第9話
今日は『お遊戯発表会』の日
朝も早くから発表会場に先乗りしてでも我が子の晴れ姿を映像に残したい。この気持ちは時代を越えても変わらない。媒体自体は目に焼き付けるから、カメラ、ビデオなど移り変わりがあるだろうが。
ただ、今は少子化の時代……なのに何故か、児童養護施設には子供が多いとは聞く。
御他聞にもれず、冬理が通うこの園でもその傾向はある。
「4,5年前から増え始めているそうよ。」
右となりに座ったいわゆるママ友がそう話しかけてくる。
「らしいですね。うちの園でも何人かいるんでしょ?」
有希はその手の話はあまり好きではないが、ある程度の話を合わせるのもママ友関係をうまく続けるための必須スキルだそうだ。
「えぇ、冬理ちゃんの組では、唯ちゃん、裕ちゃん、信ちゃん、知ちゃん、智ちゃんが確かそうだったわ。」
我が意を得たとばかりに、知っている名前を次々に告げてくる。
有希の方も冬理から『今日あったこと』なんて幼稚園の出来事を冬理の口からいろいろと聞くので当然名前は何度か聞いているので『あぁ、あの子か』くらいにはわかる。
「それから春ちゃん。あの子入園前に両親が無くなっちゃったらしくて、他に親戚も無かったみたいでね。」
痛ましそうに話してはいるが、このママ友本当はどこまでそう思っているか……と思いつつも有希は適当に相槌で返す。
「まあ、かわいそうに」
「でしょう?だから急にこの園になったらしくって、この子も養護施設組よ。だから……」
今話した名前を指折り数えながら
「私の知るだけで6人よ。」
大げさに驚いたような表情を見せながら、そのママ友は口元を隠すように手をやる。
『ぞうさん』組は20人ちょっとで、割合としては3割から4割ほどだ。
「それでね――」
話がまだ続くのかと、少しうんざりし始めた有希の耳に先生の弾くピアノの曲が聞こえてきた。
「残念ですわ。始まるようなのでその話はまたの機会に――」
有希はそう言って左側に腰掛ける真に視線を送ると、少し顔を顰めたのちステージへと目を転じた。
ピアノの曲が軽快なリズムに変わると、その曲に合わせて園児がステージに飛び出してくる。
最初は園児たちの合唱のようだ。
飛び出してきた園児たちはあらかじめ決められていたポジションへとすばやく走り込むと、体全体で弾むようにリズムを取る。
全員が並び終わった後で、先生が再び曲を変えた。
「ん、この曲は・・・・・こいのぼり?」
ステージの園児の様子を見ながら先生自身もリズムを刻みつつ園児に歌いだしの合図を送る。
前奏がひと際強くなり『はいっ!』と園児へ向かって先生の合図が送られる。
一部の園児は、しっかりと先生を見て合図を受け取りながら、
一部の園児は、親と目で見合って笑顔を浮かべながら
一部の園児はそんなことお構いなしにそれぞれのスタートで
「♪い~ら~かぁ~の――」元気に歌いだす園児たちは、決してきれいに揃ってはいないが元気だけは満点である。
(いらかって言葉もこれ、死語かもなぁ……)
そんなことも考えながら真と有希はにこやかにステージを見守っていた。もちろんその輪に居て一番目立つ我が子冬理の姿を片手に持ったビデオで収めながら――




