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第3話可愛くてごめん

 JKミスコンの予選が始まって数日。ゆずきの配信枠は、予想をはるかに超えるスピードで盛り上がりを見せていった。初めは、クラスメイトのここみやたいよう、姉のわちを、そして学校の友人たちが中心だった視聴者数も、日を追うごとに右肩上がりに増えていく。コメント欄には「ゆずきちゃん可愛い!」「歌声最高!」「笑顔に癒される!」といった応援メッセージが飛び交い、彼女の配信時間は熱気に包まれた。愛媛の自宅の部屋で、たった一人でマイクに向かい、画面の向こうのリスナーに語りかける。それは、ゆずきにとって、まだ見ぬ世界と繋がる魔法の時間だった。

特に、ゆずきの配信を熱心に応援してくれたのが、「いまさん」と名乗るリスナーだった。彼はプロフィール欄に「エリートサラリーマン」と書かれていて、いつも決まった時間に現れ、ゆずきの配信が始まると同時に高額なギフトを惜しみなく投げてくれた。

「ゆずきちゃん、今日も頑張って!」

 「君の夢を応援するよ!」といった力強いコメントは、まだ右も左もわからないゆずきにとって、どれほど心強い支えになったか計り知れない。いまさんの活躍もあって、ゆずきの順位は驚くべき勢いで上がっていった。時には、ライバルとされる人気配信者を抜き去り、堂々たる3位まで上り詰めた瞬間もあった。画面に表示される自分の名前と順位を見るたび、ゆずきの胸は高鳴り、全身を興奮が駆け巡った。それは、まさに夢が現実になるかのような、まばゆい輝きだった。

 しかし、予選の終盤に差し掛かると、上位の壁は高く、容易には破れないことに直面する。最後の数日は、上位陣も必死の追い上げを見せ、熾烈な順位争いが繰り広げられた。ゆずきも、できる限りの努力をした。睡眠時間を削って配信したり、ファンとの交流を密にしたり、歌やトークの練習にも一層力を入れた。けれど、結果は非情だった。

 予選最終日。締め切り時間のアナウンスが流れる中、ゆずきは祈るような気持ちで画面を見つめていた。何回も更新ボタンを押し、順位が変動するたびに一喜一憂した。そして、最終順位が表示された瞬間、彼女の目は信じられないものを見るように見開かれた。

 最終結果、予選6位。

「……嘘、だよね?」

 声に出すこともできないほど、悔しさが喉の奥に込み上げてきた。あと少し。あと一歩だった。3位まで上がったあの輝かしい瞬間が、まるで幻だったかのように遠ざかっていく。今まで感じたことのない、胸が締め付けられるような痛み。負けた、という事実が、重くのしかかった。

 配信を終え、スマホを握りしめたまま、ベッドにうつぶせになったゆずき。目頭が熱くなり、気づけばぽろぽろと涙が溢れていた。「可愛くてごめん」なんて、心の中で呟いてみたけれど、結局は自分への言い訳にしかならなかった。もっとできたはずだ。もっと頑張れたはずだ。そんな後悔の念が、次々と頭をよぎる。

しばらくして、泣き腫らした目でスマホを見ると、ここみやたいよう、わちをから、たくさんのメッセージが届いていた。

「ゆずき!よく頑張ったね!」

「本当にすごいよ!」

「悔しいのはわかるけど、次があるよ!」

 それらの温かい言葉に、ゆずきの心は少しずつ癒されていく。涙は止まらなかったけれど、その中には、確かに前に進むための光が見え始めていた。

「うん……」

 ゆずきは、まだ少し震える声で、画面の向こうの誰かに語りかけるように呟いた。

「悔しいけど、仕方ないよ。やるだけやったし。次は本戦に向けて、頑張ろう!」

 負けず嫌いの性格が、ここで顔を覗かせた。この悔しさをバネに、次は必ず。予選の敗北は、ゆずきの心に、新たな闘志の火を灯したのだった。彼女のロマンチシズムは、ここで一度、現実の厳しさに直面するも、さらなる高みを目指すための、確固たる決意へと変わっていったのだ。


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