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「…自分達以外の『over worker』を、消す…?」
「言葉通りの意味よ、ハル。この世界には、2種類の『over worker』がいるの。1つ目は、元々この世界に存在していたもの。もう1つは…」
「…自分達のような、飛ばされてきた存在…?」
「ご名答。簡単に言えば、今起きているのはその異なった存在の『over worker』の潰し合い。どちらかが全滅するまで終わらない、悪夢のような現実よ」
予想を遥かに超える現実が目の前にはあった。だが、春人の中ではこれに近い想像はきっと出来ていたはずだった。
白亜の言ったことを要約すると、この組織の目的は『相手側陣営の殲滅』だろう。これは、相手側の陣営にも共通する。
白亜の横に佇む、春人以外の6人は一切表情を崩していない。つまりそれが意味するのは、全員がこれを理解し、それを行っているということに他ならない。
「…じゃあ、あの時僕が殺されそうになったのも…」
「ええ、そうよ。ここに来てからまだ右も左も分からないハルを真っ先に消そうとするのは当然ね」
合点がいった。春人がこの世界に飛ばされてきてからの最初の『over time』で、彼はイカれた男に殺されかけていた。
真相を聞いた今なら理解出来る。あれは、イカれてるのでも狂ってるのでもなくただ単純に『敵』だったから自分は狙われていた。
「じゃあ、『over time』ってのは、その為に設けられた時間…ってことですか…?」
両陣営の殺し合いの為に、『over worker』のみが動ける時間の存在がある。そう考えるのが妥当だろう。でなければ、今この時間にも敵が襲ってきてもおかしくはない。
「残念ながら不正解よ、ハル」
しかし、答えは違っていた。そのすぐ後白亜が告げたのは、思いもよらない答えだった。
「答えはその真逆なの。『over timeがあるから私達は戦わないといけない』のよ」
「…?? どういうことですか、それって…」
「分かりやすく言うと、『over time』という存在を無くす為に、相手を殲滅させなければならないの。『over time』という、あってはならない『余分な時間』を…ね」
春人はその言葉を聞いた瞬間に、唐突にそれを理解した。『over time』は『前提』なのだと。この世界における、この戦いの『根本』であると。
「敵対する者同士は『over time』以外の時間には攻撃禁止になっているわ。…まぁ、そもそも攻撃する手段が無いのだけれど」
「…それが、この世界のルール…。『over worker』のみに課せられた…」
「分かりやすく言うと、この世界はゲームなのよ。幾つかの制約と条件の存在する、サバイバルゲームのようなもの」
「ゲームって…人が殺し合う事がですか…?」
「分かりやすく、と言ったでしょ? 私だって好きでこんなこと言ってる訳じゃないわ…」
白亜は苦虫を噛み潰したかのような顔でそう告げる。淡々と語ってはいたものの、やはりこの世界の不条理さに怒りを隠しきれてはいない。
それは周りのメンバーも同じようであるのが、表情から見てとれた。
覚悟は出来ていたはずなのだったが、春人は一瞬逃げ出したい気分に陥った。それほどまでに突き付けられたものは衝撃的で、恐ろしいものだった。




