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over time  作者: 森坂 輝
『over workers』
12/40

1-11

「…まぁ、いいです。さっきのことは気にしないで仲良くしてくださいね」


飛鳥は、先程敷島に向けていた笑顔とは全く別物の笑顔を少年へと向けた。


その笑顔は見るものの心を根こそぎ奪ってしまいそうなほど、美しく可憐な笑顔だった。


しかし、少年はそれに苦笑いで応える。数十秒前までの笑顔が脳裏に焼き付いて離れないからかもしれない。


「…しょっちゅう揉めるけど、どっちも有能な側近よ。きっとあなたのいい先輩にもなってくれるはずだわ」


「そんな、有能だなんて…。敷島には勿体無いですよ…」


「おい、そこは自分を謙遜しとけよ。何で俺なんだ」


言った側から揉め始める二人。決して仲が悪いという訳ではなさそうだが、これが彼らの日常なのだろう。


「この流れだと次は私かにゃー?」


今度は左側から声が聞こえた。声の主は、大きな扉の前で少女達を待っていた語尾が特徴な人物だ。


一度だけ咳払いをして、少年の方へと体を向ける。そして、とびっきり胡散臭いポーズを取り自己紹介を始めた。


「この組織のアイドル、桜庭桃乃サクラバ モモノだにゃー!! 気軽に『もものん』って呼んでね♪」


…空気が凍る、とはまさにこういう状況を言うのだろう。


片足をあげて、目を挟むようにして右手はピース。


そしてファンサービスのウインクを忘れない。


はねっ毛が猫耳みたいになって、語尾がおかしな女の名前は桜庭桃乃というらしい。


「…やっちまったなぁ…」


数秒間の沈黙の後、敷島がおでこを押さえながら呟く。隣では幼女と飛鳥も同じようなリアクションを取っていた。


少年は、目の前で何が起きているのか理解出来ず固まっている。少女に至っては桃乃の方を見てすらいなかった。


「あ、あれー? 昨日自己紹介はこうやれ、って言われたんだけどなー…?」


この微妙な雰囲気を作った原因は、顔面蒼白で汗が大量に吹き出している。当然だ。初対面の人間相手にここまでスベッているのだから。


「…まさか、本当にやるとは思わなかった。すまん、桃乃」


入ってきた扉の方から声が聞こえてくる。そちらを見ると、ついさっき会ったフード男がそこには立っていた。


その発言から察するに、桃乃にあの自己紹介をさせたのは彼らしい。


「あ!! お前のせいでこうなったんだぞー!! 責任取れ!! ばーかばーか!!」


それに気づいた桃乃は、フード男に向かって文句を言う。


「悪かったって。さっき名乗り忘れたし、名前聞き忘れてたから俺も自己紹介させてもらうな」


少女曰く、門番のような人らしいのだがそれ以外の情報が一切無いフード男。


彼は深く被っていたフードを外して、少年の方を向いて言葉を発する。


「俺は、レシウス=リィン。ここの門番みたいなもんだ。よろしく頼むな」


フードを外した男の髪は、純粋な金。そして眼は、これまた輝くような金色。


まさに外人のイケメン、といった風貌のその男。名前は、レシウスというらしい。


まさか外人だとは思っていなかった少年は驚きの表情を浮かべる。そして、さっきの場面を思い出す。


「あ、あの、さっきはすいませんでした…。反応出来なくて。これからよろしくお願い、します…」


「あぁ、さっきの? 気にしてないから大丈夫だ。んじゃ、俺は持ち場に戻るな」


爽やかに笑うと、またフードを深く被り扉に向かって歩いていく。


「レシウス、今日はもういいわ。あなたもここにいなさい」


「え、いいんですか?じゃ、お言葉に甘えて…」


たのだが、幼女の言葉を聞きもう一度少年の方へ向き直る。


「レシウス、こっち来るにゃー! 説教してやるー!!」


「はいはい、聞いてやるよ」


軽く流しながらも、レシウスは桃乃の横へと移動する。


これで残っている人物は二人。正直少年はこの二人のプロフィールが一番気になっていた。

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