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「…これから説明することは絶対にここ以外の人に漏らしてはいけないわ。いいわね?」
春人は無言で頷く。自己紹介をして、よろしくをした以上裏切ることは許されなかった。
それを見て、白亜は玉座からピョンッと飛び降りて春人がいる場所へ向かって歩みを進める。
今まで座っていたため詳しく分からなかったが、やはり身長は高くない。恐らく春人の胸辺りほどの身長しかないだろう。
目の前に立たれると、これまたよく分かる。どう見たって幼女としか形容出来ない。
「敷島!」
「午後5時17分。次の『over time』まで後7時間以上あるな」
白亜が敷島の名前を呼ぶと、敷島はすぐに左腕に付けられた腕時計を見て時刻を告げる。
流れるようなやり取り。阿吽の呼吸とはまさにこういうことを言うのだろう。
時刻を聞くと白亜は少し思案顔になる。少し間を置いた後に、こう告げた。
「じゃ、取り敢えず解散。休憩してていいわよ」
「…え?」
春人は耳を疑った。これから何か説明をしてくれるのではないかと思っていたからだ。
にもかかわらず、白亜はこの場の解散を告げた。そして周りの人もそれに疑問を持っていない。
「夜遅くなるだろうし、寝とくかにゃ~」
「俺も少し休憩するかな。じゃ、また後でな春人君」
白亜の言葉を聞いた桃乃とレシウスは扉へ向かって歩いていく。この状況をおかしいと思っているのはどうやら春人だけらしい。
「あ、あの、説明は…?」
「あー…、今説明するのは得策じゃないのよ。二度手間になっちゃうし」
春人の質問に白亜は少し申し訳なさそうに応対する。今説明するのは得策じゃない、と言うが春人は気になって仕方がなかった。
今日はこんなことばかりだ。自分の知らないところで、勝手に話が進んでいる。
「分かっていただけると助かります。後で、必ず全て説明しますので」
少し不満に思っていた気持ちがどうやら顔に出ていたようだ。
丁重にお願いをする飛鳥。こう頼まれると断りにくいのは春人も例外ではなかった。
「…い、いえ、大丈夫です…」
「悪いな、春人。今日は疲れただろうから夜までゆっくり休むといい」
敷島もさかさずフォローを入れる。有能な側近、と言っていたのは本当のことだと分かる。
「ハル、私が中を案内する」
「え、ちょ」
説明されないのも仕方ない、と思った瞬間に春人の手を雨が掴む。
春人が抵抗する間もなく扉へと進んでいく雨。どうやら春人の意見を聞くつもりはないらしい。
大きな両開きの扉が開かれ、2人が出ていくと仰々しい音を立てて閉められる。
「…珍しいわね、雨があんなに積極的になるなんて」
「春雨コンビ…誕生ですね」
「ネーミングセンスどうにかしろよ…。にしても、随分気に入られたもんだな、春人も」
残された3人は、珍しくアグレッシブな雨に対する感想をそれぞれ呟いていた。




