63.レオナルドへの信頼
「……というわけなんです。」
「というわけなんですじゃないよ、全く。」
「ダメですか?」
「はぁ。エレノア様のご要望とあらば、仕方がありませんね。」
何だかんだ言いながらもすぐに快諾してくれるレオナルド。アダムの可愛い我が儘を叶えるために、すぐにヘレンツェ側の国境の街トルトリアのマーメイドカフェに集合をかけたのだ。
「いつもすまない、レオナルド。」
同席してくれたリヒトが謝罪する。
「本当に思ってる?俺も一応王太子だからね。結構やる事あるんだからね。」
フットワークが軽く、ノリも軽いため忘れがちであるが、レオナルドはヘレンツェの次期国王である。
「もちろん分かっています。王太子殿下だからこそのお願いなのです。レオ様にしかお願いできませんわ。」
「…………エレノアは多分本当にそう思ってくれているのだと思うが、普段の自分の行いのせいか、社交辞令に聞こえてくるな。」
レオナルドが苦笑い浮かべる。
「レオナルド様、よろしくお願いします。」
借りてきた猫のように、椅子に座って大人しくしていたアダムが、急にしゃべりかけたためレオナルドはびくりと身体をこわばらせた。
「おお、よろしくな。喋れないのかと思ってたからびっくりした……。」
「アダムは言葉はもちろん、一般常識やマナーも問題ありませんわ。あとは設定だけ擦り合わせてもらえれば……。」
「とはいえ、アダムと俺じゃ絶対に親戚には見えないんじゃないか?」
アダムは本来の姿で座っているため、レオナルドは不安そうにアダムを見た。
「大丈夫ですよ。アダム、レオ様と似た姿の15歳くらいの男の子になれる?」
「分かった。」
アダムはおもむろに立ち上がる。
「【変身】」
魔法により一瞬で姿を変えたアダムに、レオナルドは驚きの表情を浮かべる。
「すごいな魔法って!こんなことも出来るんだな。」
さっきまでの不安そうな顔はどこへやらで、目をキラキラさせてアダムを眺める。
「……弟ができたみたいで嬉しいな。」
めんどくさい状況にいつも巻き込まれるレオナルド。この状況を既に楽しみに変えている。
「親戚の弟分で、留学前にアランデルに下見に来た。っていうか設定で考えていたんだけど、どうかな?」
エレノアも丸投げする気はなく、色々と考えていたようだ。
「社交界デビュー直後の設定にすれば、何かミスしても多めに見てもらえるだろうし、レオ様にとってはフォローが軽くなると思いまして。」
「アダムにとっても留学する予定にしておけば、国内でちらほら見かけるようになっても都合がいいと……。」
「おっしゃる通り。」
レオナルドは本当に勘が良い。
「オーケー。その設定でいこう。改めてよろしくな。親戚の設定だ、仲良くしていこう。」
「……うん。」
アダムもレオナルドの事を苦手そうではなく安心する。
家族ではなく親戚の設定なので、お互いのことはそんなに詳しくなくても良いとは思うが、アダムの家柄の設定や家族の名前、ヘレンツェの国のこと、そしてお互いの食べ物の好み、苦手なものなどくらいは把握しておくことになった。
「当日の服装も揃いで作っておくね。体のサイズ感はそのまま再現できる?」
「大丈夫。」
「じゃあ、その姿で何となく採寸しておこうか。」
レオナルドがサッと立ち上がり、アダムに近づく。
「え、誰が?」
「俺が。」
「レオ様そんな事までできるんですか?」
「ヘレンツェは貿易で入ってきた布地や宝石、デザインで服飾産業が栄えているんだ。何となくの採寸くらいはできるよ。」
レオナルドはくしゃりと笑うと、ポケットに入っていたメジャーでササッとアダムの採寸をやってのける。リヒトとエレノアは驚きすぎて、言葉を失った。




