第2話
ここからです。
「これか……。」
有希と冬理が入院生活を終え、自宅に戻ったその日その郵便物は届けられた。
ふたりはテーブルの上におかれた封筒をじっと見つめる。
つい先ほど、役場の人間が直接持って来たその封筒には『育児家庭証明』、『重要』の文字が
大きく書かれていた。
「問題なく受理されたってことよね?」
有希はたまらず誰に言うともなく口にしたが、それほどにこの申請が通るかどうかは、
今後の生活レベルを左右することだけに、重いのだ。
真は意を決し封筒を手に取ると、無言で開封する。
真が開封し、手を入れた封筒の先で何かにあたる。
その感触を確かめつつ取り出すと、中からズシリと重いカードが2枚と、
更に新居屋 冬理専用ページの開設手順とそのパスコードが記入された保存用カードが一枚出てきた。
「申請はパスしたみたいだね」
ホッとした真の言葉に、思わずふたりはお互いの目を合わし安堵のため息をつく。
と同時に、知人から聞いていた厳格なルールも頭をよぎる。
縦53.98㎜×横85.6㎜の一般的なクレジットカードと同じサイズ。
ただこのカードは、法によって定められた育児関連の全てに効力を発揮する「魔法のカード」とも呼ばれている。
なぜそう呼ばれているのか。
それは良い面に、悪い面にも絶大な効果があるからで、良い面としてはもちろん何度も触れている育児関連費用の免除が一番大きい。
悪い面としては、もちろんカードの不正利用であり、いくら消耗品と言えど、仮に紙おむつなどでも常識の範疇を越える消費が確認された場合監察が入る。
なので、育児家庭は政令で定められた必要な育児記録と使用記録に関する書類を整えている必要がある。ただより怖いものはないのである。
真と有希は緊張のあまりお互いに見合ったままゴクリと生唾を飲み込んだ。
更に説明用の紙が内封されており、ふたりはそれを手に取ると黙って読んだ。
―新居屋 冬理専用ページ開設の手順と各種報告用書類の作成方法
―報告書作成及び提出時期とその注意事項
―各種オンライン相談窓口
それらの書類にひととおり目を通した二人は、大きくため息をつくと
「……かなりやることが多いな。でも仕方ないか……」
「私たちの入力一つで、かなり変わりそうで…少し怖いわね。」
「でも、やるしかないんだし……彼だけをしっかりやれば冬理が成人になるまでにかかる一切の費用を国が負担してくれるんだぞ。」
真は膨大な仕事を前に自身に
言い聞かせるように、言葉にした。
「そうね。今のご時世こう物価が高いと、国の負担なしでは子供なんて育てられないわね。」
有希も自分に気合を入れるよう力強く答える。
「あぁ、そうだね。」
何にせよ、誠と有希は問題なく冬理を育てられるという希望が得られたことに喜びを感じた。




