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over time  作者: 森坂 輝
『over workers』
33/40

1-32

「失敗すんなよー桃乃」


「レシウスうるさいにゃー! するわけないにゃ!!」


はりきって能力を披露しようとする桃乃を茶化すレシウス。この二人は結構な頻度で言い争いをしている。大体はレシウスが桃乃を茶化して遊んでいるようだが。


「まぁ、桃乃は前科あるものね…。発動しなかったり、とんでもないことしでかしたり…」


「ぐ、リーダーまで…。私だってやれば出来る娘だにゃー!!」


前の3人はすんなり出来ていたが、どうやら桃乃に限っては失敗する可能性も大いに有り得るらしい。


「でもそれもちょっと仕方ないのよ。桃乃のは変化と違って少しやややこしい能力だから」


春人の心配そうな顔に気付いたのか白亜がフォローを入れる。桃乃の能力は変化ではないようだが、一体どういう系統の能力なのか。


「よし、しかと目に焼き付けるにゃー!」


先程までの周りの冷やかしなどどこ吹く風の桃乃は、自信たっぷりに自分へと視線を集める。そして不意に歩き出し、少し離れたところにあるクマの人形に、前の3人とは違って『左手』で触れて元の場所に戻ってくる。


まだ何か起きた訳ではないので能力は発動していないのだろう。そうして元の場所に戻ってきた桃乃は今度は『右手』で自分自身に触れる。


「いくよー! 能力発動!!」


その間の抜けるような掛け声の直後、桃乃はその場から忽然と姿を消した。


「…え、消えた!?」


「消えた訳じゃないわ。よく見なさい」


いや、確かにその場からはいなくなってはいるが当然消えた訳ではない。よくよく見ればさっきまで桃乃がいたその場所には、桃乃が『左手』で触れたクマの人形が。


一瞬、桃乃がクマの人形に変化した、と考えた春人だったがすぐにその思考を打ち消す。大事な前置きを忘れてはいけない。これは『変化』の能力ではないのだから。


ということは、残された選択肢は一つしかない。春人は、目の前にあるクマの人形が『元々あった場所』に目を向ける。


「やっほ~。桃乃さんはここだにゃー!」


そこには、予想通りさっきまで目の前にいた人物が。あの時自己紹介をした時と同じポーズをしているが、それに関してはスルーでいいだろう。


「はい、桃乃。説明して」


「え、反応薄…。まぁ、いいにゃ…。私の能力は『右手で触れたものと左手で触れたものの位置を入れ換える』だにゃ。これは変化の能力と違って触れるものは人間でも構わないのが大きな特徴にゃ!」


桃乃の能力は簡単に言えば『置換』。何かと何かを置き換える能力だと言える。なんと物と物、物と人、人と人の置き換えが全て可能であるらしい。そして、新たに分かったのは『変化』の能力は人間には使えないということだ。これは予想の範疇ではあったが。


「これが『over works』の二つ目、『移動』の能力よ。触れた何かを動かす、入れ換えるなどが出来る力。変化に比べると種類も少ないし、使うのは難しいけど上手く使えば強力なものになるわ」


「最初は使いこなすのに苦労したにゃ~…」


「自分と物を入れ換えようとして服だけ入れ替わった時もあったな。あれは本当に面白かった…」


「なっ!? レシウス、あれは忘れろと言ったにゃー!!」


なるほど、確かに触れたものを入れ換える訳だから間違って服に触れてしまうと大惨事になる。桃乃はその失敗を既にしているらしい。


「この能力…面白いですね」


しかし、この能力を見た春人は今までで一番興味深そうな反応をする。どうやら勉強のし過ぎで、理屈と理論で物事を考える春人には、頭を使うこの能力の方が肌に合うと感じたようだ。

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