『over workers』
「さて…そろそろ『over time』が終わるわね。私と敷島の能力はまた今度の機会にしましょうか」
『over time』中には『over worker』以外の全てのものの動きが止まるため、当然ながら時計も動いてはいない。きっかり一時間でこの時間は終わるはずなのだが、終わるタイミングを計るのが不慣れな者にとっては難しい。
流石に白亜くらいになると体感で終わりの時間が分かるらしく、もう既に始まってから一時間弱が経ったということを告げる。
そして、『over time』は午前と午後に必ず一回ずつやってくるらしい。それは裏を返せば、一度来てしまえばその区切りの間には確実に来ないということにもなる。
「これでやっと寝れるよ~。もうそろそろ限界だったからねぇ…」
「姫ちゃん、また寝るのかにゃ…。何日寝てたと思ってるにゃ…」
「諦めろ桃乃。姫さんはそういうキャラなんだ」
「ちゃんと午後までには起きなさいよ、姫。貴方起こしても起きないんだから…」
姫は活動時間が相当短いようで、数時間前に長い眠りから起きたにも関わらず既に寝惚け眼になっている。とはいえ他のメンバーもそれなりに眠いようで欠伸をしている者も多い。
「…ハル。今日は一緒に寝る」
「いや、寝ないだろ普通に…。個々の部屋あるんだから…」
気付けば春人の隣には目を擦りながら春人の服の袖を引っ張る雨が。口にした言葉は春人にはとんでもないものだったようだが。
「ハルは新しい場所にまだ慣れきっていない。きっと一人で寝るのは寂しいはず」
「…まぁ、それは確かにそうだけど…」
新しい場所にまだ完全には慣れておらず、一人になると不安になる可能性があるのは図星だった。だがしかし、かといって年頃の男と女が一緒に寝るのはもっとまずい。
「だ、ダメよ雨! 男と女が一緒に寝るなんて…そんなのちょっとは、破廉恥過ぎるわ!!」
何故か春人よりも恥ずかしがって、顔が真っ赤になっている白亜は、力強く雨の提案を否定する。その隣では敷島が爆笑し、飛鳥は優しげな微笑を浮かべていた。
「お、お嬢…別に寝るって、そういうことじゃ、ないと思うぞ…ははは!!」
「やはりお嬢様はまだまだ子供らしいですね。非常にませていらっしゃって可愛らしい」
「え、え、どういうことよ…?」
本気で困惑する白亜を見て、首を傾げる雨。どうやら白亜が言っていた破廉恥という言葉の意味が分かっていないし、白亜が顔を赤くしている理由も分かっていないようだ。
「?? 別に、ただ不安にならないように添い寝するだけ」
「春人君、許してやってくれ。雨に一切の他意は存在しない」
「いや、まぁ…何となく分かるけどさ…」
雨は別に春人だからこう言っている訳ではなく、ただただ純粋な心配から言っているだけなのだろう。少々性的な感覚がずれているだけの話であって。
「男と女がダメなら、私と寝る~? 私は別に構わないけど~」
「ややこしくなるから姫は黙ってて…。取り敢えず今日はもう解散しましょう…。もう『over time』も終わるから」
その白亜の言葉の直後、またしても世界は劇的な変化を遂げる。仕事を止めていた時計の針はまた動き出し、壊れた物は元の形へと戻り、グロテスクな死体は跡形もなくこの世界から姿を消す。
死んだ『over worker』は消えて、他の全ては元通りになる。これがこの世界の、『over worker』の基本的なルール。
それについてはもう春人は驚きの表情を浮かべない。というよりも、一々驚いてたらもうキリがない上に眠気でそんな考えにも至らなかった。
「それじゃ、各自部屋に戻っていいわよ。…ふわぁ…私ももう眠いわ…。皆、おやすみなさい…」
『over time』が終わった事を確認すると、白亜は解散を告げてすぐさまベッドへと潜り込む。そこにはカリスマ性の欠片もなかったことは言うまでもない。
白亜が寝てしまう為、いつまでもこの部屋にいる訳にもいかないメンバーはそれぞれ部屋から出て自分の部屋へと戻る。
「ハルはこっち」
「お、おい、ちょっと待」
そして有無を言わせず半ば強引に雨の部屋へと引きずり込まれた春人。それを見て溜め息を吐いたり、笑ったりする他のメンバー。
きっと、朝には眠れなくて疲れきった彼の姿が見られることだろう。
To be continued…




