俺が生まれてそろそろ二ヵ月
俺が生まれてそろそろ二ヵ月経つ。父バロスと母ヘラリーが、長男パンターとその妻セロンを伴って、俺の様子を見に来た。
「元気そうだな。」とバロス父さん。
ヘラリー母さんは授乳があるのでこの子供部屋にほぼ常駐していると言って良いくらいだが、バロス父さんが俺の様子を頻繁に見に来たのは最初の一週間くらいで、あとはそんなに訪ねて来てない。パンターとセロンはこれが二度目だ。
「かわいいわねえ。」とセロンがため息をつく。「私ももうすぐ母親になるのね。」え?妊娠中?そんな風に全然見えん。そう言えば、兄夫妻は何歳くらいなんだろ。
「そうだよ、きっと元気な子供が生まれてくるよ。」とパンターがセロンの肩を後ろから抱く。
「赴任先はどうだ、やって行けそうか?」とバロス父さん。
「ええ、きっと上手くやれると思います。パンターはそう言って少し目を伏せ、「ただ、魔物の発生が懸念されるそうです、私にはまだよく判らないのですが…魔物に対応出来る人材が必要だそうです。」
「魔物が出現しなくなって久しいからな。私も魔物を見たのはもう子供の頃の事だ。」そう言いながら、父さんが俺の顔を撫でる。マモノって何だろ。なんかメンドくさそう。あ、もしかして魔物?悪魔の使いみたいな?目が赤く光る的な?
「心配よねえ。」とヘラリー母さんが俺を抱き上げて言う。「やっぱり出産はこっちでなさいな、セロン。ここなら魔物も寄せ付けないわよ、国内最強と言われる結界師達が守ってるんだから。」抱かれてる母さんの胸元が心地よくてウットリ、し・あ・わ・せ。
「父上、やはり賢者の誕生という予言と呼応しているのでしょうか、この魔物の件は。」
「わからんな。何しろ久しくこういう事は起きてないからな。ダンジョンももぬけの殻な事が多いのが最近は当たり前のようになっている。お陰で平和ではあるが、このままだと先はないな。ダンジョンは資源の確保に役立っていた面もある。取り尽くして枯れたとは思えんのだがな。」
んー、今ダンジョンって言ってたよな、聞いた事ないな、ダンジョン。なんだろ。団ジョンさん?なんてな。資源って石油とかそういう感じ?ダンジョンって多分場所の名前だな。もぬけの殻で平和って…資源を巡る争いがなくて良いって事?あ、父さんにだっこバトンタッチ?えー!母さんの方がいいなあ。でも父さんの厚い胸も悪くない。
「賢者か…。」そう呟くパンターが、天井のあの青い玉を一瞥したのを俺は見逃さなかった。やっぱり怪しい。
俺のチート能力とやらであれが何なのか判らないかな?父さんに抱かれたまま意識をその青い玉に集中してみる。んんんんん…微かに俺から天井目掛けて何か纏まって行く感覚がある。あ、何か繋がりそう。具体的には判らないが、繋がる感覚がある。すると一瞬だけ、見知らぬハゲ頭のメガネを掛けた男がこちらを見ているイメージが頭の中に飛び込んで来た。
ヤヴァい。ナニコレ。何だ、コレ?
俺は混乱して大声で泣き始めた。父さんがびっくりして俺をあやそうとするが、俺も泣くのを止めたくても止められない。そこで再び母さんの胸へと抱きとめられる。嗚呼、やっぱり母の胸最高。泣き止んだ俺はそのまま深い眠りに落ちた。
「やっぱりこの子は特別なんだわ、あなた。」エローシュをベッドへ移した後、ヘラリーがバロスの両手を取って囁く。「どうして私たちの子がこんな事に…。」
「そうだな、やはり何かある。あの魔力、生後二ヶ月の赤子とは思えない。」バロスはエローシュを凝視し「今頃ディーターが慌ててるだろうな、面倒な事にならければ良いが。」と首を振る。
その頃ディーターは薄暗い部屋でハゲた頭に大量の汗を噴き出させながら目の前の石板に映るエローシュの眠る姿を凝視していた。
(今、ハッキングされた。あれは、確かに、この赤ん坊の、仕業だ。)
興奮に体温が上がったせいで曇ったメガネを拭きつつ、ディーターは国王にどう報告すべきか悩んでいた。
(確か生まれて二ヵ月も経っていない筈。ハックするにはそれなりの魔力の練度が必要だ。しかも習ってもいない、いや、教えてもいない魔術の行使。こんな事が本能で出来るとは思えない。何故?予言は神託としてなされた。やはりあの子は神に選ばれた賢者なのか?今日の監視を部下に任せないで良かった。)
息を整えたディーターは国王に報告すべく、使者を静かに呼んだ。
コロナ自粛でヒマだった2020年頃に書いてたものです。
こういう小説を書くのは初めてです。
イキオイだけで書きました。
飽くまでギャグです。ツッコミはご遠慮ください。




