33 女子会
タコパが終わりすっかりみんなと打ち解けたレナーラことレナは、その後も宮本家を訪れることとなった。
中でも梓とは妙に馬が合うようで、長女は気さくに異邦人を自分の部屋に誘った。宇宙人の少女と話す機会なんて滅多になく、同時代の女の子同士で話したいことも沢山あったのだ。
「ねえレナちゃん、こっち来て。私の部屋だよ」
「わぁ、素敵なお部屋ですね、地球の女の子の部屋って初めて見ました」
「そう? ありがとう。ねえ、今更だけどレナちゃんって呼んでもいい?」
「はい、もちろんです!」
「私のこともあずちゃんとか適当に呼んでね! この部屋はお兄ちゃんが魔法的なアレをしてくれてるから音は気にしなくて大丈夫だよ」
「おお、さすが雄太さん」
二人は梓のベッドに腰掛け、お菓子を食べながらおしゃべりを始めた。 最初はお互いの境遇から始まり学校の話や趣味の話で盛り上がっていたが、なんの気なしに話題は恋愛に移っていた。
「レナちゃんは、故郷に好きな人とかいるの?」
「実は……私、箱入り娘なんです。連邦の祭祀部では厳しい戒律がありまして」
「えー、そうなんだ。じゃあずっと一人でいるの?」
「いえまさか、でも任期明けまでは彼氏とかは作れませんね、興味はあるんですけど」
「任期明けっていつまでなの?」
「ん~っと、あと百年くらいでしょうか」
「げぇ! それもうあたし死んでるじゃん!」
「あ、あはは……私達は長寿の種族なのでそれでもまだ若手の内ですよ」
「えーそうなんだ。でもそうか、いいことのお嬢様だから変な男が近寄らないようにってのもあるのかも」
「あぁそうですね、お勤め先の神殿は女性ばかりでしたし周囲の目は厳しいものがありましたので、今のこの環境が気楽と言えば気楽で楽しいですね」
「でもお付きの人とか連れてこなくてよかったの?」
「最初はその予定だったんですけど、これもこの子の修行の内だからと言ってお婆様が許して下さらなかったんです」
「そのお婆様って、えらい人?」
「はい、歴代でも屈指の大巫女で連邦祭祀部のトップよりも発言力がありますね」
「うへぇそりゃ無理だぁ。でもいいなー、ちょっとあこがれる。お付きの人がいてお姫様みたいな生活」
「いやいやそんな良いものじゃないですよ、同じことが続く毎日で平和だけど退屈で息がつまると思います。でもそんなものだと諦めていたんですけどね、人生わからないものですね……」
「そうだねー、私自身はなにも変わらないけど、お兄ちゃんが神様ばりにパワーアップして娘連れて帰って来るんだからさ、わかるわけないよね、そんなの」
「ですよねー、うふふふ。でもそう言う梓さんは良い人いないんですか?」
「あたし? あー実はね、昔大学通ってた頃にストーカー被害に遭っちゃってさ、それで怖くなっちゃってからはそんな人いないよ、今の今まで引きこもってたしね。お父さんお母さんにはお兄ちゃんがいなくなったショックでーとか嘘ついてたけれど、本当は違うんだ。最近は徐々に外に出られるようになって来たから、いつかちゃんと二人に謝りたいな」
「そうだったんですね、梓さん、辛い経験をされたのですね。でも、前を向いて頑張っていて素晴らしいです!」
「ありがとうレナちゃん、そうだ! 私達、いつか新宿ダンジョン行ってみない?」
「え? 本当ですか? 平気なんですか?」
「うん! この間ポロっとお兄ちゃんに言ってみたら装備を貸してくれると言ってたし、お兄ちゃん曰くレナちゃんと一緒なら大丈夫だって言ってたよ。なんか加護的なのが凄いらしいね! あっでも無理強いは良くないとも言ってたから、もしその気があるならってことなんだけど」
「私.……行ってみたいです! 実は故郷でもダンジョンは穢れであるとされて潜らせてはくれなかったんです。それなのに訓練ばかり繰り返す日々で、疑問に思ってました。私自身、どこまで私の力が通用するのか、試してみたいです!」
レナは珍しく興奮気味に答えた。梓も拳を固く握って応える。
「あたしももっと強くなって自立した大人になりたいんだ。だってクロエちゃんが毎日頑張ってるのにさ、一人だけ家でぐずぐずなんてしてられないよ!」
「そうですね!」
ちょうどそこへ梓のスマホに雄太から三時のおやつの案内が届いたのでいそいそとリビングへ向かうと、そこにはメックのハンバーガーやポテト、シェイクが座卓の上に所狭しと並べられていた。
「頼まれたからこうしたけれど、本当にこれで良かったんか?」
「平気平気! むしろレナちゃんはファーストフード未体験らしいからちょうどいいかなって!」
「いやお前が食べたかっただけだろ」
「そうとも言う~」
「わー! いっぱい種類がありますね」
「レナちゃん、このお魚のやつ美味しいよ?」
「ありがとうクロエちゃん!」
「ほらナゲットもあるし、みんなで食べようよ、お兄ちゃんも」
「夜には母さんが焼き肉してくれるから限界まで食うなよ。余ったのはずっと保存しておけるんだから」
「わかってるって! それよりさぁ、ちょっとダンジョンの相談に乗ってよ」
「おぉなんだ、二人で行くことにしたのか」
「そうなの! せっかくだから一番いい装備を頂戴よ」
「そうだな、と言ってもあげられるのはお守りなんだがな」
「えー? 無敵の剣とか貸してほしいんだけど」
「お前な、前にも言ったけど、強すぎる武器は自分や仲間を傷つける可能性があるからダメなんだって。それに特殊な装備をしてたら目立つだろ、悪いこと言わないから新宿ダンジョン公認のショップに行って中級者くらいの装備を一式見繕ってもらえ」
「そのお金は~?」
「まぁ貸してやるけど」
「無利子! 無担保のある時払い! あざーす!」
「調子のいい奴め」
「ねぇねぇあずちゃん、レナちゃんとダンジョン行くの?」
「そうだよ、でも最初は低い階層しか行かないから平気だよ」
「えー? ほんとかなぁ」
盛り上がる二人とは対照的に、どこか不安に思うクロエだった。




