞬同族かもと思ったが、彼女は正真正銘人間族の子どもであった。


彼女は何か話したが、言葉が分からない。急に抱きしめられて撫でられて、暖かな光に包まれたと思ったら…俺は彼女の従魔になっていた。言葉がわかるようになってからこの時のこと教えてくれたが、俺の事を孤児の迷子だと思った彼女が、自分の従者に育てようとしたらしい。無自覚で魔人族を従魔にしてしまう魔力を持っている子ども、本当に無茶苦茶な女だった。


契約魔法が発動した事で、俺が魔物の類だと気がついたようだが、彼女は予定通り俺を従者にすべく育ててくれた。言葉や一般常識はもちろん、貴族のマナーもそこで身につけたものだ。


俺は森の中で必要最低限の栄養しか摂っていなかったため、子どものような見た目であったが、彼女のもとで栄養のある食事を摂るようになると、あっという間に成人の姿となり、周りを驚かせた。


彼女は本当に破茶滅茶で騒がしい女であったが、ずっとひとりぼっちでいた私にとっては唯一の大切な人であった。彼女が大人になり、婚期が近くなると今度は周りが騒がしくなり始めた。どうしても誰にも渡したくなくて、俺は彼女を困らせてしまった。最後に俺を選んでくれた時は本当に嬉しかった。


人間の女を伴侶としても、長く一緒にいられない事を覚悟していたが、彼女は本当に長生きだった。俺の傍にいる影響なのか、人間族の寿命の10倍もの時間を一緒に過ごしてくれた。もしかすると、元々魔力が高かったのも、寿命が長かったのも、祖先のどこかで魔族の血が入っていて隔世遺伝をしたのもしれない。


彼女がいなくなってしまった時の悲しみは今でも思い出したくない。彼女のいない時間を過ごすのは耐え難く、彼女の亡骸と一緒に洞窟の奥深くで眠る事にした。入り口を塞ぎ、保護魔法をかけて洞窟全体を自ら封印してして深い眠りについた。


しかし千年ほどたった頃、人間の手によってその洞窟が突然爆破されたのだ。長い間眠っていた事で、魔力が落ちて保護魔法の効果も薄れていたのだろう。強靭な自分の肉体はびくともしなかったが、彼女の亡骸は跡形もなく吹き飛んでしまっていた。


俺はその後数ヶ月の記憶がない。気がついた時にはサルヴァ山と呼ばれるこの山にいて、洞窟で再び眠ろうとしていた。2度と人間に邪魔されぬよう周囲の魔獣を暴れさせて。


サルヴァ山に来てから数ヶ月後、またもや変な女に出会った。そいつもまた、俺に契約魔法をかけた。そんな女がこの世に2人もいるとは思わなかったので本当に驚いた。しかしこの女は、綿密に計画を立てた上で、さらに契約魔法をアレンジしたと言う。彼女とはまた違う方向に無茶苦茶だと思う。名はエレノアと名乗った。


その後もエレノアは凄かった。1週間で俺の寝床という名目の城を建て、そして俺の未来の事まで気を配り、手を回してくれていた。自分が居なくなってもひとりぼっちにならないようにと。


聞けば、エレノアは王太子妃になる女でありながら、国境に秘密裏に国防拠点を兼ねたカフェを東西南北4店舗も経営しているといる。これで人間だという。もはや怖いと思った。だが本当に面倒見のいい女で、用もないのに俺の様子を時々見に来てくれる。エレノアも大切な人間になった。


しかし、今度は大切な人間が1人ではない。エレノアの婚約者であるリヒトも、リヒトの叔父のイザークも。結婚式に忍び込むために手伝ってくれたレオナルドも。エレノアの周りには優しくて凄い奴しかいない。


エレノアとリヒトは今まで紆余曲折あったようだが、2人には幸せになってほしいと思う。彼女のように自分のものにしたいとも思わない。もう2度と悲しい思いをしたくないという気持ちも否定しないが、それ以上に祝福したい気持ちの方が大きい。我が儘だと分かっていたし、困らせるかもしれないと思ったが、結婚式に行きたいと伝えてしまった。


エレノアは一瞬戸惑いの表情を見せたが、次の瞬間からどうしたら可能になるかを一生懸命考えてくれた。こういう所が大好きだと思う。そして、その作戦を快諾してくれるリヒトもイザークも、協力してくれたレオナルドも。彼らが生きている限り、感謝を伝え続けていけたらと思う。もう一度人らしく生きられる機会をくれた事。未来をくれた事。仲間をくれた事。本当にありがとう。

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