62.アダムの我が儘
「なあ、それ俺も行っちゃだめか?」
『それ』というのはエレノアとリヒトの結婚式であり、この発言の主はアダムである。婚約式の後、アダムの城を訪れたエレノアに新たな問題が爆誕している。
「結婚式だよ?ただの儀式だよ?行きたい?」
「うん。行きたい。」
ほう、なるほど……とエレノアは考える。
「そうだなぁ。じゃあ、アダムは変身魔法は使える?」
「変身魔法?」
「そう、こんな感じで。」
「【変身】」
エレノアはカフェで働いていた時のエリックの姿に変身した。
「子どもの姿のままじゃ王城の結婚式は入れなくて。」
「【変身】」
アダムが大人の姿に変身した。アダムをそのまま成長させて大人にしたような姿だ。
「うんうん、いい感じ。他には、全然違う人にもなれる?例えば、大人の女性とか!」
「【変身】」
今度は無茶苦茶色気のある大人の女性に変身したが、これもまた大人アダムを女装させたような姿だった。
「これでどう?」
「おお、素敵ね。変身魔法は問題ないわ。だけど、どうしたらいいかな。貴族として入り込むのは難しいだろうし。」
「どういう事?」
「アランデルは貴族同士の関わりが密だから、全く知らない人が貴族として紛れ込むのは難しいのよ。本物の貴族の私でさえ、学校には行ってないし、社交界デビューもしてないから最初は受け入れられなかったわ。」
エレノアが苦笑いを浮かべる。
「なるほどね。今は移動手段の発展や道の整備で国内の移動が簡単だからな。王都から遠い領地の貴族も集まりやすいのか。」
「なんかアダム、おじいちゃんみたいだね。」
その容姿と発言とのギャップに、エレノアはふふふっと微笑む。
「じゃあ、精神魔法を使って記憶を弄……」
「絶対にダメです!」
エレノアは食い気味で却下した。
「しかし意外だな。貴族のマナー云々の方を問題視するかと思った。」
「ああ、アダムは意外とマナー問題ないんだよね。食事の仕方も綺麗だし、立ち居振る舞いも綺麗だから。何か教育を受けた事があるんじゃない?」
「そうだな。」
「ふふ、エレノアさんの目は確かですよ。王太子妃教育を2度も受けてますからね。」
エレノアはにこりと笑った。
「従者は?」
「従者ね。いけなくもないけど、そうなると身内に対して、かなりの人数に誤魔化さないといけなくなるから厳しいかな。」
「精神魔法を使って記憶を……」
「絶対にダメです!」
先ほどよりもさらに食い気味に却下した。
「残すは……。」
「残すは?」
「隣国の来賓に紛れ込む!それだと見知らぬ人がいて当たり前だし、身内の人たちへの誤魔化しも不要。」
「ああ、良さそうだな。」
アダムはこくりと頷く。
「じゃあ、青い瞳に褐色の肌色で、シルバーアッシュの髪色に変身できる?」
「【変身】」
「すごい!滅茶苦茶いい感じ。これで結婚式主席できるよ!」
アダムに変身してもらったのはもちろんヘレンツェの王族の容姿。困った時のレオナルド。今回も多いにレオナルドに頼る作戦に出ることにした。
「よし、早速レオナルド様にお願いしに行こう!」
「え、それ俺も行くの?」
「貴方が結婚式行きたいんでしょ?」
「いや、でも俺の事そんなに連れ回していいのか?ここに封印してる事になってるんだろ?」
「あ、忘れてた。」
「まあ、結婚式に行きたいって言った俺が言える事じゃないが、そんなに頻繁に外に出てもいいのか?」
「……。」
「やっぱり諦め……」
エレノアがガバッと立ち上がる。
「私、陛下の許可とってくるね!」
「え?」
「ちょっと待ってて!」
そうして慌ただしく出て行くと、無事にアダムの外出許可を取ってきたのだった。(ただし、変装すること。)




