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【完結済】守ってあげたい蠱惑姫と思いきや、1人で何でも出来る孤独姫でした〜捕まえておけないので自由にさせておきます〜  作者: 朔島 涼
二章.ヘレンツェの王太子

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29.クラゲの道案内

その島の砂浜に一隻の大型船が打ち上がっていた。そこまで大きな損傷はないように見えるが、意図的に停泊しているようにはとても見えない状態だ。何らかの理由で遭難し、ここに漂着したのだろう。


「まだ新しい船だ。」

「ヘレンツェの紋章が入ってます。」


クラゲの方を見ると、その船を見ているようだ。


「まさか、これを伝えるためにヘレンツェの港に?」

「生存者がいるかもしれない。」


リヒトとエレノアは傾いた船の甲板に降り、船内を捜索する。


「…誰もいませんね。」

「ああ。負傷者や、亡くなっている方もいなさそうだ。」

「乗っていた方々は無事でしょうか?」

「島に上陸して、何とか生き延びているかもしれない。」


リヒトとエレノアは数秒黙って顔を見合わせる。


「…エレノアは援助を要請しにいったん戻ってくれ。捜索に時間がかかるかもしれない。単独ならエレノアの方が早いからね。」

「分かりました。」

「僕は乗客・乗組員を見つけ次第、1箇所に集まってもらっておく。負傷者の回復ぐらいなら私1人でも問題ない。」

「食料と水の確保ができていれば、全員生存の可能性もありますね。無人島のようですが、大きめの島ですし、食べられる物も何かしら見つけられそうです。」

「ああ、そうだといいね。」

「【上昇気流】」


エレノアが飛び上がる。


「気をつけて。」

「リヒト様も。」


言い終えるともうエレノアの姿は見えなくなった。


「さすが…速いな。」


リヒトは苦笑いを浮かべる。


「僕も捜索を始めよう。生き延びてくれてるといいな。そして願わくば、空腹と疲れで錯乱していないといいな…。」


リヒトは甲板から砂浜に飛びおり、歩き始めた。木々が生い茂り、空中からの捜索が難しかったためだ。


巨大クラゲは飛び去るエレノアと、島に残ったリヒトを交互に見ていたが、島に残ることにしたようだ。魔物追い払い作戦はこれにて終了。そして、ヘレンツェの大型船遭難事件が新たに発生してしまったのであった。





エレノアは来た道を1時間余りで引き返し、待機していたヘレンツェの騎士に話をしてレオナルドに繋いでもらった。


「ヘレンツェの紋章が入った大型船?!船の特徴は?いや、とにかく救援物資を積んでその島に向かおう。」

「先ほどのクラゲの速度で3時間かかります。最低限だけ私が先に運んでいきます。空に花火を打ち上げて固定していくので、それを目印に追いかけてください。」

「分かりました。」


すぐにエレノアが運ぶ用の救援物資、100人分の水と食料が用意された。傷などはリヒトとエレノアが回復できるため、救急セットなどは必要ない。


「では、お先に。」

「すぐに追いかけます。」

「【上昇気流】」


エレノアは預かった救援物資の入った木箱2つにも魔法を当てて一緒に飛び上がった。エレノアの単純な腕力では到底持ち上がらないが、魔法であれば余裕である。そしてまた、無人島へと来た道を戻る。


「【花火】【固定】」


ヘレンツェの港に戻る時にも花火を固定して来たが、暗くなっても見やすいよう、明るさを保てるよう、さらに間隔を狭めて花火を打ち上げていった。


「どうか、皆んなが無事でいますように。リヒト様も。」


エレノアは祈りながら空を全力で駆けていった。

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