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【完結済】守ってあげたい蠱惑姫と思いきや、1人で何でも出来る孤独姫でした〜捕まえておけないので自由にさせておきます〜  作者: 朔島 涼
三章.サルヴァ山の元凶

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44.馬車内会議

今回の登山メンバーは正確には18人であった。リヒト、イザーク、エレノアの他に魔法と剣の両方がエキスパートレベルの騎士を15名揃えていた。


「では、騎士同士は面識があり連携も行えるのですね。」

「ああ、前回の調査登山の失敗直後から今日までしっかりと準備を整えてくれている。」

麓へ向かう馬車の中で、作戦の確認を行なっていた。エレノア、リヒト、イザークが3人で一台、騎士たちは5名ずつに分かれて合計4台の馬車で向かっている。


「それは良かったです。いくら少数精鋭とは言え、18人もいればある程度連携が取れないと危険だと思っていたので。」

「僕とイザーク、エレノアを指揮官として3チームに分かれ、騎士を5名ずつ預けたい。」

「私に指揮官が務まるかは分かりませんが5人の方の命は必ず保証します。その上で自由に動いていただけるのでしたら、その作戦に従います。」

「ありがとう。エレノアのチームには15人の中でもリーダーのブルーノを入れている。彼がいれば、騎士は放っておいても大丈夫だ。」

「助かります。」

エレノアは微笑み、こくりと頷く。


「3箇所から同時に登山を始め、元凶発見時もしくは緊急事態には空に向かって魔法を打ち上げる。チーム内でどうにかできる場合は別行動を継続する。」

「山の中で戦闘では集団が大きすぎると動きずらい事、また3箇所から登る事で暴れ野獣の居住区への侵入を最小限に抑えられる。それに…」

「万が一にも元凶の逃亡を抑えられる、ってところですか。どれも個々の能力が高い事で成り立つ考えですが、おふたりのお認めになった騎士たちですのでそこは信頼します。」

「…エレノアは騎士の同行は反対?」

隣に座るリヒトがエレノアの顔を覗き込む。


「いえ、登頂まではいてくれた方が助かると思います。しかし、魔王を前に……。」

「魔王?」

「あ……。」

「あ?」

「え?」

「間違えました、元凶を前に……。」

「いやいや、エレノア。今、魔王とはっきり言ったよな。」

「言ったね。」

「……間違えました。」

「間違えないよね。」

シルヴィアは目を閉じてしばらく黙り込み、それからゆっくりと目をあけて話し始めた。


「……あれは3ヶ月ほど前のことです。空の色が真っ赤で不気味な夕暮れの日でした。」

「……。」

リヒトもイザークも黙って耳を傾ける。


「ちょうどサルヴァ山に1番近いシンデレラカフェで仕事をしていたのですが、南東の方から隕石のようなものが落ちてきたんです。」

「隕石?」

「はい。最初は何か落ちたな……と思ってたくらいだったのですが、ひと月ほどしてサルヴァ山を覆う空気がおかしくなり始め、ふた月たった頃から凶暴化した魔獣が現れるようになりました。」

「それで何で魔王?」

「私の仮説です。弱体化した魔王が別の場所からサルヴァ山に逃げ込み、時間が経つにつれて力を回復して悪さをし始めたのではないかと。」

「な、なるほど?」

リヒトとイザークは全く同じ角度で首を傾ける。


「隕石や物体が原因であれば、落ちた瞬間から異変が起きていたはず。元凶が生き物であるから、時間差で異変が起きていると思いました。そして魔王と言ったのは、それが知能のある生き物である事と、ある程度強い魔獣を多数同時に操れる強力な力を持っている事。あとは私の勘です。」

「魔王とは……正直、思いつきもしなかった。」


この世界では、魔王などという生き物は存在しない。物語の中でだけ存在する架空の生き物だ。思いつかなくて当然なのだが、エレノアははっきりと覚えいてる。大っ嫌いな絵本の中に出てくる悪者の魔王の姿を。


「魔獣を興奮させるような物体があったり、気体が発生していると言うのが1番対処が楽だ。原因を取り除けばいいだけだからな。その次は知能がほぼなく無意識に他の魔獣を興奮させたり怯えさせたりする高位魔獣。魔王などという生き物が本当に実在するならば、その対処の仕方も未知数だ。」

「他に思いつく元凶は何かしら?」

エレノアは話題を変えるために、他の可能性を尋ねる。


「他には、異空間から魔獣が飛び出して来ている、とかかな。我々の力が及ばない現象であればどうしようも…」

「異空間の出口があるという事であれば、それを塞ぐのは現時点ではなかなか難しいですが、出口にトラップを仕掛けて半永久的に捕獲し続ければ対策を考える時間稼ぎにはなるかと。」

「そうか……。」

「いずれにせよ、一刻も早く対応しなければいけませんね。」

そうは言ったものの、エレノアは理解していた。この先に待っているのは間違いなく魔王であると。


「視線を感じるのよ、先ほどからずっと。私たちを監視しているわ。」

エレノアは窓に向かって、ふたりには聞こえない小さな声で呟いた。

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