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「それにしても、よ」
白亜は扉の方へちらと目を向けて、春人達がいないことを確認してから言った。
「これでやっと9人ね。仲間になってくれて本当助かったわ…」
先程までの貫禄はどこへやら。大きく息を吐いて、床にへたれる。
「そうですね…。物分かりが良くて助かりましたよ」
白亜の感情を吐露した言葉に飛鳥が同調する。その反対側では敷島も同意を示す。
飛鳥も敷島もどっと疲れたようか顔をしている。たかが自己紹介でここまで疲れることがあるだろうか。
「何せ一週間ぶりの新入りだからな。ここで逃げられたら目も当てられなかっただろ…」
敷島の発言から察するに、ここは深刻な人手不足であるらしい。
平静を装いつつも春人に逃げられるのではないかと心配だったようだ。
「白亜様が選択肢を与えなさった時は、心臓が止まるかと思いましたよ」
「それは…。彼には彼の人生があるもの。私達が強制していいものじゃないでしょ…」
「…流石です、白亜様。それでこそ、トップの器」
どうあっても仲間にしたかったのに、与えた選択肢。
それは白亜にとっては譲れないラインだったのだろう。
カリスマ性はこういうところで現れる。まさにトップの器にふさわしい。
床に寝そべっていることに目を瞑れば、の話だが。
「とはいえ、戦えるのはまだ先になりそうだな。春人にどんなのが発現してるかも分からないし」
「そうね…。見た目で言えばそんなに強そう…というかむしろ貧弱だけど…。取り敢えず夜にならないと話にならないわ」
随分と失礼な物言いだが、何も間違ってはいないのが事実。
春人は喧嘩などしたことはないし、運動能力も並の域を出ないだろう。
しかし、敷島の『発現している』という言葉が気になる。
それが何かは今は分からないが、全員が一同に介することになる夜になれば分かることだろう。
「では、私達も少し休みましょうか。白亜様もお疲れでしょう?」
「…もうクタクタよ。夕食は豪勢にしてよね!」
「かしこまりました。敷島、白亜様の側から離れないでくださいね」
「はいよ。お嬢、チェスでもするか?」
「疲れた、って言ったでしょ…」
およそ組織の上層部(といえるほど規模は大きくないのだが)とは思えない和やかな会話。
白亜が自分達のことを家族だと言っていたのも、あながち間違いではないのかもしれない。
時刻は午後5時半前。夜が来るには、まだ少し早かった。




