フォリーは王宮の隠し部屋
フォリーは王宮の隠し部屋の明かりを点けた後、失敗したと思った。思ったより広い部屋にまだ誰かがいる可能性を考えていなかったのだ。(…いない。良かった。)フォリーは指を鳴らし自分にかけた魔法を一旦解除した。何故かはまだ解明されてないが、指を鳴らすと一気に魔法を解く事ができた。(魔力意外に消耗しちゃったなあ…さて、集中、集中。スキナ。)フォリーは目を閉じて呪文を頭の中で唱えた。この魔法は三次元に魔力探査を展開出来る分、魔力を消費した。誰でも魔力の気配は感じる能力を持っているが、スキナの魔力探査の精度は桁違いだった。(うわ、何?この部屋の奥、デカい魔力溜まりがある。キモッ。メッチャ溜まってる。うわわわわ。まさかダレム師の言ってたのってアレ?ヤダ。ウソ。ち、違うわよね?持って帰れる大きさよね?ううう。え、えーと、次に…セクス。で良いのよね?ぶっつけ本番だけど、ちゃんと判別してくれるかな?)目を閉じたままフォリーはその呪文で対象物を絞り込んだ。目の奥で点滅する何かを見つけた。(あった!うええ。あの魔力溜まりの近くなの?ヤダなあ。まあ位置は把握したわ。)フォリーはまた指を鳴らした。(ふう。しっかし、何であんなの回収するの?バレたらヤバくない?あの奥の戸棚の中かあ。あー、これ鍵魔法かかって…え?あれ?これ鍵壊れてる。ウッソ。ヘンなトコでセキュリティ甘くない?まさか、これ、罠?いやいやいやいや…うう。気持ち悪い。何なのあの魔力溜まり。)膨大な魔力を感じるものの、見た目には何もない。(あたし、こういうの苦手なのよね。お化け、いないよね?)恐る恐る戸棚の扉を開ける。(あれ?ない?でも、さっきここが点滅してたよね?え?あっ!)
「む。これは?王よ、どうやら少し遅かった様だな。あれが動き出したぞ。」リューちゃんは鋭い視線を教皇ウェズラから一旦上へ移した後、王を見据えた。
「そ、そんな筈は。あれはキッチリと施錠した金庫に厳重に保管してございます。万一に備えて魔力を抑えつける魔道具も設置してございます。滅多なことでは…な、何か起きたのでございますか?」王は真っ青になった。始祖のドラゴンは森羅万象の全てを把握している存在として伝わっている。リューちゃんの言葉が真実である可能性は否定できない。
「起きておる。まあ、今のところは大したことはないが…。」ゆらりと首を動かし、リューちゃんは階段を降り始めた。「ウェズラ、祝福など必要はない。わが主人は生まれ落ちる前から祝福されているのだからな。」教皇を一瞥し、リューちゃんはエローシュに心で語りかけた。
(我が主人よ、目を覚ませ。おぬしの役割を果たす時が近いぞ。)…何?眠いんだよ、寝かせてよ。
(おぬしの力が今必要なのだ。早くしないと、おぬしの好きなフォリーが酷い目に遭うぞ。)は?フォリーが?何で?いや、フォリーが好きって、そんなんじゃ…。ミュウビーも可愛いよ?アシュリーも。メリーナも魅力的だよ?でも一番はヘラリー母さん。
(目覚めよ、我が主人。急げ。)うーん…。うん、わかった。
俺は目を開けた。あれ?ヘラリー母さんじゃない。変態全裸野郎が俺を抱いてる!そんな目で俺を見ないで。そんな真剣な眼差し、怖い。
(我が主人、行くぞ。)行っちゃうの?え?
変態全裸野郎は俺をムキムキ胸毛の胸元にしっかり抱え、一旦真上に跳び上がると、宙に浮いたまま水平になり、そのまま真っ直ぐ謁見の間の扉に向かって突っ込んでいった。真下に人々が流れる様に遠ざかっていく。やめろ、ぶつかる!泣くぞ、いや、泣いちゃう!泣いちゃうよお!!
「ほぎゃああああああぎゃあああ!」
あれ?衝撃もなく変態全裸野郎は扉を突き抜け、そのままだだっ広い回廊を飛んだ。制服の男たちが俺たちを見上げ騒いでいる上を加速していく変態全裸野郎。もう泣いてる余裕もない。ていうか、気絶しそう。
(主人、しっかりしろ。)おまっ、こんな速度で飛ばされて、俺、赤ちゃん。ムリ。
(主人、我が守る。安心しろ。)当たり前だー。赤ちゃんなんだぞ!うああ!やめろ。スピード上げるなあ!
その頃ディーターは謁見の間の薄暗い物陰でハゲた頭に大量の汗を噴き出させながら目の前の光景を眺めていた。
(リューちゃん?何だあの魔力のバケモノ。やっぱり本物の始祖のドラゴンなのか?)
興奮に体温が上がったせいで曇った魔力測定機能メガネを拭きつつ、ディーターは項垂れる国王を憐れんだ。
(だから、あんな物騒な物はとっとと処分しろって言ったのに。まあ、俺が厳重に保管してるからそう易々とは発動しないだろうけど。それにしても、扉を開けるでもなく、壊すでもなく、しかもあの速度で突き抜けるなんて、どういう魔法だ?どんな仕組みなんだ?それにあの赤ん坊も、やっぱり只者じゃない。)
息を整えたディーターは国王を背にして、静かに「フレト」と唱え体を浮かせると、高速であの部屋へ向かった。
ここはローヨップの北の端スカジー。そんな騒動が王宮で巻き起こってるとはつゆ知らず、パンターは竜に乗って魔物が出る可能性があるというスカジーの森へ向かっていた。確かに森の魔力の流れが変わっている上に、魔力の量も増えている。
「魔物かあ。図鑑でしか見たことないんだよなあ。マルエールが色々教えてくれたけど、今一つピンとこないんだよなあ。」ブツブツ言いながらパンターは、森の中で竜が降りられそうな場所を探した。パンターの竜はすぐ場所を見つけ、そこへ急下降して行った。
竜の首の付け根に乗ったまま、パンターは静かに目を閉じ「スキナ」と唱えた。竜の魔力と接続したその魔法は森の一キロ範囲を三次元探査出来る程の規模で発動した。そして即座に大量の魔力が溜まった場所を見つけ出した。(うお。これは…ん?魔力に動きがあるぞ?え?こっちへ向かって来てる?まさかこっちの魔力を感知した?魔物?)パンターが知る魔物は、基本的に魔力を餌としている。魔力の摂取の仕方は様々で、魔力を持った生物を頭から丸呑みする大型の魔物も存在すると教わった。そんなおっかないのに遭遇はしたくない。
(あれ?何かこの魔力の塊、小ちゃくない?小っちゃいな。一つだけか。それに、トロい。)パンターはその魔物らしき物の大きさに、少しだけ緊張の糸がほぐれた。無論小さいからと言って油断は大敵だ。普段は数名騎士を連れているが、今日は単独行動だ。そして何より、パンターには魔物と対峙した経験がない。スキナによる探査を続けるうちに、更なる異変に気がついた。(あれ?魔力溜まりが、消えてくぞ?あ、でもさっきの魔物っぽいのは残ってんなあ。あれ?魔物の動きも止まった?)パンターは拍子抜けした。そして魔物らしき物を確認しに移動するか迷った。(今日は止めておこう。俺一人だけだしな。報告だけしとこう。それにしても、俺、ナロスキーノ家の長男なのに、この扱いかあ。ナメてるよなあ。)18歳になったばかりの年若いパンターはこの騎士団に軽んじられている節が多々あった。北の地スカジーに赴任する前からこの地の事を調べ、知ったつもりになっていたが、現地に住むと知識だけではどうにもならない部分はいくらでもあった。
「ま、いっか。今日のところは引き上げよう。何か消えちゃったし。」パンターは竜を飛び立つように促した。
コロナ自粛でヒマだった2020年頃に書いてたものです。
こういう小説を書くのは初めてです。
イキオイだけで書きました。
飽くまでギャグです。ツッコミはご遠慮ください。




