第7話
少し出てきます闇の部分
――某所――
全長2m程の特殊なガラス製の筒がいくつも並んだこの地下施設。
SF映画などを見慣れた人にはすぐに想像がつきそうな、
正にモンスターを作り出すようなこの施設に並ぶガラスの筒の中も液体で満たされており、
何かがその中に浮かぶように静止している。
「自然出生児No.0031986のレポートは十分です……データも正確に送られてきておりますので、この施設の“弟”にほぼ正確に再現することは可能かと。」満足げに
白衣の女性は手元のメモに目を落として書いてある内容を隣に立つ男性に伝える。
「あとは倫理上の問題という訳だが……」
女性から報告を受けた男性は、そう言いつつも一向に気にしていない様子で、
目の前の培養ケースの中に浮かぶそれを見て、「詳しいデータを」と先ほどの女性に伝える。
「昨日のリポートでは、近々つかまり立ちができそうだということ……こちらにその対象の24時間動画資料もあり――」
と読み上げる資料をひったくるように手に取った男性は、過去のデータにも急いで目を通すと
「ほー、この本体の方は成長も、知能レベルも高そうだ……よし、今後この子のデータの信号入力を上げていこう。……そうだな、強度は…72位で行くか。」
男性は頭の中で弾いた計算結果を女性に伝えると、今後の指示を取りまとめにかかる。
「72‥‥‥ですか。それは、例の計算によるもので?」
「もちろんだ。」
女性は、何か言おうとしたが、口にするのをやめた。
男性はその様子を見て取ると、満足げな表情を浮かべた。
「あとで、子どもを持たない選択をした夫婦の遺伝子から誕生した子のリストを、俺のデスクへ。」
男性は、手早く指示を終えると自身の研究室へと向きを変えて歩き出す。
女性は、その後ろ姿へと声を掛ける。
「全部で数万ありますが……」
「構わんよ。」
男性はそう言いながら後ろ向きに左手だけを上げて、部屋を出た。
男性は届けられたデータを分類作業にかけていた。
「まあ、最後は環境がものを言うんだが……な。」
誰にとも言えない独り言をつぶやきながら、黙々と分類作業を続ける。
数万のデータから,今年は、ほんの一握り2000程のサンプルを選び出せばよい。
(……2000か。2年後には、児童養護施設が、また満員だな。)
これでも、世の中に出すものは毎年少しづつ増えているのだ。
男性は机のインターフォンを鳴らして。先ほどの女性を呼ぶ。
しばらくすると女性が入室してきた。
「お呼びですか?」
女性の口調は至極事務的である。もちろんあえてそうしているようにも思えるのだが。
「あぁ、ここにリストアップしたものを今年の分とする。」
そう言うと、リストを掴む手を女性の方に突き出しながら、
「各地のアンドーさんにデータ転送でき次第取り掛かるわ。」
そう言うと、男性は再び目を机に落として次の作業に取り掛かる。
女性は受け取った資料の最初の部分にだけ目を通すと、
「ほかには?」
と、男性に質問をぶつける。
「……あぁ、それとさっきの自然出生児のデータ。とりあえず3歳の誕生日までは確実にな。
その後は、計画書のとおりだ。」
男性は顔も上げず、淡々と答えると女性に退出を促した。
「……わかりました。」
型通りの挨拶を残し、女性もまた資料を手に仕事場へと戻って行った。




