なっ!
「なっ!」フォリーは思わず短く叫んだ。魔力溜まりが可視化していた。それは薄紫色からドス黒く変わって行くガス状の何かだった。しかも、最初感知した時よりも大きく膨み、急速に部屋を埋めようとしていた。「何で?こんなん無理!ヤダ!」フォリーは半狂乱になって隠し扉まで走った。(は、早くここから出なきゃ。あんなんに呑み込まれたら、どうなるかわかんない!ダレム師も事情を説明すれば解ってくれる、解ってくれるよね?ひいい。キモいー!来ないでー!)
その時だった。隠し扉を猛烈なスピードで突き抜けて部屋へ飛び込んでくる何かが見えた。(へっ?えっ?ちょっ?)フォリーは、その立派なモノをマトモに目の前に見て気を失いかけた。
「あえー!」ダメー!俺はフォリーの後ろに仰け反り倒れかける姿を見て手を伸ばした。俺の声にフォリーが正気を取り戻すのが判る。あれ?でもフォリー何でここにいるの?
「あれ?エローシュ様?あ、リューちゃん…様…。あ、た、助けてください!あれ、何なんですか?」フォリーは俺を抱く変態全裸野郎に縋りついた。
「この世界に巣食うバグの片鱗だ。我の後ろに下がっておれ。」変態全裸野郎は乱暴にフォリーの腕を掴んで背後に突き飛ばした。ダメだろ、女の子にはや・さ・し・く・しなきゃ!
「そんな余裕はない。主人、このおなごをバグに喰わせたいのか?」え?ええ?はい?コレがバグ…バグ?はああ?虫じゃないの?俺の目の前にあるそれは、巨大化して行く紫がかった黒いガスだった。そして猛烈な勢いで点滅する小さなライト数十個埋め込まれた黒い箱が幾つかその下に見え隠れし、それがあたかもこの黒いガスに意志があるかの様に見せていた。あれ?何で?俺の髪の毛逆立ってる!
「今はこのバグの処理が先決だぞ、主人。やり方は、やり方は…。」変態全裸野郎はそこでフリーズしてしまった。おいっ、お前俺を守るんじゃなかったのかよ!うおお!しょうがねえ!男を見せる時が来たようだなっ!
「いえおー!」消えろー!俺はありったけの念を込めてガスに向かって手を伸ばし、ガスを吹き飛ばすイメージを開いた掌に込めた。吹き飛ばねー!どーすんだ、コレ?ああーっ!ガスが部屋に充満してるー。爆発しないよね、これ?どう処理すんだよ?えーっと、中和?なんかと混ぜて毒性を中和するとかそういうの?何か、ほら、お風呂の洗剤間違って混ぜると毒ガス発生するってヤツの大規模版?んなワケねー!わー、もう顔の前まで来てる!どう考えてももう無理だろ!うおお。吸い込んだる!もう吸ってやるー!
するとガスは俺の体を目掛けて流れ始めた。ああっ、俺の素敵な晴れ着が汚れちゃう!
ディーターは隠し部屋の扉の前で指を鳴らした。ストンと床に降りると、鍵魔法を展開した。「む?」何かおかしい。部屋の中から尋常ならざる魔力を感じる。外にいても感じるというのは相当な量だ。ディーターは扉を開けるのを躊躇した。ここに収めた古の遺物の杖は危険極まる物だ。あれは、余剰と判断した魔力を収集する性質がある。しかし、何しろ古すぎる。いつ暴走してその収集した魔力を解放してしまうか判らない。それだけならまだしも、周りの魔力も巻き込んで膨れ上がるかも知れない。そうなったらどうなってしまうのか。そんな資料も記録もない。あったのはその古の杖の概要を書いた紙切れだけだった。そこにはこう書いてあった。
「この世の闇を全てこの杖に」
この遺物を見つけた王は、興味本位でダンジョンにこの杖を持って行ってしまった。(ほんと、そういうノリの軽さがあの王のダメな所なんだよなあ。でも王だしなあ。一応俺は警告したぞ。)ディーターは深いため息を吐いた。そしてその効果に王はすっかり怖気付き、教会に相談するという悪手を使ってしまった。
ディーターは思い切って隠し部屋に入った。するとそこにはメイド姿の少女が床に片腕を突いて座っており、目の前にはムキムキで濃紺の長髪の男が全裸で仁王立ちになっていた。足の間から覗くそれについ目が行ってしまい、ディーターは状況を判断するのが遅れた。
(何だ、この黒いガスは?何でこんなガスが部屋いっぱいに?)魔力測定機能メガネをかけたディーターはやっとその深刻さに気づいた。(あれが、魔力の塊?メーター振り切ってる!このままじゃメガネ割れちゃう!)
ディーターがメガネを慌てて外すと、メガネは手元で粉々になった。物にはキャパシティというものがある。あの杖もキャパを超えたのに間違いなかった。(しかし、結果がこの黒いガス?ん?あれ?)気づけばガスは跡形もなく消えていた。そしてディーターはギャン泣きする赤ん坊の声を聞いた。
コロナ自粛でヒマだった2020年頃に書いてたものです。
こういう小説を書くのは初めてです。
イキオイだけで書きました。
飽くまでギャグです。ツッコミはご遠慮ください。




