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この異世界バグってる  作者: Yeppie
第二章
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ドグラルは焦った

ドグラルは焦った。(何でゲスイーゾ家の令嬢ミュウビーが、ナロスキーノ家にいるんだ?見間違い…では絶対ないな。)

「よぉーし、十回ちゃんと振れましたな。今日はここまでにしておきましょう。」ドグラルはポルダーが一礼すると、それに礼を返した。ミュウビーの刺す様な視線が痛い。


ポルダーがプースへ駆け寄るのを笑顔で見送りながらも、ドグラルの内心は大量の疑問符で埋め尽くされていた。ゲスイーゾ家は裏社会に通じている。それは高位貴族の間では公然の秘密の様なものだった。ドグラルも当然知っていた。ミュウビーはゲスイーゾ家の三女で、今は多分十二歳だ。本来なら王都の学園に通っている年齢だ。(それが、エローシュ様のお世話?何か俺の知らないところで動きがあるのか?)ふとドグラルはおっとりしたゲスイーゾ家の可憐な長女レオナを思い出した。ミュウビーはこの長女とは対照的だった。


すると、ミュウビーが自分に向かって歩いてくるのが見えた。ドグラルはこの少女が怖かった。剣を振るうセンス、体術のセンス、どちらも抜群に良かった。そして魔法をそれに乗せるセンスも。まともに対戦すればドグラルを簡単に組み伏せる位のポテンシャルはある。しかし、体格も経験もドグラルの方が上だ。そう簡単には超えさせない。


「これはこれは、お嬢様。こんな所で、こんな形でお会いするとは。」ドグラルは辛うじて聞き取れる程の声で囁いた。

「お嬢様はお止め下さい。ここではあたしは只のメイド、エローシュ様のお世話を仰せつかっています。」小声で答えるミュウビーは、微笑んでいた。その微笑みがドグラルには不気味に見えた。

「僭越ながら、お尋ねいたしますが、その、学園はどうされたので?」

「学園?卒業いたしました。全課程修了しましたので。」ミュウビーはこともなげに答えた。ドグラルは驚きを顔に出すまいとした。

「素晴らしいですな。私は後一年は学園にお通いになるのかと。」

「あら、何か勘違いされてるようですね。別に飛び級で卒業したのではありませんよ?」空気が少し冷えた。


「何も、ありませんわ、ドグラル様。ご心配には及びません。何の、裏もありません。」ミュウビーはそう言うと踵を返し、プースの方へ向かって行った。そして一瞬振り返り、また微笑んだ。ドグラルの微笑みは張り付いたままだった。学園をちゃんと卒業したのなら、ミュウビーは十四歳だ。ドグラルは月日の経つ早さに目元が緩んだ。




泣き疲れてぐっすり眠っているエローシュを抱いて、ミュウビーは子供部屋に戻った。リューちゃんは虚空を見つめ、フォリーはお茶を飲んでいた。あの青い球は天井に吸い込まれる様にくっ付いた。


「姉さん、ドグラルがいたわ。」ミュウビーはエローシュを丁寧にベッドに寝かせると、そう呟いた。

「あら、良かったじゃない。ミュウビーの憧れの人でしょ、ドグラルって。」昔ミュウビーがドグラルに良く纏わりついていたのを思い出して、フォリーはクスクス笑った。

「憧れねえ。そんなんじゃないけど、ま、学ぶ事はいっぱいあったわ。今はナロスキーノ家で剣術指導してるのね。そうじゃないかと思ってたけど。」ミュウビーはフォリーの隣に座り、テーブルにあったクッキーを齧り「今度対戦することあったら、絶対に勝つわ。」と鼻息も荒く宣言した。

「やあねえ、ほんと、ムキになっちゃって。ミュウビー、ドグラルってあなたより三十は年上だし、実践経験も豊富よ?今は魔物も出ないし、大昔にあったとかいう内戦もない。おまけに最近はダンジョンまで大人しくなっちゃって平和な時代だし。ドグラルはそういうの経験してるんでしょ?土台が違い過ぎるわ。そう簡単に勝てないわよ。」フォリーはお茶を飲み干した。

「解ってるわよ。だから、面白いのよ。」ミュウビーは不適な笑みを口元に浮かべた。

「あなたのその好戦的な態度、どうにかした方が良いわよ。来年には婚約者選びが始まっちゃうんだから。」フォリーはため息を吐いた。

「姉さんに言われたく無ーいなあー。まだ婚約者いないでしょ?」ミュウビーはもう一つクッキーを口へ放り込んだ。

「う・る・さ・い!でも、始まるもんは始まるのよっ!」フォリーは立ち上がり、ベッドで眠るエローシュの寝顔を見、リューちゃんの視線に気づいた。

「リューちゃん様、そのお、恐れながらお聞きしても?」フォリーは上目遣いにリューちゃんを見た。

「うむ。婚約者のことなら、まだ現れぬ。心配するな。」リューちゃんは即座に答えた。




(はあ、やっぱりちょっと、何かおっかないなあ、あのメイド。)プースは自室のベッドに寝転んで、ミュウビーがドグラルに見せた笑顔の事を思った。(フォリーだっけ?あのメイドも独特だよなあ。ダレム師が可愛がってるんだよなー。あ、来週魔法の試験あるんだった。)プースは体を起こし、ベッドに胡座で座ると指で大きく四角を目の前に書いた。


「ステタス。」すると何もなかった空間に、指で描いたサイズの四角い画面が現れた。(はあー、このレベルっていうのを上げるの、難しすぎ。まだレベル2だよ。これを3に上げなられなきゃ、補習だっけ?くあー。俺、子供の頃もダレム師に色々言われてたもんなあ。)


画面には魔法レベル2とだけ表示されていた。(これ、本当は他の項目もある筈なんだよね?昔マルエールが教えてくれた時は…あれ?他に何があったっけ?)プースは家庭教師が何を言っていたか思い出そうとしたが、ダメだった。(あ、そうだ、剣術もレベル表示されたんじゃなかったっけ?)すると魔法レベルの代わりに剣術レベルが表示された。(あれ?剣術レベル1?そんなバカな。れ、練習サボってるから?このステタスって自分が今見たい項目が出てくるのか。て事は、出て来る項目知らなきゃ、その項目のレベルって判ん無いまんまって事?うへえ。)


プースは明日は寄宿舎に戻る。この家からでも学園に通えるのに、寄宿舎に住まなければならない貴族のしきたりが疎ましかった。

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