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「大体理解出来たかしら、ハル」
「理解出来ないとダメっぽいってことは分かりました…」
尚も燃え続ける鉄だったものから目を離し、白亜の方へと目を向けた春人の声色は少々弱い。
こんなことで一々驚いて思考が飛んでいたらこの先どうしようもないのは明白だろう。どんな現象にも動じない順応性というのがより重要となる。
「まぁ、初めて見るならこんなものよね。皆通ってきた道よ」
とはえい、元々は奇術やら異能力といった類いのものに縁が無い世界で生活してきた人に対してすぐに順応しろというのも酷というものだろう。むしろすぐに順応出来る方が異常とも言える。
「んー、この流れだと次は私かなぁ。最初に言っておくけど、私も『変化』の能力だよ~」
白亜の後ろから欠伸をしながら顔を出したのは姫。どうやら姫の能力も雨やレシウスと同じ物体に『変化』を与える能力らしい。
今度は何かを取り出すことなく、気だるげな足取りで春人の方へと歩いてくる。歩き方や振る舞いが完全に女の子であるが、勘違いしてはいけない。彼は男だ。
姫は春人の目の前まで来ると、春人の着ていた衣服に右手で触れる。目に見える変化が表れないところを見ると、レシウスと同じ『性質変化』だろうか。
右手で触られた衣服に特に違和感があるわけでもない。何が起きているのか分からず、取り敢えず着ている衣服に触れてみると
「…硬い」
「うん~。私の能力は『右手で触れた物体の硬度を変化させる』、だよ。硬くしたり軟らかくしたりはお手の物~」
何とも不思議な感覚が、衣服に触れた彼の手にある。衣服は確かに硬いのだが…『服そのものの性質が変わっていない』のに彼は気付く。
硬い物というのは当然折ったりするのは難しい。しかし、今姫に触れられた衣服は、折れたりする性質がある服のまま『硬度だけが増した』と表現するのが正しい。まるで、鉄よりも強固な糸で編まれているかのように。
「不思議でしょ? 姫はあくまでも『硬度』を変えただけなのよ。それ以外の性質はそのままでね」
「…なるほど。だから、違和感がほとんど無いんですね…」
重さも長さも、『硬度』以外ものは何一つ変わっていない自らの服を見て『性質変化』というものを春人は理解する。
「これが、『over works』の大半を占める『変化』の能力よ。種類は『物質変化』と『性質変化』と…もう一つは『状態変化』。目に見える変化と見えない変化があるから十分に注意しなさい。特に『性質変化』に関しては、何を変化させられたのかが分からないと致命的よ」
物体を、全く違う何かに変化させる『物質変化』。物体の何かの性質を変化させる『性質変化』。説明はないが、恐らく物体の状態そのものを変化させる『状態変化』。変化の能力にはこの3つの種類があるらしい。
そして、『over works』の大半を占める…ということは何かを変化させる以外の能力も存在しているということになる。
「その顔だと察したみたいね。そうよ。次に見せるのは、『変化』の能力じゃないわ」
その考えには春人もたどり着いたようで、白亜が満足そうな笑みを浮かべて、ある人物に目配せをする。
「次は私のハイパー凄い能力を見せてやるにゃー!!」
その目線の先にいたのは、相も変わらずよく分からないテンションをしている桃乃であった。




