第二章。変態の目撃者
「ペロ……早く帰ろう。ペヌスリン……貰ってきてよ……」
ニーヤがうつぶせたまま、力なく呟く。
「それと……アイツも……。あの女の下敷きになってるアイツもっ! 早く連れてきてよっ……!」
悲痛な願い。
本当ならニーヤ自身、今すぐにでも駆け出して行きたかった。
でも――出来ない。
事切れた彼を、尚も蹂躙するように。
息絶えた彼の上に座り込むミルネルドトーリの姿をみて、冷静でいられる自信はなかった。
自分がどうなっても構わない。でも、彼の想いを無駄にはしたくない。
彼女に出来るのは、身を焼くような怒りを、必死に押し殺すだけ。
「いってくる」
ペロが声を発した。その時だった。
突然。周囲が光に包まれる。
目も満足に開けられぬ程の激しい光。
「なっ!? 何なの!? ペロ! アンタ何したの!?」
ニーヤが叫ぶ。顔を伏せていた彼女は、何が起こったのか分からない。
だが、それは彼女だけではなかった。
「何も……してない……」
彼の元に向かおうとした時、突然光が生まれた。
何が起こったのか、ペロにも分からない。
只一つ分かるのは、光を放ったのは彼の身体だという事。
そして彼女達は目撃する。
光と共に現れた、彼の姿を。
「な、ケ、ケンセイさん……?」
自分自身に確認するように、モミが口を開いた。
間違いなく――死んだはず。殺されたはず。
生死を見誤るほど、彼女達は平穏に暮らしていたわけではない。
なのに、目の前の彼は立ち上がっている。
しかし、彼女達が驚いているのはソレだけじゃなかった。
「な、なんなのよ……アレ……」
知らない。目の前にいる彼は、明らかに様子が違っている。
彼を守っていたセクシーアーマーは姿形もなく、全身の肌が露出している。
その代わり、身体が光のオーラに包まれていた。
その中でも目を引くのが、激しく輝いている下腹部。
まるでそれは、股間からセクシーソードが生えているかのよう。
角度は六十九度。天を仰ぐように――猛っていた。
「あれは、まさか……変態……」
モミの言葉に、ニーヤが反応する。
「へ、変態って! いや、確かにアイツ、胸より脇を選ぶような男だけど……」
何かを思い出したのか、少し顔を赤らめるニーヤ。だが、モミの反応は違う。
「いえ。聞いた事があるんです。特別な魔装具は、強大な魔力を注ぐ事によってその姿を変える事がある――と。魔装具に秘められた真の力。それが変態だと」
「きょ、強力な魔力って。アイツに魔力なんかこれっぽちもないはずよ!」
「ええ、ケンセイさんに魔力はありません。でも、あれはまさに変態です」
「ど、どうなってんのよ……。アレがセクシーアーマーの真の姿だっていうわけ?」
モミとニーヤのやりとりも、ペロの耳には入らなかった。
目の前で起きている事、死んだはずの彼が立ち上がっている事。
そして、彼の身体を包むソレ。
誰から聞いたのか、それとも神の知識として身についていたものなのか。
全ては不確かで、不透明ではあったが。ペロは知っていた。
「――聖衣」
言葉が口をついた。
「「性衣……?」」
これから何が起こるのか、それは神でも分からない。




