第二章。変態、翔ける。
「これは――どうなっているんだ?」
何で裸なんだ? セクシーアーマーは何処いったんだ?
何でセクシーソードが股間に生えてるんだ?
いや、違う。鎧が消えたわけじゃない。
全身を包むこの光。これが鎧なんだ。
何が起きたのか分からない。
でも、力が、力が沸いて来る。
抑えきれない程の力。はちきれそうな股間。
僕は――力を手に入れた。
「な、何故生きている……? 確かに、確かに殺したはずだ……」
この人――。
ミルネルドトーリさんだっけか。長いな名前。
引き締まった肉体。手に余る乳。張りのある尻。
美人で年上のお姉さん。
――筆下ろしにはもってこいじゃないか!
「ミドリさん――セックスをしましょう」
「なっ!?」
「間違えました。セックスをさせてください」
彼女に向かって歩く。一分一秒が惜しい。早く下ろしたい。
「お、お前は何を言っているんだ!? ミドリって誰だ! まて、来るな! くそっ!」
彼女が弦を引き絞る。
だが、遅い。
「初めてなので、至らぬ点もあると思いますが、そこは上手くリードをお願いします」
「!?」
背後に回りこみ、弦に添えた彼女の手に自分の手を重ねる。
「では、おっぱいから行きます」
「なっ!? ふあっ!? んっ! や、やめ……」
柔らかい。これだけ鍛えられているのに、この部分だけは別物だ。
指を動かす度に形を変える。意思を持っているかのように踊る。
薄くなめした革の上からでも分かる柔らかさ。
触れたい。直接触れたい。中心も触りたい。
「ミドリさん。脱がせてもいいですか?」
彼女の返事はない。
だが僕は知っている。沈黙は拒絶じゃない。彼女の身体の脱力感も、僕に身を任せているんだろう――?
「 」
え? 何で白目むいてるの?
「ミドリさん? ミドリさん?」
返事がない。ただの屍――いや死んではない。気絶しているだけ。
「参ったな……」
気絶してる人に手を出すのはいかがなものか。
ダメだ。せめて最初くらいはちゃんとしたい。
「とりあえず待とう」
彼女を地面に寝かせ、座り込む。
その瞬間、無数の矢が飛んできた。
「おっと、危ないなぁ――」
弓矢を携えた無数のエルフ。全員女子。
「ああ。そういう事か」
全く、僕はなんて馬鹿なんだ。女性の気持ちを何にも分かっていない。
彼女達は神の一族エルフ。神と言えば、天使。
天使で弓矢とくれば――愛の使者じゃないか。
彼女達は僕に想いを伝えるために矢を放ったんだ。
それを避けてしまうなんて、これはラブレターを破く暴挙に等しい。
「ゴメン。今行くよ」
「!?」
中々可愛い子だ。こんな可愛い子で筆下ろしとは、今まで童貞でいさせてくれた神に感謝する。
「名前はなんていうの?」
やはり、名前も知らないのは失礼だ。初めての相手、一生涯忘れる事のない名をこの身に刻もう。
「 」
返事が無い。ただの――気絶だ。
「参ったな……」
緊張してしまったのだろうか。まぁ気持ちは分かる。
しょうがない、次に行こう。
「はじめましてー」
「 」
「こんにちはー」
「 」
「綺麗だね。名前は?」
「 」
「おっぱいおっきいねー」
「 」
…………。
皆気絶する。何故だ? しかも、心なしか逃げられているようにも感じる。
「!?」
ああ。やっぱり僕は馬鹿だ、女心を分かっていない。
これはあれだ「つかまえてごらん~」的なやつだ。
男性の狩猟本能をくすぐり、初体験をより濃厚にするための気遣い。
彼女達の――愛。
「わかったよ。じゃあ――」
――つかまえてやるうううう。
「……何でだ」
何で皆気絶するんだ。何が起きてるんだ?
股間のセクシーソードが疼く。
「ん?」
気が付くと、周囲の景色が変わっていた。
深い森の中。大自然の中。明らかに人工物と思わしき、草木で作られた簡素な建物が立ち並ぶ。
「エルフの――集落?」
沢山いた。怯えるような目をした天使が――タクサン。
「緊張しないで。僕も初めてだから」
「ひぃ!?」
……またか。
おっぱいの揉み方がダメなのか? 分からない。
でも諦めない。諦めたらそこで終了なんだ。
「さて、次――っ!?」
目の前にいたのは、幼女だった。
何処からどう見ても幼女。
ペロ様と同じ、いや、もっと幼女。ザ・幼女。
「幼女は――ナシだ」
人としてダメだ。イエスロリータ・ノータッチだ。
「け、ケンセイさん!」
背後から聞こえる、僕を呼ぶ優しい声。
「モミ……さん」
ああ。モミさん。初めて出会った頃から、優しく僕を支えてくれたモミさん。
その豊満な胸に、僕は何度助けられただろう。
この手が覚えてる。その温もり、柔らかさ。
そうか――モミさんだったんだ。
僕の初めてを捧げるのは、彼女だった。
「モミさん――よろしくおねがいします」
「えっ!? な、何をです――あんっ!」
モミさんをモミモミ。揺蕩うたぷたぷの夢袋。
この世に生を受け、初めて手を伸ばすソレ。
生きるために求める、始まりのソレ。
全ての母であり、始まり。
世界はおっぱいから始まるのだ。
だが、永遠にあるわけではない。共に歩むわけではない。
避け様のない宿命。日が沈むように、時間が流れるように。
当たり前のようにその日は来る。
決別の日。乳離れ。
無常にも無慈悲にも、誰にでも平等に訪れる別れ。
だが、僕は還ってきた。
そして、その先へ行くんだ――。
「 」
「モミ……さん……?」
彼女は、僕の腕の中で崩れていた。
羞恥心を押し殺し、その身を捧げてセクシーソードの仕組みを解明してくれたモミさん。
いつも笑顔で、優しく僕を慰めてくれたモミさん。
彼女は――もう笑わない。
「あ、アンタ……」
背後から聞こえたニーヤの声に、僕は振り返る。
もしかしたら、涙がこぼれていたのかもしれない。
こぼれていたのは股間の方かもしれない。我慢が溢れたのかもしれない。
幸か不幸か、激しい光に包まれて確認はできなかった。
「ニーヤ――」
気が強くて、がさつで、暴力的で。
でも、本当はすごく優しくて。
僕が壊れそうになった時、彼女は優しく抱きしめてくれた。
『大丈夫だよ』と言ってくれた。救ってくれた。
そうか――ニーヤだったのか。
僕を救ってくれるのは、いつだって彼女だったんだ。
「ニーヤ――ありがとう」
「は? ちょ!? 何でまたソコ――んっ!」
脇。それは聖なる領域。
胴体と二の腕に守られた聖域。
腕を動かせば、自然と現れる。
隠してるわけじゃない。だが、さらけ出しているわけでもない。
その神々しさは筆舌に尽くしがたい。
そして、脇には人を惹きつけてやまない魅力がある。
胴体から二の腕が離れる瞬間。天国への扉が開かれると共に。
放たれる芳香。それはまさに天国の香り。
往年のロックスターも歌った。天国の扉を開けろと。
フランスの英雄は恋人への手紙へ綴った。『そろそろ帰るから身体を洗わずに待っていてくれ』と。
世界中に存在するどの香料でも敵わない。たどり着けない。
歴史上の偉人も愛して止まないその香りは、秘めた力を極限まで引き上げる。
そして、その先に進むんだ――。
「 」
「ニーヤ……嘘だろ……?」
彼女も、白目をむき出しにしていた。
強くて、真っ直ぐで、感情に率直なニーヤ。
いつも前を向き、僕を引っ張ってくれたニーヤ。
彼女の瞳は――もう何も見ていない。
パカ パカ。と蹄の音が鳴り響いた。
ディーナスと、御者台に座るペロ様。
「ペロ様……」
彼女は何も言わない。何も表さない。
真実の神の末裔で、嘘を言わず、嘘を見破る。
誰よりも純粋で、一点の曇りもない。
そうか――ペロ様だったのか。
――いや違う。幼女はダメだ。
「ディーナス……君も女の子だったね……」
片目を覆う長い前髪。貴婦人の様な品格を漂わす彼女。
僕は見ていた。旅の途中、御者台から彼女のお尻を凝視していた。
その赤茶色の尻尾の奥。
芸術的な彫刻を思わせるその白いお尻に、ピンク色の秘部がある事を僕は知っている。
とても美しかった。
彼女は家畜なんかじゃない。立派なレディーだ。
分かってる。その潤んだ瞳。
大丈夫だ。心配はいらない。
責任はちゃんと――。
「ケンセイ」
ペロ様が呼んだ。
めったに呼ばない、僕の名を呼んだ。
「座って」
御者台から降り、僕の前に立つ。
「ペロ様……」
そうだ。分かってた。彼女は幼女なんかじゃない。
そんな概念はとっくに超越している。
世界の干渉を受けない、神なんだ。
「舐めて」
差し出された小さな手は、薄っすらと濡れていた。
指先から垂れる雫が、妖しく糸を引く。
これは――まさか――。
聖なる水――神の蜜なのか!?
「い、いいんですか……?」
恐れ多くも――僕のような人間が、それを口にしていいのだろうか。
彼女は何も言わず。頷く。
そして、僕は跪いたまま首を伸ばした。
「んっ」
細い指に口付ける。
全身を駆け巡る多幸感を卑しく貪るように。
舌を覆う糸状乳頭が、彼女の指先から指紋。さらには遠位指接間皮線――第一関節の皺の凹凸まで這い回り、絡みついた蜜を舐めとる。
漏れる吐息が僕のモノなのか、彼女のモノなのかは分からない。
分かるのは――これから僕達は蜜月の時を迎えるという事。
蕩ける意識の中、迫り来る悦びに打ち震えた。




