警備隊長
警備隊長のベーダーはこの出来事をどうバロスに報告すれば良いのか困っていた。目の前にはいつものベッドでスヤスヤ眠るエローシュと、その側にくっついている全裸の男がいた。エローシュの世話役のフォリーは一旦下がらせた。この全裸の男は自分を始祖のドラゴンだと言った。あの登場の仕方と、この男が現れた途端に屋敷の上空を旋回していた竜が消えた事とを考えれば、それは本当なのかも知れない。しかし、始祖のドラゴンは神話の生物だと教えられて来たし、教会でもそういう扱いだ。何か壮大なペテンに引っかかってる気がするのも仕方のないことだった。何かあっても最低限対応出来るように、他に三人の先鋭を部屋の中に、部屋の外にも三人配置していた。もちろん警備隊全体が非常事態に備えていた。
「見たままを報告すれば良いではないか。おぬしの主人、我が主の父親はどこにいるのだ?」全裸の男の目は金色に光り、黒に限りなく近い紺色の緩くカーブした髪は艶やかにその整った顔立ちを際立たせていた。人間で言えば歳は三十そこそこに見える。それにしても目のやり場に困る立派な…うん、立派だな。とベーダーは目を反らせた。
「こちらに、衣服をお持ちしました。始祖のドラゴン様に、合うかどうかは、その、お召しになっていただかないと判りませんが、当方で今ご用意出来るものが、こちらで御座います。」メイド長のメリーナが衣装ハンガーに様々な服を下げて部屋に入って来た。
「いらん。解ってないな。人間の服を我が着られる訳がない。我は人間ではないんだぞ。おぬしたちには変わらぬように見えるようだが。」全裸の男は呆れたように言った。
「ど、どういう事でございましょうか?」メリーナは蒼ざめた。
「この姿は本来の姿ではない。人間になった訳ではないのだ。我は、我だ。」全裸の男は衣装ハンガーから一着服を取り出し、その袖に腕を通そうとした。その途端、その服は袖から裂け、見るも無惨なボロ布と化した。メリーナは息を呑み、卒倒せんばかりの顔色になった。
「では、せめて、その、それを、その、目に触れぬようには出来ないのですか?」ベーダーは視線を何となく下へ移して言った。
「これの何が問題だ?おぬし達の神話の絵では皆こんな感じではないか。」全裸の男のその言葉に、ベーダーは確かにそうだと思った。教会にある絵は大抵全裸がデフォだった。しかし、あれは絵であって、この、現実に目の前にある存在感とはまるで違う。
「どうしたんだ!」という声と共にバロスが部屋に入って来た。思ったより早い帰還だった。バロスは異常があると報告されたダンジョンへ向かう途中、屋敷の異変を報告されてトンボ帰りしたのだ。
「おぬしが賢者の父か。名はバロスであったな。」全裸の男はバロスを見て微かに笑った。バロスは全裸のその姿に目を丸くした。
「あ、あの、そちらは…?失礼を承知でお伺いしますが、始祖のドラゴン様で…いらっしゃる?」
「ああ、その始祖のドラゴンというのはもう良い。そもそも我はドラゴンではない。リューちゃんだ。」
「へ?」バロスは思わず間抜けな声を漏らした。「あ、いえ、あの…。リューちゃん、ですか?」
「うむ。リューちゃんだ。」
ベーダーはバロスに事の始終を説明した。徐々にバロスの顔が蒼ざめるのを見て、ベーダーは落ち着かなくなった。
「今アシュリーがベクター様とポルダー様のお世話をしております。その、ベクター様もポルダー様もショックを受けられてるようで…。」とベーダーは消え入るような声で言った。
「そうか。」とバロスは深いため息を付いて、リューちゃんの方を見た。この出来事はどうせ王家にも筒抜けだ。それにしても、王家ではなく何故ナロスキーノ家の方に賢者が生まれ、このリューちゃん、始祖のドラゴンが現れたのか。魔物の出現、ダンジョンの異変。何もかもがおかしい。いや、異変は随分前から観測されていた。
「大丈夫ですか?」とそこへ、ヘラリーが入室して来た。そしてリューちゃんの姿を一目見て「ひ」と一言漏らし、気絶した。
コロナ自粛でヒマだった2020年頃に書いてたものです。
こういう小説を書くのは初めてです。
イキオイだけで書きました。
飽くまでギャグです。ツッコミはご遠慮ください。




