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地下室の中は思っていた以上に広く、何に使うか分からないような物がたくさん置いてある。入り口までの物々しい雰囲気とは少し異なり普通の部屋だった。
春人を一番後ろとしてその地下室へと足を踏み入れた組織の一員達は白亜を中心に横に一列に並び、春人の方へと向きを変える。
春人を除く全員が、先程までとはうって変わった真剣な面持ちで春人を見据える。その目線に春人も目を逸らさずに応じる。
「…さて…、聞くまでも無いとは思うけど一応聞いておくわ」
一息だけ吐いて、白亜は春人に語りかける。
「これが最後よ。今ならまだ答えを変えることが出来る。…貴方の覚悟を聞かせてちょうだい」
数時間前のこと。彼はこの組織の一員となったはずだが、それはまだ仮の話だ。聞いたらもう戻れなくなる話を、彼はまだ聞いてはいない。
今からその話をするのだろう。絶対に外には漏らしてはいけない、この世界の根幹に関わる話を。
その話をする直前の今ならまだ逃げられる。彼の目の前にあるのは悲惨な現実かも分からないし、もしかしたら絶望的な真実かもしれない。
「…逃げませんよ。僕は、絶対に逃げない。雨に命を助けられてから、そう決めたんです」
自己紹介をした時にも言った。『命を拾われた』のだと。雨がいなければ、春人は何もかも分からないままこの世を去っていた。
どんな現実が待っているかは、正直怖い。だが、ここで逃げるのは自分にとっては更に恐ろしいのだと。彼の目はそう語る。
「…本当に、いいのね?」
白亜の最終確認であろう言葉に、春人は無言で首肯する。今更変える答えを、彼はまだ持ち合わせてはいなかった。
「はぁー、良かった…。ここでやっぱり嫌って言われたらどうしようかと…」
「いや、春人に限ってそれは無いだろ。目を見りゃ分かる」
「私の人を見る目は確か」
「ふふ、確かにそうね。それじゃ…『over time』になる前に説明出来るとこはしちゃおうかしら」
「…お願いします」
ついに聞きたかった事が、白亜の口から明かされる。聞きたいことは沢山あった。ここに来てから謎となっているものが多いからだ。
何故自分はこんな世界に飛ばされたのか。ここの目的とは一体何なのか。…『over worker』は何の為に存在するのか。
「私達の目的について、簡単に言うわ。この組織の存在理由よ」
白亜はそう言って一度目を瞑り、…もう一度目を開けた瞬間に言葉を発した。
「ここは『over worker』同士の潰し合いの為に作られた組織…。現在存在する、『私達以外の全てのover workerを消す』のが私達の目的よ」




