第5話
「ほんとうに一銭もかからなかった。」
有希は家に帰るなり、誠に声を掛ける。
今日、有希は近くのドラッグストアで冬理の紙おむつを買った(買ったと言ってもいいのだろうか……?)のだが、カードの提示でまったくの0円。
真が有希から手渡されたレシートに目を通すと
「ほんとうに引かれてる。紙おむつに、おしりふき……あと、こんなものも?」
真の言葉に有希がレシートを覗き込むように確認してくる。
「ほんとだ。気付いてなかった。」
真が驚いているのは、念のためにと買っておいた、冷却ジェルシート
おでこが小さ目な有希は、冷却ジェルシートは普段から子供用の小さなものを購入してはいるのだが……
「いいのかな?」
生まれた素朴な疑問とともに、有希は誠に聞いてみる。
「店では聞かれなかったの?」
真としては、有希に確認したいことだ。しかし有希はただ首を横に振るだけ
「ううん。何も‥‥‥冬理用だと思ったのかな?」
「間違ってたら大変だから、一応確認しておこう。」
真と有希はさっそくPCに向かい専用ページを開いた。
〈質問!本日、冷却ジェルシートを購入した。店では何も聞かれず、帰ってきてから気が付いたのだが、国の負担となっていた。実際は妻が使うためにとのストック品なのだが?〉
〈質問ありがとうございます。奥様が使うということであれば、対象外商品となります。
しかしながら、冬理君への使用が考えられる、または養育のために親が必要とする商品と判断されるため、その代金については、国の負担で行われます。
必要であれば、期毎提出のレシートデータを今、送付していただければ、あわせて疑義商品、サービスの照会も可能です。どうされますか?〉
「……どうする?」
真は背後の有希に一応聞いておく。
「今日の今のこれ、取り込みしてないので、できればあとでまとめてやりたいし……。」
「わかった。」
真はそう言ってキーボードをたたく。
〈支障がなければ、定期の提出でお願いします。〉
真は専用ページからの問いかけに、臨時のレシートデータの提出をしない選択をした。
〈もちろん支障はありません。期末にまとめて修正していただければ間に合いますので、
その際の確実な提出をお願いします。〉
(忘れないようにしないとな……一家で路頭に迷うよ)
専用ページからの返答に目をとおしながら、自分自身に注意を促す。
そんな真の不安を読んだかのように一文が流れた。
〈正しい申告で、育児負担金の支給停止にならないよう気を付けましょう。〉
昨日は家の通帳に『出産祝い金』との名目で70万円の振り込みがあった。
来週には『育児休業期間生活負担金』が30万/月で振り込まれる予定だ。ましてや今回は妊娠後の初期手当と含めてそれなりの額になるのが分かっている。
(子供を産んだ方が得をする生活か……)
真は妻、有希とベビーベッドに眠る我が子、冬理の顔をまじまじと眺めては、しばしの幸せに浸った。




