第15話「神託の試練、巫女の決意」
遺跡の脅威を退けた俺たちは、最深部に残された祭壇へと足を進めた。
リリエルの神聖術によって影喰らいを撃破したものの、遺跡に満ちていた異様な気配はまだ完全には消えていない。それどころか、祭壇の奥にある大きな石碑が鈍く輝いていた。
「……ここが、この遺跡の本当の核心部かもしれないね」
リリエルが静かに呟く。俺は周囲を警戒しながら、ゆっくりと歩みを進めた。
すると——
「——試練を受ける資格を持つ者よ」
遺跡全体に響き渡るような声が、突如として鳴り響いた。俺たちは驚き、周囲を見回すが、声の主の姿は見えない。
「今の……誰の声?」
エコーが不安そうに言う。
「……おそらく、神託を司る存在のものだろうね」
リリエルが一歩前に進むと、石碑がさらに強く光り、その光がリリエルを包み込んだ。
「うわっ……!」
俺は思わずリリエルに駆け寄ろうとするが、その瞬間、光が弾け、俺たちは後ろへと押し戻される。
「シン、エコー! 大丈夫?」
リリエルの声が聞こえる。しかし、俺たちは彼女の近くに行くことができない。まるで見えない壁に阻まれているかのようだった。
「問題ない……! だけど、お前は……?」
光の中心にいるリリエルは、まるで何かを受け取るように目を閉じ、静かに佇んでいる。すると——
「——巫女よ、お前に試練を与えよう」
再び声が響く。
次の瞬間、リリエルの周囲に複数の光の球体が浮かび上がった。それらはゆっくりと回転しながら、彼女の周囲を巡る。
「この光……」
「これは巫女としての資質を試すもの……私がこれを受け入れられれば、私は本当の意味で神託を司る者になれる……!」
リリエルの決意に満ちた声が響く。
その瞬間、光の球が一斉に動き出した。リリエルを包むように、彼女の体を巡る。
「リリエル、大丈夫なのか!?」
エコーが叫ぶが、リリエルは微笑んで答えた。
「……ええ、大丈夫。私ならできる」
彼女は光の球の動きに合わせて手をかざす。すると、一つの光が彼女の手のひらに吸い込まれるように入り込み——
「——これは……!」
リリエルの瞳が再び光る。
そして、その場にいる俺たちにも分かるほどの、強大な神聖術の力が彼女の中に流れ込んでいった。
「神託の巫女としての、真の加護……!」
リリエルが静かに呟く。
光が次第に収束し、彼女の体に馴染むように消えていった。
俺は警戒を解かずに、彼女の様子を伺う。
「……どうだ、リリエル」
「ええ、力が……目覚めたみたい」
リリエルが微笑むと、彼女の周囲に残っていた光の残滓がゆっくりと空気に溶け込むように消えていった。
この試練が、彼女の新たな力の目覚めを意味するものであることは明白だった。
「すごい……まさか、こんな儀式を経て覚醒するものだったとは」
「……これで、私はもっと役に立てる」
リリエルの言葉に、俺は少し安堵した。
だが、それと同時に——
(俺も、もっと強くならなきゃな……)
リリエルだけじゃなく、俺も成長しなければならない。
このままでは、俺はいつか——
そんな考えが頭をよぎる。
それでも、今は彼女の成長を喜ぶべきだ。
「……よし、リリエルの試練も終わったことだし、そろそろここを出るか」
「そうだね」
「待て待て、ボクの活躍シーンがまだなんだけど!」
「……エコー、お前はもう十分うるさいからいいんだよ」
「ひどくない!?」
エコーの抗議を軽く流しつつ、俺たちは遺跡を後にした。
——そして、この出来事が、俺たちの次なる試練の始まりとなるのだった。
次回予告:第16話「王都への帰還、試される勇者」
・新たな力を得たリリエル、そしてシンの試練とは?
・シン「まさか、こんな形で試されるとはな……」
・国王のもとへ戻ったシン、しかし力は未だ衰えず——!?
・次回、王都での大事件が勃発!




