53.リヒトとイザークは縁の下で頑張ります
翌朝、再び顔を出したレオナルドに、エレノアはカゴに山盛りの魔石を渡した。
「え、ちゃんと帰ってくるんだよね。俺、こう見えても隣国の王太子だからね。」
「ふふ、知ってます。大丈夫ですよ、ちゃんと…どうにかしますから。」
その笑顔を見たレオナルドは、エレノア自身はもう帰って来ないつもりだろうと確信した。そして、エレノアはシンデレラカフェとロレーヌ邸を繋ぐ転移陣へと消えていった。
「エレノアは覚悟を決めたみたいだな。俺ももうひと頑張りして、恩を返し終えたらヘレンツェに帰って親孝行しないとな。」
そう言うと、シンデレラカフェのホールへと向かった。
遡る事3日前、ロレーヌ邸ではアダムが予想以上に大人しく、特にやることがなかったリヒトは、王城から書類を取り寄せて客間で仕事をしていた。元々、しばらく王城を離れる予定であったため、たいして仕事はないのだが、何もしていないのは手持ち無沙汰であった。
「アダムは本当に疲れていたんだろうな。さっきもベッドに横になった途端、気を失うように眠ったよ。一応【催眠】かけたけど、僕の魔力じゃ大した効果はないと思うし。」
ロレーヌ邸に様子を見にきたイザークに報告する。
「そうか。まあ大人しくしてくれているのは助かる。」
「そうなんだけど…。」
「なんか気になる事でも?」
「ゆっくり休んで魔力が回復したら、暴れ出したりしないかなとか。」
「まあ普通はそう考えるな。」
「でも、エレノアにはそうじゃない未来が見えている。そして、多分レオナルドにもエレノアが解決する未来が見えてるから、店番を変わってくれたんだと思います。」
「ほう。それは心強いな。」
「後3日、エレノアを信じて待ちましょう。」
この日は既に魔王城のおおよそが出来上がった日であった。
「しかし、エレノアはかなり大規模な建物を作っているのか?王城の修繕用に備蓄しているセメントや金属類を取り寄せていた。」
「かと思ったら、布やピンを要請してきたり…。1週間かけて大きなテントを張ってたりして。」
「…笑えないな。」
「笑えないですね。」
そこに扉をノックする音が聞こえる。
「リヒト様、失礼いたします。エレノア様よりご報告と備品の要請が届いております。」
「ああ、ありがとう。」
ふたりは受け取った書類に目を通す。要約すると、『アダム城が完成しました。でも中身が空っぽでカッコ悪いから、中に飾るものと、書庫用の書籍ください。』だそうだ。城の完成図まで付いている。
「し、城かぁー。そっかー。そうなったかー。」
「城だな。さすがエレノア。うん、城。」
2人とも半眼である。
「城に納めるレベルと数の装飾品と美術品、後書籍ね。」
「とりあえず、アランデル王城からかっぱらってきたらいいのか?兄上の首をもう一度、縦に動かしてこよう。」
「書籍は王城から大量に持ち出すと、用途が怪しまれますね。書店丸ごと買い取りましょうか?」
「それがいい、そうしよう。」
フラフラと立ち上がるイザークを見てリヒトが声をかける。
「あ、流石に手伝います。アダム大人しいんで。」
「助かる。」
ふたりは頭を抱えながらロレーヌ邸を後にした。
「君のところの姫、ほんと人使い荒いよな。」
「そんな事ありませんよ。おじさんの可愛い従姪ちゃんには敵いません。」(注意、同一人物です!)




