↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
名簿に刻まれた番号 (No.0031986)  作者: SHIRUSHI08


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
17/19

第16話

病院に着いたのは由香さんが先だった。病院への搬入は驚くほど静かで、まるで亡くなった人を扱うかのような静けさであった。

「……あの、由香さん……こちらの方は大丈夫なんでしょうか?」

有希は状況が飲み込めず、由香に付いた病院関係者と思われる女性にたまらず聞いた。

「あ、ご存じなかったんですか?」

有希が尋ねた女性は看護師で有希が知らなかったことに驚きを表したあとで、こう付け加えた。「こちらの方は大丈夫ですよ。別施設に運んでそちらで回復させますから。」

「えっと、どういうことでしょう?」

思いもかけない看護師の返答に首を傾げながら有希は重ねて聞いた。

「こちらの――由香さん?はいわゆるアンドロイドです。もっとも、体温も血流も皮膚感も全てにおいて人間と区別するのが、我々医療関係者でも難しいくらい精巧に再現されてますけどね。」

看護師の言葉に有希の理解が追い付かず、意識を失いそうなほどの衝撃を受けた。

「大丈夫ですか?」

看護師が有希を覗き込み心配しつつも、「2台目が着きましたよ。」と救急入り口を指さした。


2台目--春哉君の乗せられた救急車の到着は先ほどとは打って変わって医者、看護士が忙しく往き来しながら春哉を観察し、必要な処置を取りながら病院の奥へと運び込んでゆく。


有希は救急車から降りてくる凜さんと目が合ったが、その視点は定まらずおろおろしているのが手に取るようにわかる。

見かねた病院関係者が凜さんの手を引いてベンチに腰掛けさせた。

すると背後から、有希に呼び掛ける声が

「男の子のお母さんですか?」

慌てた有希は思わず、「はい」と答えてしまったが、病院関係者は立て続けに質問を寄越してくる。

「お子さんの名前は?」

「春哉です。季節の春に…俳句なんかの詠嘆の哉です。」

「一応こちらに書いていただけますか?」

紙とペンを差し出され、有希はさらさらと書き示した。それを見て病院関係者は

「ありがとうございます。一応カードを確認したいのですが……」

その言葉に、有希は深く考えずに『育児家庭証明』カードを提示する。

病院関係者はカードのナンバーを控えて奥へと入って行った。

有希はそこで待つしかなかったが、真に運び込まれた病院を連絡したり、凜さんを励ましたりで、気付けばあっという間に数時間が経過していた。


しばらくして真も顔を出した。冬理は真の母親を急遽呼び出して家で面倒を見てもらっているようだ。

また、凜さんの連絡により施設の園長も到着していた。

「で、みんなの様子は?」

真は病院に着くなり有希に訊いた。

「琴葉ちゃんは外傷のみで、それも絆創膏を貼る程度。春哉君は運び込まれたままで何も言ってこないけど、検査中じゃないかな……そして由香さんだけど……。」

有希は、真の耳に口を寄せると小さな声で言った。

「由香さん、アンドロイドだった……」

真の目が一瞬見開かれたが、すぐに元に戻ると、「そうか……」とだけ言った。


「春哉君のお母さん」

救急診察室の入り口で呼ぶ声がした。

施設の園長と凜さんが「はい。」と席を立つもその看護師は二人を一瞥しながら、有希を目ざとく見つけると足早に近づいてきた。

「お母さんここに居ましたか。こちらはお父さんで?」看護師は真に目をやると、有希に尋ねる。

有希の視界の隅には訳が分からず立ち尽くす園長と凜さんの姿があった。

有希も園長も凜さんもわけがわからなかったが看護師は構わず続ける。

「こちらにいらして下さい。医者から容体について説明があります。」

看護師の圧に押されるように有希と誠は席を立って看護師の後を追う。待合室には園長と凜さんが立ち尽くしていた。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。