37.レオナルドのアランデル一周
「やあ、エリック。こちらも繁盛しているね。」
「いらっしゃいませ、レオ様。全店舗制覇おめでとうございます。」
完全な棒読みでエリック姿のエレノアがレオナルドを出迎える。レオナルドはリヒトの脅しにも屈せず、月1程度のペースでエレノアのカフェ巡りを続け、ついに4店舗制覇したのだ。ちなみに、レオナルド様と呼べば正体がバレるかもしれないからと、ふたつ目の訪問先であるマーメイドカフェからは『レオ様』と呼ぶよう言われている。
「こちらのお席にどうぞ。」
「ありがとう。」
レオナルドは名物のパンプキンタルトとコーヒーを頼み、ついでにエレノアもご所望だったため休憩も兼ねて同席している。そうしないと一生帰らないため、もう抵抗は諦めた。
「本当にすごいね!どこの店舗のスイーツも美味しいし、紅茶もコーヒーも最高だし、建物もコンセプトや内装も素晴らしいよ。」
軽薄そうな時のレオナルドは苦手であるが、こうやって手放して褒めてくれるところはちょっと嬉しい。
「ありがとうございます!レオ様は特に気に入った店舗はありましたか?」
「そうだな、それぞれの良さがあってひとつには絞るのは難しいけど…。でも、最初にお邪魔したアリスカフェは特に気合が入っていたね。」
「流石、レオ様。お気づきでしたか!」
「他の店舗はひとつの食材のアレンジしたもの、例えばここ、北のシンデレラカフェではカボチャのスイーツ。白雪姫カフェではりんごのスイーツ。マーメイドカフェに至ってはドーナツのトッピング違い。でも、アリスカフェはまずケーキの形を考えて、それに合うケーキを考えている。食材を絞ったり、原価を抑えることは重視していないよね。」
褒められたレオナルドは得意げに指摘する。
「そうですね。食材を絞れば原価を抑えられる…と言うよりも、私が育てる食材が減るから、と言うのが本音ですね。果物や作物は私が育てているので。価格を抑えられると言う意味では大正解です。もともと、いろんな身分の方に来ていただきたかったので、平民の方でも比較的入りやすい価格設定にしたかったので。」
「な、なるほど。」
レオナルドはエレノアの勢いに少し圧倒される。
「アリスカフェに気合が入っているのには色々理由があったのですが、一つ目は私がプロデュースする最後のカフェだと言うこと。二つ目は、我がロレーヌ侯爵家の領地内であること。三つ目はこの領地が宝石の出る鉱山を有していて、宝飾品関連の仕事をしている裕福な家が多いこと。四つ目は、その宝飾品目当ての国内の富裕層の観光客の集客が見込めること。五つ目は友好国である隣国も裕福であり、そこからの旅人も多いこと。まあ、それらの要素により、価格設定を高めにしても集客が見込める。さらにゆうなれば、そう言う客層を相手にするのであれば、価格が高い方が価値が上がる。と言うわけで、価格は考えずに商品開発とプランニングした結果、他とは少し違った雰囲気の店舗になりました。」
「結果、大成功だね。」
「はい、おかげさまで!」
満遍の笑みでお店の事を話すエレノアを見て、レオナルドはくしゃりと笑う。
「ふふ、お店のことを話す時のエレノア、すごく楽しそうだね。目がキラキラしている。」
「すみません、喋りすぎましたね。レオ様がよく見てくれていたので、つい嬉しくて。」
エレノアは顔を赤らめる。
「本当に可愛いね。やっぱりうちにお嫁に…」
「それはちょっと無理ですね。」
「断るの早くない?酷いな。」
レオナルドは眉を下げて笑った。




