47.子ども魔王、従魔になる?!
「は?」
子ども魔王が不機嫌そうにエレノアを見る。
「契約魔法!エレノア、いつの間にそんな事を…。」
「誰だ!」
子ども魔王が驚き、先程までよりも大きな声を出す。エレノアの左後方からリヒトが姿を現した。魔力を完全に消して潜んでいたようだ。退避させた騎士が呼びに行ったのだろう。エレノアは驚く様子もなく会話する。
「いつか、何かに使えるかと思ってこっそり練習していたんです。慣れない魔法なんで、魔法陣なしに無詠唱で発動できるか心配だったんですけど、頭の中でうまく術式展開できてよかったです。」
「確か、他国で従魔との契約に使う魔法だな。」
「じゅ、従魔だと?」
子ども魔王は唖然とする。反対側の茂みから出てきたイザークよりも、彼から発せられた言葉に驚いたようだ。イザークも言わずもがな魔力を消して潜んでいた。
「安心してください。確かに魔物を従魔にする際に他国で使われている魔法ですが、貴方を従魔にする術式は組み込んでいません。参考にさせていただいただけですので。」
エレノアは笑顔で説明を続ける。
「バケモノかお前は…」
子ども魔王は驚愕の表情でエレノアを見る。他国の魔法という事は実際に見聞きしたことのない魔法を、さらに応用して手を加えるなど、そうそうできるとこではない。
「それはお互い様ですわ。」
「ふん。」
子ども魔王はそっぽを向いてしまった。
「さあ、準備を始めましょう。」
エレノアは軽やかに身を翻すと、リヒトとイザークに向き直る。
「イザークおじ様、お願いがあります。サルヴァ山の頂上付近を、そうですね…70ヘクタールほどお借りいただけるよう陛下に…」
「ああ、首を縦に動かしてこよう。」
エレノアが言い終わる前にイザークが答える。
「お願いします。」
エレノアはニコリと微笑む。イザークはエレノアの言葉に頷き、地面に転移陣を展開して姿を消した。もちろん出口はアランデル王城の転移陣であろう。
「僕は何を?」
「リヒト様には彼の監視を。契約魔法がかかっているので、1週間は何もできないと思いますが、念のため。」
「命に変えても、大人しくさせておくよ。」
「…ちゃんと生きて最後まで監視してくださいね。」
アランデルの王族は自分の命を軽視しすぎだと思うが、まあ人の事も言えないなとエレノアは少し反省する。
「さて、貴方のことはなんと呼べば?」
エレノアが子ども魔王に話しかける。
「はぁ…アダムだ。」
契約魔法がかかっているせいか、先ほどまで感じていた殺気や威圧感はない。素直に答える姿を、少しだけ可愛いと思えるほどに。
「ハァアダムさんですね。」
「違う。」「違うと思うよ。」
ふたりから同時にツッコミを入れられる。
「ふふ…2人は気が合いそうですね。1週間仲良くして下さい、アダム。」
「…。」
無言でそっぽを向いているが、耳の辺りが赤い気がする。照れているのかもしれない、可愛い。エレノアは魔道具のペンダントで転移陣を展開する。ちなみにイザークのように王族であれば個人の私有地以外は国中どこでも転移陣を展開できるが、エレノアのように一貴族となるとそういう訳にはいかない。出口の固定された魔道具に頼るしかないのだ。
「さあさあ、ここにいられても邪魔なだけなので、1週間の滞在場所を提供しますね。」
そう言うと、3人まとめて移動陣に吸い込まれた。




