第13話
養護施設の子と一緒に遊びに行くのは難しいかと思ったが、幼稚園での様子や施設からの職員が一人つくということで思ったよりは、スムースに行った。
で、今有希は琴葉ちゃんのおうちの前に居る。
(なんか緊張するのよね……)
比較的こじんまりとした一軒家、庭の手入れは行き届き、一面きれいな芝生となっていて門から玄関まではコンクリートの道が真っ直ぐに引いてある。
建物に目を向けると緑色の屋根に白壁の、最近流行りの量産タイプの……規模から考えると3LDKクラスの家かと推測できる。
インターカムの付いたフォンを押す。
「…はい。」
(え!?)
あまりの返事の速さに、ボタンを押したまま手が止まる有希。
「…どうぞ」
扉が解錠される音がかすかに響き、インターフォンから由香さんの声が流れる。
「……お邪魔します。」
我に返った有希が、扉を開けて顔を覗かせると、由香さんが部屋の奥から、それこそスーッと音もなく現れる。
「…どうしました?」
玄関にやってきた由香さんが見事な笑顔で有希に声を掛ける。
「冬理からお願いされまして、今度の日曜日にピクニックに行くんですが――」
話しつつ何気なく目に入ってきた家の中が妙なほど片付いていて、生活感が薄いこと有希は気を取られ言葉が切れる。
「…はい。どうぞ」
「あ、ごめんなさい。それで、西田さんもご一緒にいかがですか……と。」
気を取り直して、言葉を繋げた有希
「…あ、お誘いですね。ありがとうございます。琴葉も私も大丈夫です。」
由香さんは、丁寧に頭を下げながらも承諾してくれた。
「では、今度の日曜日、朝の9時ころに迎えに来ますからよろしくお願いします。」
そう言って今度は、有希が深々と頭を下げた。
「…はい、わかりました。よろしくお願いします。」
お互いに会釈を交わしながら、有希は西田家を後にした。
その次の日曜日
真たちは大きめの1BOXカーを用意し出発した。
先ずは、西田家。
ご主人は、他に予定があったようで生憎の不参加となったが、琴葉ちゃんと由香さんはしっかり参加してくれるよう。
ふたりを乗せて次は施設へと向かい、そこで春哉君をピックアップ、約束通り職員の方がどうこうされる。
「初めまして、私職員の向井 凛と申します。本日はよろしくお願いします。」
丁寧なあいさつを破るように、春哉君の声が割って入る。
「リン姉ちゃんは俺より楽しみにしてたんだよ。」
子供の悪意のない一言なのだろうが、当の職員は一瞬で顔が真っ赤になる。
「…え、あ、その……。」
皆一斉に顔を見合わせたあと吹き出すように盛大に笑った。
冬理も琴葉ちゃんももちろん春君も、有希の視界の隅で由香さんだけが笑顔のまま声を発していないように見えた。
真が運転席から凜さんの方に向き直ると、
「いいじゃないですか。せっかくなんだから、一緒に楽しみましょう。お弁当もたくさん作ってきましたし。」
そう、この日のために有希は朝早くから人数分の料理を仕込み少々寝不足気味かもしれない。
「あ…ありがとうございます。」
消え入りそうな声で職員さんは言うが、
「リン姉ちゃんよかったなぁ」と春哉君の声
「もう、春君が……」その言葉に再び車内が沸いた。由香さんも笑顔を湛えていた。
「それじゃあ、皆揃いましたので、ピクニックに出発ーっ!」
真の掛け声に合わせるように車内で思い思いに「しゅっぱーつ」の声が響いた。




