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悪役令嬢、婚約破棄されましたが、帳簿だけは正確でした  作者: 南蛇井


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第6章:王都の変化

王都。


朝の街路。


まだ人通りは多くない。


店の扉が一つずつ開き始める時間だ。


通りの灯りが消えていく。


かつてなら、それはすべて魔力灯だった。


透明な魔石が淡く光り、


夜の王都を昼のように照らしていた。


だが今は違う。


街路の灯りのいくつかが、


小さな炎を揺らしている。


油灯。


風に揺れる黄色い光。


魔力灯ほど明るくはない。


だが十分だった。


最初は文句が出た。


「暗い」


「不便だ」


「王都が田舎になる」


それでも灯りは変わった。


一本。


また一本。


少しずつ。


今では通りの三分の一が油灯になっている。


魔力灯は減った。


だが街は普通に動いている。


港でも変化が起きていた。


かつて王都の物流は魔法輸送が中心だった。


巨大な魔法装置。


魔力で荷物を転送する。


速い。


だが莫大な魔力を使う。


今は違う。


川に船が増えた。


帆船。


荷船。


ゆっくりだが確実に荷物を運ぶ。


水路物流。


昔ながらの方法。


しかし安定している。


港の倉庫では荷役人たちが動いている。


汗を流しながら荷を運ぶ。


時間はかかる。


だが魔力はほとんど使わない。


王城の奥。


巨大な魔法装置の部屋。


かつて昼夜を問わず稼働していた装置。


今は静かだ。


魔力供給は制限されている。


必要なときだけ動く。


巨大な装置は、


まるで眠っているようだった。


王城執務室。


宰相フェルナーが書類を確認している。


財政表。


魔力使用統計。


王太子アルドリックが隣に立つ。


フェルナーが一枚の紙を差し出す。


「今年の統計です」


アルドリックは目を通す。


魔力消費量。


前年より。


十五%減


王太子は眉を上げる。


「思ったより減ったな」


フェルナーは頷く。


「油灯の導入」


「水路物流」


「装置使用制限」


「積み重ねです」


アルドリックは次の紙を見る。


財政報告。


赤字。


まだ赤字だ。


だが。


数字は少しだけ小さい。


微減


王太子は紙を机に置いた。


「劇的じゃないな」


フェルナーは微笑む。


「政治は劇的ではありません」


窓の外には王都の街が見える。


塔。


通り。


市場。


いつもの王都。


見た目はほとんど変わっていない。


だが。


少しだけ違う。


魔力灯が減った。


船が増えた。


装置が静かになった。


目立たない変化。


小さな調整。


それでも。


確かに国は変わっている。


アルドリックは言う。


「十年かかる理由が分かってきた」


フェルナーは頷く。


そして静かに言った。


「これが」


少し間を置く。


「政治です」


劇的な勝利はない。


英雄の瞬間もない。


あるのは。


小さな改善。


小さな修正。


そして。


それを続ける時間だけだった。

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