↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
40/144

危ない散歩

――ウイリア城下町宿屋――


 宿に戻った時、すでに辺りは薄暗くなっていた。

 部屋に戻ると、モミさんとペロ様が荷物を整理している。

 床に広げられた品々。結構な買い物をしてきたらしい。


「それは、毛皮ですか?」

「そうですよ。明日からは山を越えますからね。ケンセイさんもご覧になりませんでしたか? あの大きな山」

 大きな山。……かなり嫌な予感がする。

「も、もしかしてあの一番大きな山ですか?」

「ええ、あの山です」


 あの山はあの山しかない。

 このワーワルツ、何処にいても見えそうなあの山。

 頂は雲を突き抜け、一生落とさないであろう雪化粧をした、見てるだけなら壮大で素晴らしいあの山。

 富士山など比べ物にならない。それほど大きな山を登るという現実に、恐怖にもにた絶望感が全身を包む。

 知らないほうがどれだけ楽だっただろうか。

――聞かなきゃ良かった。

 


 夕食を食べ終わると、僕は一人また町に繰り出した。

 昼間とは表情を変える、夜のウイリア。

 裏通りには妖しさに満ちた看板が立ち並び、派手な女性たちが男に声をかけている。

 夜の歓楽街、と言った感じだろうか。


 甘い誘惑を幾度となくすり抜け、テクテクと歩く。

 しばらく町を見て、そろそろ戻ろうかと思った矢先。目の前でうずくまる人影を見つけた。

 酔っ払いかと思ったらそうでもない。何か苦しんでいるような感じだ。

 黒っぽいローブに身を包んだ人物。さっきの事もあるから、少し警戒する。

 別に盗られる様な物は何も無いが、用心の為、いつでも剣を抜けるように。


「大丈夫ですか?」

 声を掛けると、目の前の人物がゆっくりと顔を上げた。

 ローブの下から現われたのは、目を見張るほど綺麗な女性。

 何だこの人、めちゃくちゃ可愛いじゃないか。

 年上? 同じくらいかな。こんな可愛い人中々いないぞ。

「少し具合が悪くて、でも大丈夫――」

 彼女が立ち上がろうとした瞬間、バランスを崩しよろめく。

 倒れこむ彼女を支えると、甘い香りが鼻をくすぐった。


「あっ、すいません」

「いいんですよ。良かったら家まで送りましょうか?」

 自分でも不思議と、そんな言葉が口をついた。

 別にやましい気持ちなど微塵も無い。本当にただの親切心だ。

「いえ、大丈夫です。悪いですし」

「そんな遠慮しなくてもいいですよ。別に暇ですから」

「そ、それじゃあお願いしてもいいでしょうか?」

「いいですよ。じゃあ、つかまって下さい。あ、それとも背中に乗りますか? そっちの方が楽かもしれませんし、どうぞ」

 やましい気持ちは無いが、少しだけかっこつけてしまった。

――家がめちゃくちゃ遠かったらどうしよう……。

 その場にしゃがみながら、そんな事を考えていたが杞憂だった。

 背中で感じる重みは、さほど苦にはならなかったから。


「剣士さんはお優しいんですね。お名前は何とおっしゃるのですか?」

「僕はケンセイです。貴女は?」

「私はナギと申します」

 ナギさんか。容姿だけじゃなく、声も名前も可愛らしい。


 しかし、いつの間にか僕も成長したな。

 女の子と話すのさえままならなかったのに、さらりと名前を聞けるほどレベルアップしている。

 ニーヤ達と旅をしているから耐性がついたってのもあるんだろうけど。

 セクシーソードが僕に力を与えてくれているような――そんな気もする。


 だけど、良い事ばかりとは限らない。

 この後、僕はそれを知る事となる。

 


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。