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「…ふわぁ…。お腹減った…」
食事を続けていると、大きな扉が開かれる音がした。そのすぐ後に、春人には聞き覚えのない声が。
その音が聞こえた方に目を向けると、パジャマ姿にぬいぐるみを抱えた女性が目を擦りながら歩いてくる。
その女性は歩きながら大きな欠伸をし、ダルそうな足取りはついさっき起きたのだろうと察せられる。
その姿を見た全員の目が彼女に釘付けになっている。寝起きで髪はボサボサであるが、非常に可憐な美少女であるのは誰の目から見ても明らかだった。
「おぉー、豪華な食事だねぇ」
そんな目線など露知らず、その女性はちょうど空いていた飛鳥の左隣の席に座り、箸を握り目の前の料理の数々を見つめる。
彼女が箸で料理を取ろうとした時、飛鳥がその皿を取り上げた。
「…まずは、挨拶してからでしょう?」
そう飛鳥が言うと、彼女は少しだけ不満そうな顔をしたがすぐに箸を置いて全員の方に顔を向ける。
「おはようございまーす…って、あれ? 知らない人がいるんだけど…」
「…相っ変わらずマイペースね…。説明するのも面倒だわ…」
「まぁまぁ、お嬢。久しぶりなんだしいいじゃねぇか。俺達も逢うの5日振りとかなんだから」
「あー、そんなに寝てたのか。通りでお腹空いてた訳だぁ…」
ゆったりとした口調で話を続ける彼女は、その知らない人に目線を向ける。
目線を向けられた、彼女が知らない人は隣にいる雨に話しかける。
「…まさか、あの空き部屋の…」
「大正解。紹介してないメンバーその1」
「その言葉から察するに、新しいメンバーってことか。じゃあ自己紹介しておかないとねぇ」
彼女はまたもう一度大きな欠伸をし、目を擦った後、真っ直ぐに春人を見据える。
「私は姫野 優希だよ。よろしく。姫って呼んでくれると嬉しいなぁ」
「あ、三樹 春人です…。よろしくお願いします…」
「春人…。じゃあ、ハルさんって呼ぶねぇ」
ダルそうなんだか、まったりした喋り方なのかは判別つかないが、彼女も春人を拒絶はしなかった。それが嬉しくて、春人をの頬が少しだけ緩む。
「…あー、ハル。言いにくいんだけど、その…」
その頬の緩みを少々厄介な方に解釈した白亜は、言いにくそうに春人に衝撃の事実を告げる。
「…姫は、『男』だから」
「そうなんですか…って、男!?」
「うん、大体の奴がその反応してるから安心していいぞ」
春人はその言葉が信じられず、姫の方に顔を向けまじまじとその顔を見る。
どこからどう見ても、目の前の人は美少女にしか見えない。こんな可愛い子が男のはずがない、と春人の目が語っていた。
「あ、うん。ややこしいけど男の子なんだよねぇ」
何でもないような顔と声でとんでもないことを口にする彼女…もとい、彼は歴とした男の娘であるらしい。




