1-28
「…コホン。改めてこれからよろしく頼むわ、ハル。これで私達は目的を共有した、本来の意味での『仲間』になったの」
崩れかけた雰囲気を一新するために白亜は一息吐いて、春人に手を差し伸べる。
その差し出された小さくも大きな手を、春人は一切の迷いもなく力強く握った。
「こちらこそ、よろしくお願いします」
気付けば、最初の方はおどおどして辿々しいものであった春人の言葉も少しだけ堂々とした声へと変わっている。少なくとも、この場所に来て間もなくの頃の彼とは大きく異なっていることだろう。
それに気付いているのか、白亜は満足そうな表情を浮かべる。幼さの残るその顔立ちには似合わない、優しげな笑みだ。
「ハルなら、受け入れると思っていた」
「…正直なところ、逃げ出そうとも思ったけどな」
しばらくして雨が春人に近付き、真顔に近い笑顔で彼にそう語りかける。分かりづらいが、微かに口元には笑みが存在している。
彼女には、春人の口調も幾ばくか崩れる。他よりも多くの時間を過ごしたからなのか、それとも他の要因があるのかどうかは分からないが、一番心を許しているのは間違いない。
雨が近付いてきた後に、他の仲間も彼に近付き言葉を交わしていく。先程までは多少ばかり存在した壁も取り払われているようで、彼等の距離感は近い。
ここにいるのは、恐らく選りすぐりなのだろう。大半は最初の自己紹介で迷い、ここで挫折する。きっと彼等はそんな人達を何人か見てきた。
「これで、本当に9人…。本音を言うと後1人は欲しかったけど、やっと戦えそうね…」
「まぁ、もう戦いは始まってるけど、基本的には受け身だったからな。これなら攻めていける」
「とはいえ、敵の勢力はこちらの倍以上…。慎重に行かないとですね。…それに、お嬢様…」
「えぇ、分かってるわよ…。今のところ問題は2つね」
当然のことながら、春人が来る前からこの潰し合いは始まっている。今の会話から分かったことは、こちらが圧倒的に不利だということか。そして、今現在に問題が2つ浮上している。
「その、問題って…」
「1つは今はどうにもならないけど、いずれは解決しなきゃいけない問題よ。…まぁ、いずれ会うこともあるでしょうね」
さっきから疑問に思っていたが、この場に存在する人間は8人なのだが、白亜はこちらの戦力が9人だと言っていた。
つまり、1つ目の問題はここに不在の最後のメンバーについてだろう。姫と同じくネームプレートが裏になっていたあの部屋の主が、大きな問題になっているようだ。
「もう1つは…ハル、貴方の問題よ。これだけははっきりさせておかないといけないから」
これは春人にとっては予想通りだろう。その内容までは把握出来てはいないが、他の人に問題があり自分に無いとは少し考えられない。
「それは、何ですか…?」
疑問を呈した春人の言葉を聞き、白亜は待ってましたと言わんばかりの得意顔をする。
「それは、『over worker』に発現する『ある力』のことよ!! 簡単に言っちゃえば、『異能力』ね!!」
幼い子供のような…いや、実際に子供であるであろうが、そんな眩しいくらいの笑顔でそう告げた白亜。
そのぶっ飛んだ発言に言葉を返せずにいると、白亜は更に続ける。
「私達が戦う為に最も重要なもの…それが『over works』よ」
未だに理解が追い付いていない春人の目には、もう一度得意げな顔に戻っていた白亜の顔が映っていた。




