表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
召喚された  作者:
3/5

捕縛された

 捕縛された、今は集落の中心に配置された木製の檻の中である。


 そのタヌキの集落はあんのじょうタヌキだらけ、ここはタヌキの楽園だろうか、原始的ではあるが集落の周りには堀のような物があり、柵で囲ってあり、連れてこられる間に井戸のような物もあった、畑で白菜のような食物を育てており、タヌキ達の生活環境には一定の歴史を感じられる、木の実だけを食ってて欲しかったが兎肉を干してあったから雑食なのだろう、今夜の献立に自分が乗るのは勘弁して欲しいところである。


 子タヌキを探索隊に引き合わせた結果、鉄製らしき槍を四方から向けられ御用となった、多勢に無勢であり逃げれば誤解を受けるかも知れないし、子タヌキを連れてきた手前、最後まで見届けるのも良いかと判断し大人しく連れられていく事にした。


 子タヌキは行中申し訳なさそうな顔をしてはいたのだが、集落に着くと親タヌキらしき番に連れられていったきりだ。


 この集落に連れられてきてからも特に身の危険は感じない、よく見ればタヌキの顔も感情表現豊かであり、人に似た愛嬌があって好ましく感じる、夕餉の準備に忙しいのか、檻の前に訪れるタヌキは少ないが、いまだ敵意を見せる者はいない。


 夕餉には木をくり抜いて作ったお椀に入った薄いスープと木製の皿に豆を煮た物が乗せられていた、ここでは肉は貴重なのかも知れない。世話を命じられたのであろうタヌキが檻の外からしずしずと手渡してくれた。手振り身振りでトイレはどうするのか尋ねたら檻の隅で大丈夫といった返しをにこやかに返してくれた、全然大丈夫じゃないのだが。


 この世界の夜は早い、夕餉が済み日が沈めばもう就寝だ、集落の哨戒役と思わしきタヌキがいるがじっと夜の森の向こう側を見つめているだけだ、たいまつやかがり火など使っていない所からタヌキ獣人には夜目でもあるのだろうかと推測しながらは就寝し一夜檻の中で過ごした。

 

 夜は早いが朝も早い、日の出の二刻くらい前から周囲が起きだした気配を感じてこちらも起床する、熟睡中にいつのまにやら毛皮の毛布を掛けてもらっていた、夜はさすがに冷え込んだのだろう、世話役のタヌキの顔を思い出し、あとで礼を言おうと思ったが顔の区別がつきそうになかったので朝の挨拶にきたタヌキ全員に礼を言った。朝食は水の入った皿と干し肉の欠片だった、干し肉は固く味もこの上なく不味い、この集落の食料事情はよくなさそうだ。


 朝食を片付けるとこの集落の長老らしき高齢のタヌキ達と引き合わされた、何を言ってるのかわからんので困る。その後檻からは出されたので無罪放免自由の身らしい、所持していた物を返してもらい、今夜からの寝床に案内される、隙間風もなく寝床の毛皮も真新しい、上等な寝床と言えよう。


 しばらくすると迷子の子タヌキの親の番と思われるタヌキが挨拶とお礼を述べてきた、子タヌキを今日からの世話役として紹介してきたので適当に礼を述べておく、おかまいなくと言ったニュアンス、ちゃんと伝わったのだろうか。


 そうこうしてる間に日は昇り、若いタヌキ達は狩りの時間とばかりに慌ただしく準備を始める、ふむ、落ち着いて見ると若いオスの体長は平均して150センチくらいだろうか、メスはオスより少し小柄であるようだ、オスは狩りに、メスは薬草や木の実の採集に出かけるらしくこちらとしては同行を申し出る、昨日俺に槍を向けてきたタヌキ達と狩りに行くのは変な気持ちもするが食料事情は改善してほしいので仕方ない。やっぱり肉が食べたいのだ。


 同行を了承されて二刻くらい狩りをした成果は俺が兎三羽、他のタヌキは坊主である、もう一度言おう、坊主である。気配で獲物を見つけ、投げれば当たる技術を持つ俺からしてみれば当たり前の結果なのだが、タヌキ達の俺を見る目がみるみる変わってきているのが気持ちいい、もっと尊敬していいのよ。


 だがたかが兎程度では集落の腹は膨れない、狙うのはイノシシ、もしくはシカくらいの中型の獲物がいい、イノシシは危険なのでシカがいい。そうシカにしよう。


 気配を探り、シカを探す、シカなら手槍一本あれば危なげなく狩れるはずだ、手槍といっても木を削り先を尖らせた投げ槍である、原始的な方法だが狩りには最適だし、投げるのは得意だ、俺は生まれながらにしてハンターであり、狩人である、一人では解体から運搬はできない、だがしかし、今なら俺を羨望の眼差しで見つめるタヌキ達がいる、待っていろよ、お前たちの勇者が仕留めてやるからな!


 更に二刻後、無事にシカを仕留めた俺たちはタヌキ達の集落へと凱旋を果たした、タヌキ達がてきぱきと解体を済まし干し肉作りの用意を始めたようだ、適度な大きさに切り分け、つけ汁のような液体を刷毛で塗り込み紐で吊るして乾燥させている、味は悪いが保存にはいいのだろう。


 手持無沙汰になったので集落を散策する、少し気になったのが鉄の存在だ、原始的な集落なのに鉄がある、肉の解体に使っていた鉄のナイフだ、俺も鉄の短剣をオーリから譲り受けたがこの世界では鉄製技術が普及していると思ってもよいのか、貨幣はどうなっているのだろう、召喚されてまだ数日、知らない事ばかりだが仕方がない、ここで落ち着いて言葉を習得できたら人里に向かおう、そう思う。






評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ