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名簿に刻まれた番号 (No.0031986)  作者: SHIRUSHI08


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第15話

突然の事故に場内は騒然とした。次第に人だかりもできてくる。

「由香さ……」

駆け寄った凛だったが、由香の様子を一目で悟り、声が発せずどうしていいか分からなくなった。

その由香の下で琴葉が最初に目を覚ます。

うつろな目で目の前の由香を認識すると、「ママ?」と静かに探るように声を出した。

由香からの反応はない。が、由香の上体はしっかりと車の重量を支え子供たちを守っている。

由香の閉じた目がゆっくりと開かれる。

「ママ、ママ!」琴葉の声が徐々に大きくしっかりしたものになって行く一方で、春哉はまだ目を覚まさない。

「……琴葉、大丈夫?」由香の口から琴葉を心配する声が漏れる。

「うん、私は大丈夫」そう言い終えてふと横の春哉が目に入った。

「春兄ちゃんが……」今にも泣きそうな声で訴えるが、由香はそれにも静かに答える。

「きっと大丈夫だから――」由香は苦痛に顔をゆがめながらも琴葉へと声を掛け続けた。


わらわらと集まってきた人々が口々に叫ぶ声が聞こえてくる。

「力を貸して、車を動かすぞぉー!」

「救急車は呼んだか。」

「男の子の方は意識がないぞ!」


「絶対車から出ないでね。」

「…はい。」

有希と誠は冬理を車に残したまま、騒然とする現場で由香と春哉に懸命に声を掛けながら、琴葉を引き出していた。

「けがはない様ね。」

痛いところはないかと琴葉に聞きながら全身を隈なく確認し、若干の擦り傷だけと確認した。

「由香さん、琴葉ちゃんは無事よ。」

懸命に耐える由香にせめてもと、有希は琴葉の無事を知らせる。

「ありがとうございます。春哉君は……」

人々によって助け出された春哉も見たところ外傷はないが、なぜか意識が戻らず緊迫の時は続いている。

「それよりも由香さん……」

有希は改めて由香の全身の見えるところを……見るからに無残であった。

(由香さん……頑張って!)

祈るしかできない有希のもとに男性の声が響く。

「車をどけますから、離れて!」

慌てて離れた有希の後に数名の男性が車に取り付く。その中に真も居た。

「いくぞ!――せーの!」

掛け声とともに車の前部が持ち上がり、待機していた男性が素早く由香さんを引き出すことに成功した。


まもなく救急隊が到着した。

意識のない春哉君と念のためにと琴葉ちゃん、そして一番重症な由香さんが搬送される。

「どなたか乗られますか?」

救急隊員の呼びかけに、凜さんが力なく手を上げる。

「では、こちらへ。急いでください。」

有希もどうしたものかと迷った。その時真がやってきて

「冬理は俺が見れるから、お前もついていけ。凜さんも一人じゃ不安だろう。」と背中を押す。

「あ!私も行きます。関係者です。」

救急隊員が振り返り有希を確認すると、「ではこちらへ」と一台の救急車へ案内された。


救急車の後部扉が閉じられ、サイレンが鳴らされ車が動き出す。

有希が乗り込んだのは由香さんが乗せられた救急車であった。

救急車内でも活発に活動が行われていた。心電図系が取り付けられ、酸素供給が準備され、左足の傷の様子が観察されていたが、傷の具合を確認していた隊員の手が止まった。


その隊員は横で処置を行っていた隊員に何やら耳打ちすると、一緒に由香さんの足の傷部分を覗き込み、頷きあうとそれ以上の措置はされなかった。

病院に着くまでの間、由香さんに取り付けられた心拍系と血圧や脈拍を示す表示のみが静かに音を刻んでいた。



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