困った事
困った事になった。なんでコイツは二週間経っても全裸のままなんだ。俺の世話をしてくれてる二人の女性、フォリーとミュウビーは昨日から特別なメガネを掛けている。コイツの立派な部分を見ないように出来るメガネだ。コイツのお陰で俺はメガネっ娘成分を存分に摂取するハメになっていた。魔法バンザイ。そして、全裸のコイツのお陰でベクターとポルダーが俺の部屋へ来なくなってしまった。で、コイツは俺の顔を覗き込み「賢者よ、知りたい事があれば何でも訊くが良い。」と度々言う。壊れたロボットか何かか、お前?
「エローシュ様、お食事ですよ。」ミュウビーが俺史上最高に美味な離乳食を運んで来た。すると全裸のコイツは俺の横に陣取って、ミュウビーが俺の口元に離乳食を運ぶのを観察しやがる。ウゼーよ。フォリーとミュウビーは姉妹だった。姉がフォリーでミュウビーが妹。でも余り似てない。そして今は警備員のおっさんが一人部屋の中で目を光らせている。髭モジャのデカいおっさんで、ベテランらしい。正直、こんなに美味な離乳食を味わう雰囲気じゃない。うんざりしつつも離乳食を完食し、メガネっ娘ミュウビーの笑顔に癒される俺。あーちょっと眠くなって来たかも。そんな時だった。部屋のドアが静かに空き、バロス父さんとヘラリー母さんが俺の様子を見にやって来た。
「食事は終わったわね。」ヘラリー母さんが俺の頬を撫でる。「気が進まないけど、しょうがないわね。」
「ああ、そろそろ準備して、王宮へ行かなければ。」バロス父さんが大きなため息をついた。「リューちゃん様もお越しくださいますよね?」
「ほう、王が呼んでおるのか?ふふん。あの王がのう。」何、この態度。おーい、コイツどうにかして。って、え?王宮へ行くの?コイツも行くって事は、まさか俺も一緒?ほほう。それは面白そうだなあ。王宮って王様住んでる所だよね。
「その通りです。元々は子が一歳を迎えた時に王にお目通をする習わしでしたが、今回は特例で…。」バロス父さん、顔色悪いよ?そんな緊張する事なの?ナロスキーノ家って、状況から察するに王家と並ぶ家だよね?
「まあそうであろう。こんな玉でずっと監視してたのなら、我がここに来たのも判っておるだろうしな。」するとコイツは人差し指を立てるとクルクル回した。その動きに合わせて例の青い玉もクルクル回った。「まあ偶にはこんな悪戯したってよかろう。全く、何が不安でこんなことをするのか理解できぬ。」
バロスはその様子を見て、今頃ディーターが慌てて魔法回路をチェックしてるだろうなと思った。あの青い玉はちょっとやそこらの魔力では無理に動かせない、強力な魔力プロテクトが掛けられていた。あんな風に魔力で動かされたという事は、動きを制御する魔法に障害が発生してるのと同じ事だからだ。バロスはリューちゃんの力を見せつけられ、改めてこの始祖のドラゴンがエローシュ側に付いている事に安堵した。そして殆ど忘れ去られていた盟約の事を思い、気が沈んだ。盟約は、ある意味ナロスキーノ家の存在理由でもあった。
「盟約の事なら、気に病むでない。」リューちゃんの言葉にバロスは目を瞬いた。
「まだその時は来ていない。いや、来ないかも知れない。それは賢者であるお前の息子次第だ。」どういう事なのか、バロスはリューちゃんの言葉が上手く理解できなった。
「もうすぐ、おぬしに孫が出来る。その孫は女児だ。そしてその娘も大事な役割を担う事になるであろう。大事にするが良い。」バロスは出産が近い長男パンターの妻セロンの事を思った。魔物の出現が依然として懸念されているパンターの赴任先からセロンは今この屋敷に移り、安全に出産できる体制を整えていた。しかし、今やこの屋敷にリューちゃんという特大の爆弾を抱えているとも言える状況に、バロスは苦しくなった。ヘラリーが不安そうな顔になる。
「あの、盟約のことを気に病むなとは、どういう事でしょうか?盟約が成されたのは太古の事であるのは存じております。一万年前と私は伺っております。そのような太古の盟約は今の時代には通用しないと、そうおっしゃられたいのですか?」ヘラリーはリューちゃんを真っすぐに見て尋ねた。リューちゃんの姿にはもう慣れていた。
「ふ。一万年か。そのような事になっているとはのう。我にはつい昨日のようだぞ。それはさておき、おぬし、本当に一万年も前からそんな盟約があったと思うのか?浅はかではないか?ふ。教会をあまり信用するでないぞ。」リューちゃんの不敵な笑みにヘラリーは凍りついた。
「バロス様、ヘラリー様、そろそろご準備を。」メリーナが声を掛けに部屋へ入って来た。
「おお、そうだな。」バロスはリューちゃんを一瞥すると「やはり、そのままの姿で王宮へ?」と聞いた。
「ははは。それも一興か。いや、本来の姿で行かせてもらおう。ちょっとは驚いてもらう方が我も面白い。」
うお。いつの間にか寝てた、俺。あれ、ココどこ?あ、またベビーカーに乗せられてるのか。ん?これってまさか王宮に来たの?もう?あれ?あれって出口?
「エローシュ様、初めての外出ですよ。嬉しいですか?」メガネっ娘でなくなったフォリーが俺に眩しい笑顔を向けていた。「あたしも王宮初めてなんです。中まできっと入れますよね?」いや、聞かれても…。
「ああんあい。」それが俺の答えだ。
コロナ自粛でヒマだった2020年頃に書いてたものです。
こういう小説を書くのは初めてです。
イキオイだけで書きました。
飽くまでギャグです。ツッコミはご遠慮ください。




