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「うーん、流石はリーダー。さっき的外れな発言したのとは別人みたいだにゃ~」
「そうだな。流石はここのトップ。切り替えが早いな」
そういえば、と春人は思い返す。
選択肢を与えると言っていたわりにはその前の発言は的外れ過ぎた。
あの時自分が名乗っていたらどうなっていたのだろうか、と考えると頭が痛くなってくる。
しかし、自己紹介後の白亜は見事なトップの風格を醸し出していたのは間違いない。
ならばその前の発言も何か意図があってのことなのかもしれない、と春人は考える。
「…あれは忘れなさい。あれは事故よ」
「あ、普通にミスっただけなんですか…」
無駄な思考を凝らしたと春人は後悔する。それにしても、白亜はカリスマがあるんだか無いんだかがよく分からない。全く無いこともないだろうし、溢れているというわけでもなさそうだった。
「取り敢えず、改めてよろしくお願いしますね。ハル君」
「そうだな。よろしく頼む、春人」
「よろしくだにゃー、ハルちゃん!」
「これからよろしくな、春人君」
「よろしく、ハル…」
…どうやら、ここの人達は呼び方を統一しないつもりらしい。白亜の時といい、自由過ぎる。
とはいえ、もう春人はここの組織の一員。ここが何の組織で何をするのかは不明だが。
「よろしく、お願いします…」
たどたどしくも、全員に向けて挨拶を返す。もう呼び方については言及するつもりはなかった。
「よろしく、ハル。今日からここがあなたの家で、私達が家族のようなものよ」
そう言って、白亜白亜ニコッと笑う。思わず目を奪われてしまいそうな、そんな無邪気な笑顔。
家族。ここにいる人達は全員もれなく味方…ということになる。
そう考えると、どうしてか春人の目からは涙がこぼれ落ちそうになっていた。
勿論悲しいからではない。だからといって、嬉しさのあまりの涙でもなさそうだった。
「ちょ、ちょっと何で泣くのよ…。もしかして嫌だった?」
「い、いや、何でもないんです…。気にしないでください…」
自分でもよく分からないのだから説明のしようがなかった。考えても考えても、涙の理由は分からない。
春人には、生前にちゃんと家族がいたはずであろうし、味方が少ないわけでもなかっただろう。
それでもこぼれ落ちてきた涙は、一体何が原因なのだろうか。
「ほら、泣き止んで。大丈夫だから」
そうしてまた、隣の雨が春人の頭を撫でる。
一瞬で思考が止まり、また羞恥心が沸いて出てくる。
「だ、だから撫でるなって…。みっともないだろ…」
もう18にもなる男が少女に撫でられて恥ずかしくないわけがない。
と、思った瞬間に今度は違う疑問が浮かんできた。
「…そういえば、皆さん歳はいくつで…?」
「そういや教えてなかったな。俺は26」
「21です。スリーサイズは秘密ですよ?」
「16だにゃ~。華のJK!」
「俺も16。案外歳近いかもな」
「17。今年で18」
最年長が敷島で、未成年が3人。
自分より年下が2人もいたのが驚きだった。特に、レシウスより年上だとは思ってもみなかった。
雨とは同い年らしい。…つまり、同級生に頭を撫でられていたという話になる。
全員、女性も含めて年齢を明かしたが、白亜だけは口を閉ざしたままであった。
「白亜さんは…?」
「秘密よ。どうせ信じてもらえないし」
どうも少しだけ機嫌が悪そうだった。もしかしたら年齢の話はタブーだったのかもしれない。
「実はお嬢の年齢は俺達も知らないんだ。ま、知らなくても支障は無いから」
側近である敷島にも明かしてはいないらしい。しかし、敷島の言うことももっともであった。
「そういうことよ。…じゃ、そろそろ本題に入ろうかしら」
自己紹介を終え、ここに互いを知らない人物はいなくなった。
これから話される内容はきっと聞き逃してはいけないものだろう。
雰囲気が一気に変容したのを感じた春人は、真剣な面持ちで白亜を見つめた。




