1-37
「…また随分と派手にやったわね、二人とも…」
扉の方から聞こえてきた声は、この部屋の主のもの。後ろからは地下室へと入っていたメンバー全員が着いてきている。
白亜は鮮血によって赤く染められている自分の部屋の壁と、未だに血が流れ続けている2つの死体を見て苦虫を噛み潰したような顔をする。
「も、申し訳ありませんお嬢様。久しぶりだったのでつい…」
「別に構わないわ。ちゃんと殺してあるみたいだし」
とはいえ、拠点に侵入してきた敵をきっちりと排除したことについては白亜は満足気だ。
「いやぁ、相変わらず惨い殺し方するねぇ」
首の無い死体を見て姫はのんびりと呟く。それは嫌悪感からくるものではなく、むしろいつも通りで安心したといったニュアンスに聞こえる。
他のメンバーを見ても誰もこの光景に対して疑問を持ってはいない。雨に至っては、心臓の無い死体をじっくりと眺めている。
「…早く慣れないと…」
それらを見て春人は、まだ自分が完璧にここに染まってはいないことに気付く。この雰囲気を感じる限り、これに慣れないと間違いなくやっていけない。
「だけれど…新入りに見せるには少しだけ過激過ぎたんじゃないの、敷島」
「確かにちょっとやり過ぎたな。だが、これ以上は滅多に無いからこれに慣れちゃえば大丈夫だろ」
「それもそうね。『over time』における対人戦闘で一番重要なものを説明するには都合もいいし」
『overtime』における、相手を殺す上で最も重要なこと。それはこの二人が作り上げた死体が物語っている。
「ハル。前提として、『over time』中に傷付いた物や人は『over time』が終われば全て元通りになるの。勿論、死は例外だけれども」
「…ということは、確実に殺さなければならない…?」
「…貴方やっぱり頭が良いわね。えぇ、そうよ。死んでなければ『over time』が終われば瀕死でも全てが元に戻る。だから、万が一の可能性も消して完膚なきまでに殺さないといけないの」
終われば『死』以外が元通りになるということであれば、確実に息の根を止めなければならない。致命傷を与えたとしても、確実に死んでいるという確証が必要となる。
だからこそのあの二人の殺し方が最重要。人間は首が取れれば確実に死ぬし、心臓が無ければ生きていくことは出来ない。万が一の可能性を消す為の、確実な方法。
「まぁ、二人のは特に念には念を入れてるから。大体の人間は刺せば死ぬし、斬られれば死ぬわ。でも、やっぱり万が一があってはいけないのよ」
「…なるほど」
「だから春人。殺すことを躊躇するな。もし躊躇すれば…その時死ぬのはお前だからな」
こちらが確実に殺そうとしているのだから、逆もまた同じであるのは言うまでもない。事実あの時、春人を殺そうとした男は正確に首を狙ってきたのだから。
殺さなければ殺される。これが、この世界での『over worker』間での常識…。
「…肝に命じておきます」
言葉で説明された時よりも、本気での殺し合いを見た今な方がスッと理解出来た。いずれは、自分もああするか、ああなるかの二択を迫られるのだから。




