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【完結済】守ってあげたい蠱惑姫と思いきや、1人で何でも出来る孤独姫でした〜捕まえておけないので自由にさせておきます〜  作者: 朔島 涼
四章.エレノアの覚悟

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60.王太子妃は辛いよ

王太子妃になる準備といっても、王太子妃教育はエレノアが家出する前までにすでにほとんど終わっていた。今はその復習をするくらいで、それ自体はそれほど大変ではなかった。それより何より婚約式と結婚式の準備の方が骨が折れた。ドレスを何着も試着したり採寸したり生地を選んだり、会場の装飾やお料理を選んだり、来客のリストを作ったり、席順を考えたり、式典の内容や儀礼の手順を覚えたり練習したり。そういった事の方がエレノアの体力と精神力を削いでいた。


「びっくりするほど全然頭に入ってこない…。」


最近は興味がある事や好きなことばかりに没頭していたから、全く興味がない事を頑張るのが辛い。


「これは本当に大変ですね。リヒト様はこのような事をずっと?」

「ふふ、そうだね。でもエレノアならすぐに慣れるよ。」


向かいのソファには、なんでもない事のように笑うリヒト。今日は式典の打ち合わせのためにリヒトの執務室にお邪魔している。覚えたり考えたりする量はほぼ同じ、もしくはリヒトの方が多いくらいなのだが、彼は涼しい顔でこなしている。


「僕も昔は大変だったし、なんでこんな事をしなきゃいけないんだと思う事もあったけどね。今は慣れてしまったし、必要な事だとも思うから何とかやっていけてるかな。」

「私が好き放題自由に過ごしていた間にも、リヒト様には数多くの公務や式典に出席し、政務をこなして、さらに合間に私にも会いにきてくれていたなんて。凄すぎやしませんか?」


エレノアは頭を抱えて机に突っ伏した。


「いやいや、僕には一晩でカフェと家を作る事もできないし、1週間で城を作る事もできないよ。エレノアも十分凄いからね。得意不得意は誰にでもあるし、慣れればエレノアの方が簡単にこなしてしまうんじゃない?」


優しい言葉に励まされて、ゆっくりと涙目の顔をあげる。


「…ありがとうございます。弱音を吐いていても始まりませんから頑張りますね。」


ふぅ…とため息を吐きながらもまた書類と睨めっこを始めた。そんなエレノアを眩しそうにリヒトは眺める。エレノアは今や国民的英雄だ。儀礼をちょっとくらい失敗したって誰も怒らないし、何にも思わない。そんな事出来なくたって、エレノアはすごい人だし、エレノアの価値は変わらないのだ。それでも彼女はちゃんと努力して、当日までにはきっちり仕上げてくるんだろうな、とリヒトは思う。


「リヒト様?何処か気になるところでも?」


リヒトの視線に気がつき、エレノアが顔を上げる。


「ああ、ごめんね。つい見惚れちゃった。」


リヒトは笑って誤魔化す。


「必死なんですから、揶揄わないでください!」


エレノアは顔を赤くして頬を膨らませる。


「ふふ、本当の事なんだけどな。でも、ごめんね?」


リヒトはそんなエレノアも可愛くてつい笑ってしまった。こんな日常がやってくるなんて、本当に夢のようだとリヒトは思う。数年前エレノアがいなくなって絶望していた自分に、こんな未来が待っている事を教えてあげたい。





「では、こちらの婚約誓約書にサインを。」

「「はい。」」


そしてその数ヶ月後、エレノアはやはり式典当日にはきっちり儀礼をこなして、皆が見守られながら圧巻の立ち居振る舞いを見せるのであった。

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