45.エレノアの後には道ができる
「私たちはここからスタートね。」
山の麓で3人はそれぞれが率いるチームの馬車に乗り換え、3地点に分かれてスタンバイを行った。
「そろそろ時間です。」
ブルーノがエレノアに声をかける。
「了解。傾斜を真っ直ぐ駆け上がって、最短で山頂を目指します。」
山道を通っていくと時間がかかる上に、出会う魔獣も多くなる。山頂に着くまでに体力を消耗してしまうため、3チームとも身体強化をかけて山の傾斜に垂直の向きで進む予定である。
「「「「「【身体強化】」」」」」
「【身体強化】【光の壁】」
チーム全員が【身体強化】、エレノアは【光の壁】も同時に発動する。
「全員、後ろから着いてきてください。」
トンっと軽い調子で走り始めたエレノアであるが、そのスピードは凄まじい。
「ちょ、お待ちください。エレノア様は後ろに……。」
ブルーノたちも慌てて追いかけるが、一向に追いつく事はできない。そして、すぐにエレノアが先頭を走る意味を思い知ることになる。
「……エレノア様の後に道が出来ていく。」
【光の壁】を発動したエレノアは、【身体強化】により猛スピードで山を駆け上がりながら、目の前の木々や魔獣を吹き飛ばし進んでいる。
「すごいし、もはや怖い。」
「山頂まで剣を抜く必要もなさそうだ。」
「我々がやれば一瞬で魔力が尽きるが、エレノア様にとってはなんてことないのだろうな。」
このスピードで山を駆け上がっているだけでもかなりすごいことであるし、まして普通に会話できる時点で超人レベルであるが、エレノアはレベルが違いすぎた。もうすぐ山頂というところでエレノアが急ブレーキをかける。
「止まって。」
「「「「「はい!」」」」」
ブルーノたちは何とかエレノアにぶつからずに止まる。エレノアは身体強化のみを解き、歩き始める。
「私の後ろに。こっちだわ。」
全員、すでに何の抵抗もなくエレノアの後ろをついていく。ここが安全だと本能的に感じたのかもしれない。
「ここね。」
すぐに魔獣が湧き出ている洞窟に辿り着く。
『やっぱり君が1番最初に辿り着いたね。待ってたよ。』
びくりとエレノアの身体が揺れ、頭を抱える。
「うっ……直接頭に……。」
「エレノア様、大丈夫ですか!?」
「どうされましたか!?」
その声はエレノアにしか聞こえていないようだ。
『さて、君を殺せばゆっくり眠れるかな?後の奴らは相手にはならなさそうだし……。』
その声にぞくりと寒気が走り、肌が粟立つ。
「……っ。退避!逃げて!出来るだけ遠くに!」
「「「「「はっ!」」」」」
エレノアの異常な様子に驚きつつも言われた通りその場を離れた。エレノアのその白い額に汗が滲む。そして大きく息を吐くと、両手を前に突き出した。
「【催眠】」
その場にひとり残ったエレノアは、飛び出てくる魔獣に催眠をかけ続ける。洞窟から飛び出した瞬間に眠り、どさりと倒れる魔獣の山が出来上がった。ふと、魔獣の噴出が止まった。
「来る!」
ズズズ……と音が鳴りそうなほど嫌な魔力が洞窟の入り口から出てくる。
「あれ?他の奴らは逃げちゃったの?まあ、弱すぎて不眠のストレス発散にもならないか。」
しかし、出てきたのは絵本の魔王とは程遠い見た目をした、5歳くらいの子どものような姿をした何かだった。




