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第2話ロマンチシズム

 「ミクチャ」の存在自体は、ゆずきにとって全くの未知のものではなかった。中学生の頃、友達との流行り半分でアカウントを作り、たまに飼っている猫の動画をアップしたり、今日の出来事を話したりと、ほんの気まぐれに配信したことはあった。けれど、それはあくまでお遊びの延長で、本気で誰かと競い合うような感覚は微塵もなかったのだ。それが今、目の前にあるのは、JKミスコンという、リアルな競争の場。本格的に参加するのは初めてのことで、憧れと同時に、胸の奥にはちいさな不安が渦巻いていた。

 それでも、ゆずきは一歩踏み出すことを決めた。あの「何者かになりたい」という青い野心が、彼女の背中を強く押したのだ。愛媛の自宅の、自分の部屋で、震える手でエントリーボタンを押した時、ゆずきの心臓は今まで感じたことのないくらい大きく脈打った。これはただの遊びじゃない。彼女の未来を左右するかもしれない、大きな挑戦の始まりなのだ。

 そして、この新たな挑戦を支えてくれたのは、ゆずきを一番近くで見守ってくれている大切な人たちだった。

 まず、いつも明るく、クラスの中心にいるクラスメイトのここみ。ゆずきがミスコンへの参加を打ち明けた時、ここみは自分のことのように大喜びしてくれた。

「えー!ゆずきがミスコンに出るの!?絶対、優勝だよ!だって、ゆずきはクラスで一番かわいいもん!頭もいいし、いつも周りのこと気遣ってるし、私たちの誇りだよ!私、全力で応援するからね!配信とか、宣伝とか、何でも手伝うよ!」

 ここみの言葉は、ゆずきの心に温かい光を灯してくれた。普段からおしゃれで、流行にも敏感なここみが、本気で応援してくれることが、どれほど心強かったか分からない。ここみの明るい笑顔を見ていると、ゆずきの中の不安は少しずつ溶けていくようだった。

 そして、もう一人、ゆずきの背中を押してくれたのは、淡い恋心を抱く、たいようだった。サッカー部のエースで、少しぶっきらぼうだけど、本当は優しい。ゆずきの隣にいると、なぜか心が落ち着く、そんなたいようが、彼女の挑戦を聞いて、いつものように照れくさそうに頭をかきながらも、力強く言ってくれた。

「……おう、ゆずき。ミスコン出るんか。すごいな。オレはいつでもゆずきの味方やからな。不安なこととか、困ったことあったら、いつでも言えよ。配信とか、よくわからんけど、マネージャーやったるでー」

 「マネージャー」という言葉に、ゆずきの頬はほんのり赤くなった。彼の真っ直ぐな眼差しと、不器用ながらも真剣な応援の言葉に、ゆずきは胸がいっぱいになった。彼がいてくれるなら、どんな困難も乗り越えられるような、そんな不思議な力を感じた。

 そして、何よりも大きな存在は、姉のわちをだった。いつもは口数が少なく、クールに見えるわちをも、ゆずきの夢を真剣に受け止めてくれた。

「ゆずき、がんばれ。あんたが決めたことなら、お父さんもお母さんも、最後はきっと応援してくれるから。家族みんなで応援してるからね」

 わちをの言葉は、普段はめったに聞けないからこそ、より重く、ゆずきの心に響いた。そして、「家族みんなで」という言葉に、ゆずきは温かい安堵感を覚えた。両親はまだ戸惑っているけれど、わちをが味方でいてくれるなら、きっと大丈夫。そう思えた。

 友達、恋心、そして家族。大切な人たちの温かい眼差しと、力強いエールを受けて、15歳の高校1年生、ゆずきはJKミスコンという未知の世界へと一歩を踏み出した。それは、彼女の秘めたるロマンチシズムが、現実の輝きへと変わっていく、まさにその瞬間だった。


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