第14話「覚醒の刻、神託の巫女」
影喰らいが塵と化し、遺跡の奥へと静寂が戻る。
俺はゆっくりと剣を下ろし、肩で息をついた。
「……なんとかなったな」
「うん……」
リリエルの声がどこか遠い。
ふと彼女を見ると、瞳にまだかすかな光が宿っていた。
まるで何かに呼ばれているような、不思議な表情——
「リリエル?」
「……シン、聞こえる?」
「は? 俺の声は聞こえてるか?」
「ううん……そうじゃないの……この声……」
リリエルはふらふらと遺跡の奥へと足を進める。
俺とエコーは顔を見合わせ、慌てて後を追った。
遺跡の奥にあるのは、巨大な石碑だった。
古びた文字が刻まれており、そこから淡い光が漏れ出している。
「これって……?」
「“神託の試練”……」
リリエルがかすかに呟く。
「神託の巫女として、ここで試練を受けなければならない……」
「試練って、おい……まさか」
リリエルは石碑に手をかざした。
すると——
光が爆発した。
「うわっ!?」
視界が真っ白になり、一瞬、何も見えなくなる。
——そして、気づけば俺たちは見知らぬ場所に立っていた。
◆
「ここは……どこだ?」
辺りを見回す。
遺跡の中のはずだったが、今俺たちがいるのは、広大な白銀の空間だった。
上も下も、すべてが白。
まるで、現実とは異なる次元に放り込まれたような感覚。
「……神託の空間、か」
エコーが呟く。
「本当に神の力が関与してるってわけか……」
俺たちが戸惑っていると、突然、上空から声が響いた。
『神託の巫女よ……試練の刻、訪れたり……』
その声は、重く、厳かだった。
——次の瞬間。
白銀の空間に、黒い影が生まれる。
それは、俺たちがさっき倒したはずの影喰らいに酷似していた。
「また影喰らいか!?」
「違う……こいつは……!」
リリエルが息をのむ。
『影喰らいの本質……“影そのもの”』
「……つまり、本体ってことか」
俺は剣を構える。
しかし——
「!? 影が……」
俺の足元に伸びる影が、不自然にうねった。
次の瞬間——
ズバァッ!!
「くっ……!」
俺の影から鋭い刃が飛び出し、かろうじて避ける。
「なるほどな……影そのものを操るタイプか……厄介すぎる」
戦況を見極めながら、俺は冷静に考える。
こいつに普通の攻撃は通じない。
影を攻撃できる手段……
——あるじゃねぇか。
「リリエル! また光の加護を!」
「わかった!」
リリエルの瞳が光を宿し、白銀の空間に神聖な光が満ちる。
「“光浄の加護”!!」
光が影を照らし、影喰らいは一瞬怯んだ。
「今だ、シン!」
「おう!」
俺は持っているゴミスキルを瞬時に組み合わせた。
【水滴凝固】で水を発生させ、それを【軽風操作】で影喰らいの足元にばら撒く。
さらに——【風読み】で影の動きを予測し、動きを封じる。
「凍てつけ——!」
影に降り注いだ水が、一瞬で氷へと変わる。
影喰らいの動きが止まった。
「今だ!」
俺は一気に間合いを詰め、氷の刃を叩き込んだ。
バキィィィン!!
凍りついた影が砕け、影喰らいは苦しみながら消えていく。
『……試練、クリア……』
その声とともに、視界が暗転した——
◆
「——っ!」
気づけば、俺たちは元の遺跡に戻っていた。
「今のは……?」
「神託の試練……私が受けるべきものだったんだと思う」
リリエルが静かに微笑む。
「でも、シンがいたから乗り越えられた……ありがとう」
「……別に。俺は、やれることをやっただけだ」
リリエルの瞳は、以前よりも強い光を宿していた。
こうして、俺たちは神託の試練を乗り越えた。
——だが。
「……なあ、リリエル」
「なに?」
「試練をクリアしたのはいいんだが……報酬とかないのか?」
「……え?」
「いや、ほら、こういうのって、何かしら報酬があるもんだろ?」
俺の言葉に、リリエルは困ったように笑った。
「……それは、次回のお楽しみ……かも?」
次回、第15話「神託の報酬と巫女の覚醒」
リリエルが得た新たな力とは? そして、神託の真実が明かされる——!




