変態全裸野郎
変態全裸野郎は玉座に寝かされた俺を魔力で浮かせ、自分の方へ引き寄せ、そのムキムキの腕で抱えた。「あえろー」やめろーと俺は手足をバタつかせた。変態全裸野郎は眉を少し上げただけだった。
「王よ、これが我が主人、賢者であるエローシュだ。我の事はリューちゃんと呼ぶがよい。」お前の主人になった覚えないぞ。勝手に主人にすんなー。俺は全身をモジモジさせ、抗議した。
「あの、恐れ多いのですが、発言をお許しください、リューちゃん様。」お、ヘラリー母さん、助けてー。
「うむ。何だ?」
「その、エローシュは…その…そろそろオムツを取り替える必要があるかと…。」え?いや、俺そんな必要ナッシン。全然ヘーキだよ?何で?
「おお。そうか。そうなのか?我が主人よ。」おまっ!絶対分かってるだろ!くっそう。俺の事主人だって言うなら俺の気持ちを察しろー!
「その必要は無い様だ。この状況に混乱しているのであろう。心配はない。」もう泣く!俺泣いてやる!喰らえ!俺の泣きっぷり!
「ほぎゃああ、おんぎゃああ、ぎゃああああ!!あぎゃああああああ!!!」
と、いう訳で。今は無事ヘラリー母さんの温かい腕の中に収まってる俺。こういう時は泣くに限る。でも泣くと消耗するんだよなあ。にしても。仁王立ちの変態全裸野郎の前で未だにこの場の全員跪いてる。ヤヴァい。
「もう良い。皆顔を上げろ。いつまでそうしているつもりだ?」変態全裸野郎の声が謁見の間に響く。うるせえな。もう眠いんだよ。
「王よ、良くぞこのローヨップを今まで支えてきたな。感謝するぞ。」は?ローヨップ?ヨーロッパ…じゃなかった?ん?そういや、この国の名前、俺知らないや。
「有り難きお言葉、感謝いたします…リューちゃん様。ヒャッハー様の作りし国ローヨップを守るのが王家の務めで御座います。」キラキラマッチョ王冠サンタがお辞儀姿勢を崩さないままそう答えた。うん、確実にローヨップって言ってるなあ。ヨーロッパのもじり。何か、微妙な安易さだな。
「さて、王よ。最早隠し通せると思うでないぞ。おぬしはエローシュを、賢者を支えるのだ。ナロスキーノ家と共にな。何故ナロスキーノ家と知識を共有せぬのだ?何を企んでおる?お前はあれを使いこなせると思っているのか?」
何この爆弾発言。王の隠し事?何この緊張感?あれって何だよ?ハッキリ言えよ。ああ、ダメだ。もう俺眠い。眠って良い?
フォリーは秘密の扉の鍵魔法を解かなければ先へ進めないので、その場で鍵魔法を何とか解析し始めた。(うーん、こんなん短時間じゃ無理よ。ダレム師なら一発開錠出来るのかな?いや、これ、ダレム師でも無理でしょ。無理無理無理無理ー。)と、解析を進めるうちフォリーは鍵魔法が変化していくのに気がついた。(ちょっ。これ。時間で変化するの?もっと無理ー!あー、誰かがこの部屋に入る瞬間を狙った方が良いかも。あ。え?)フォリーは魔法で扉が隠されている壁から離れた。もしかして。フォリーの予想通り、その扉から頭がハゲた男が一人出現した。(今だ!もう突入しちゃえ!)フォリーは扉が閉じないうちに、隠し部屋の中へ飛び込んだ。
「な、何卒お許しください。」王は顔を上げ、悲痛な声で訴えた。「使いこなせるなど、そんな事は微塵も考えておりません。あれは…闇そのものです。」
「王よ、お待ちください!」声を上げたのはヒャッハー教会の教皇ウェズラだった。ウェズラは畏敬の念をもって始祖のドラゴンの出現を見守っていたが、まさか全裸の男が現れるとは思っておらず、しかもリューちゃんなどとふざけた名を耳にするに至り、偽物判定をしていた。そもそも始祖のドラゴンは教会がでっちあげた架空の存在だった。王家とナロスキーノ家とにだけに古から伝わる絵を都合よく利用しただけだ。しかしでっちあげとは言え、あの絵が本物なのは確かな事だった。この世の物質はどんな形であれ魔力を通せるし、その形を変えさえ出来る。しかし、あの絵だけは魔力が通らないのだった。そんな絵を教会が用意できるわけもない。そもそも教会という制度が確立したのはせいぜい百年前で、歴史はそんなに古くない。王家とナロスキーノ家の歴史の方が断然長い。だから、あの絵に変化が、光った時にはまさに奇跡が起きたと思った。しかし、玉座の前に立つ男はどうにも胡散臭い。あんな立派なのをぶら下げやがって。第一、賢者の出現の予言自体、出所が不明なのだ。気づいたら予言があった事になっていた。教会は神託と言って誤魔化したが、神託など、少なくとも教会が成立してからはそんな記録はない。どういうことだ?あの赤ん坊が賢者?確かに髪色は濃い。髪の色が濃い程魔力が強いが、それが賢者の証というにはイマイチ説得力がない。そういえば、この全裸の男の髪色は殆ど真っ黒だ。
「その男は危険です。あれは、まだ知らせるべきでは有りません、あんな…。」ウェズラは急に声が出せなくなり焦った。何だ?これは?こんな…強力な魔力、誰が…。
「お前が口止めしておるのか?愚かな。いずれバレるというのに。」始祖のドラゴン、リューちゃんが鋭い目をウェズラに向けた。「おぬしはウェズラと言ったかな?あれはおぬし達の手には負えぬぞ。おぬしらにその力はない。あると思っているのか?」
何これ。隠し部屋に入ったフォリーは、その暗い部屋に並ぶ見たことのない四角い箱に目を丸くした。小さな点滅するランプ十数個が綺麗に埋め込まれ、まるで夜光る虫を森で見ているように感じられた。(あ、灯り、ある筈。あった、あれ。)フォリーは部屋の灯りを点けた。部屋は意外に広かった。(さて、目的のものは本当にあるの?ダレム師も具体的な形とか判らないって言ってたけど。)だが、探し方は教わっていた。ダレム師の予測が本当なら、見つかる筈だった。
コロナ自粛でヒマだった2020年頃に書いてたものです。
こういう小説を書くのは初めてです。
イキオイだけで書きました。
飽くまでギャグです。ツッコミはご遠慮ください。




