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名簿に刻まれた番号 (No.0031986)  作者: SHIRUSHI08


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12/19

第11話

有希はふと思い出した。

去年の『お遊戯発表会』で、あのママ友が言っていた言葉――

養護施設組が増えているという事実

(確か‥‥‥組の3~4割がそうだと、そしてあの春哉君も。)

別に養護施設の子が悪いわけではない、ただ多いのだ。

(……ご両親を一度に亡くしたとか)


「おはようございます。」

有希が声を掛けた相手は、今年同じ園に入園してきた琴葉(ことは)ちゃんの母親

(え―と、確か西山 由香 さんだっけ?)

「…おはようございます」

丁寧に立ち止まってきれいに会釈をしながら挨拶を返してくれる。

(姿勢も良くて、ご挨拶もいちいち丁寧なのよね。どちらかのご令嬢なのかしら?)

そう思わせるほどに、立ち居振る舞いが完璧と思わせる落ち着きがある。

「とうちゃんのおかあちゃん。おはよーごじゃいます。」

元気な琴葉ちゃんのあいさつに、有希の表情もほころぶ

(女の子っていうのも、男の子と違っていいのかも……この子はどっちかな?)

つい、そう考えて自らのお腹を摩ってしまった有希は、西山 由香さんの視線が

自分のお腹へと注がれていることに気付き手を止めた。

(変に思われたかな?)

まだ、お腹も大きくなっていないので傍から見れば、妊婦だと気付く人はそう居ない。

有希は、由香さんの視線を感じながら、

「あ、あの琴葉ちゃんのお母さん?」

と声を掛けると、由香の視線が有希に向けられた。

「…はい。」

「琴葉ちゃん今日もお元気ですね。」

由香の無遠慮なほどの真っ直ぐな視線に耐え切れず、冬理に話しかけることはちゃんに視線を移しながらそう話す。

「えぇ、ありがとうございます。おかげさまで、琴葉は元気です。」

由香はそう答えると、有希と同じく琴葉へと視線を移す。

自分から、由香の視線が外れたことを感じた有希は、娘を見つめる由香の目に視線を移した。

(ん……なんだろう。見つめてるというより、凝視してるように思える。)

小さな違和感が、有希の胸中に生まれた。

しかし、有希は気のせいだと思うことにした。

(由香さん、育児疲れかもしれないし……。)


幼稚園バスがやってきた。

冬理と琴葉ちゃんは勢いよく駆け込み、先生に注意を受ける。

「こら!ゆっくりと乗らないと危ないよ。」

「はーい。」

「はい。」

先生の注意も何のそのふたりは元気よく返事をしながら、車内を見回す。

バスの後方シートから冬理を呼ぶ声が聞こえる。

有希もその声の主へと視線を向けると、その先には春哉君。

(仲がいいわね)

有希が微笑ましく思っていると、

「ことちゃんも一緒に座ろ!」

「うん。」

冬理は琴葉ちゃんの手を引いて、春哉君の座るシートの横へと向かう。

ふたりの笑顔が眩しかった。


「子供たちの仲がよいですわね。」

有希は隣で見送っているであろう由香さんに向けて話したが、反応が返ってこない。

(あれ?)

不審に思って振り向いてみると、表情は笑顔でこそあるが、言葉を発せず、黙って見送る由香の姿があった。

(いるわよね。……聞こえなかったのかしら?まあ、いいか。)

そう思いバスに向き直ると、

「ほら冬理、行ってらっしゃい。」

冬理に手を振ってやると車内から

「いってきまーす。」と元気に手を振り返す冬理の姿。

その横では琴葉ちゃんが有希と由香に向かって同じく手を振っている。

「行ってきまーす、ママ」

琴葉ちゃんの元気な声にも由香の口からは声は出されなかった。ただ、満面の笑みで手を振る母親が立っていた。


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